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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

40

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40-02 下準備

 エルザの誕生会のあと、皆ゆっくりと談笑している時。
「ジン、軽銀を買いあさっているようだが、何か作っているのかい?」
 ラインハルトがどこか期待に満ちた顔で訪ねた。
 ここのところ、価格の下がった軽銀を、仁が大量に買い付けていたことをラインハルトは知っているのだ。
「ああ。精錬の魔導機(マギマシン)も普及してきたようで、価格が下がってきたからな」
 もう一つ、ここで軽銀を買い付けることで、さらに精錬の魔導機(マギマシン)の増産につながるだろうと期待して、という腹づもりもある。
「で、話を戻すが、何を作っているんだい?」
「『世界警備隊』用の飛行船をな」
「『世界警備隊』用?」
 オウム返しにラインハルトが聞き返した。
「うん。この前聞いた改善点を踏まえて作ってみているんだ」
「どんな感じなんだい?」
「百聞は一見にしかず、見てみるかい?」
「望むところだ!」
 と話がまとまって、仁とラインハルトは研究所裏手に移動する。
 そこには巨大な構造物がある。
 敷地面積は100メートル×100メートル、高さは50メートルという巨大なテントだ。
 骨組みは細いが丈夫な軽銀でできており、被覆は地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸で織られた布で、並みの建築物よりも強度が高い。
 船はタツミ湾のドックで作るが、飛行機・飛行船はここで作っている。
 中に入ったラインハルトは目を見張った。
「おっ、これはすごいなあ!!」

 仁が作っているのは双胴の飛行船だ。
 気嚢部分は全長は『コンロン2』よりも長く、50メートル。しかしやや細身になっていて最大直径は10メートル。
 それを20メートルの間隔を空けて連結している。
 正面から見たら、気嚢と船室キャビンは二等辺三角形になるように配置されている。
 もちろん船室キャビンは下方に吊り下げられている。

「長くしたのは縦揺れ(ピッチング)偏揺れ(ヨーイング)対策だし、気嚢部分を双胴にしたのは横揺れ(ローリング)対策だ」
 パスコー・ラッシュの意見で揺れが大きいと言われた、その対策である。
 揺れそのものもあるが、乗り心地には周期も関係する。一般的に言って大きい方が揺れがゆっくりになるのだ。
「ゆっくり揺れるならそれを打ち消すような対策もしやすいだろうしな」
 操縦はゴーレムメインなので、反応速度は人間の数倍から数十倍、十分に対処できる。
「なるほどな」
「細身にしたのは、空気抵抗を減らし、強風に強くするためだ」
 どこまで効果があるかわからないが、と仁は付け加えた。
「で、双胴にしたのは、積載量を増やすためもある」
 これもまた指摘されていたことであった。
 さらに、浮揚用の風魔法推進器(ウインドスラスター)も備えており、過積載にも対応している。
 『コンロン2』より小回りは利かなくなるが、速度は2割増しくらいを想定している。

「で、まだ被覆はされていないんだな?」
 目の前の飛行船は骨組み状態であった。
「ああ、そうなんだ。被覆には、ショウロ皇国へ『地底蜘蛛絹(GSS)』を買いに行かせているんだが、量が揃わなくて難航しているらしい」
 地底蜘蛛絹(GSS)は、ミツホからの輸入品になるため、高価である。1平方メートルあたり1000トール(約1万円)ほどにもなるのだ。
「うーん、この気嚢を全部覆うとすると、どのくらい必要になるかな?」
「ざっと計算してみたところ、気嚢2つで1570平方メートルくらいだな」
「そうすると……157万トールか」
 約1570万円、今の仁なら十分出せる金額だ。むしろ貯め込まずに使った方が経済活性化にもなる。
 とはいえ無駄遣いはやはりまずい。
「なるほど、一般に手に入る素材だけで作っているんだな」
「そうなるな」
「名前はどうするんだ?」
「うーん……『アヴァロン2』ってのは?」
 だが、これは『安直すぎる』とラインハルトに切って捨てられた。
「じゃあ、ゆっくり考えるよ」
「うん、被覆もまだだからな、それがいいだろう。……いや、いいものを見せてもらった」

 ラインハルトと仁は研究所内の大食堂へと戻った。
「あ、ジン兄、ちょうどよかった」
 エルザが仁を見つけ、駆け寄って来た。
「うん? どうかしたのか?」
「マルシアさんのところに、三胴船トリマランの発注したら、と老君が」
「え? ああ、なるほど」
 『世界警備隊』で使用する艦艇のうち、機動力のある小型艇を用意するべく、マキナが動いているのである。
 要は蓬莱島で使われている『ストリーム』シリーズの下位互換だ。
 民間に発注することで経済効果も狙えるし、何より先日『ゴーレム艇競技』で優勝したマルシアの工房へ発注するというのは理にかなっている。
「あ、あたしのところで? いいんだけど、仕様は?」
「うーん、細かいところはあとで詰めるとしても、全長7メートルから10メートル、5人から10人乗り、『水魔法推進器(アクアスラスター)』推進で最高速度時速70キロ程度、ってところかな」
 それを聞いたマルシアは少し考えてから口を開いた。
「今年、新しくドック作ったから、10メートルなら何とかいけるかな。でも人手が足りなすぎるね……」
「それなら、一時的に『職人(スミス)』を貸し出すよ。1年くらい掛けて、その間に職人を育てれば……」
「ああ、それならいいかもね。で、何台?」
「まずは2台、ってところかな」
「それなら船体は1月でできるだろうね。でもうちじゃ『水魔法推進器(アクアスラスター)』は扱ったことないからね?」
「うん、それは『職人(スミス)』がいるから何とでもなるだろう」
「それなら引き受けよう」
「詳細はポトロックの方へマキナが行くから。……明日でいいかな?」
「うん、わかったよ」
 こういうわけで、マルシア工房では三胴船トリマランの新規製造を行うことになる。

「大型船はショウロ皇国に発注する?」
 エルザからの質問である。
「そうだなあ……『ベルンシュタイン』レベルの船があるといいけど、木造だといろいろ制約が多そうだから、『アヴァロン』のドックで作ろうか」
「それが、いいかも」
 こちらは50メートル級の船を予定している。イメージは駆逐艦だ。
 『アヴァロン』は人工島なので、どうしても空と海の防衛手段が重要になる。
 3隻の駆逐艦を『アヴァロン』で建造することに決定する。
 資材はユニーにあるものを使うことにした。
「仕様はどうなるんだい?」
 いつの間にかラインハルトがやって来ていた。
「乗組員は当初はゴーレムにするの?」
 そしてステアリーナも参加。
「最初はそうなるかな。そして乗組員を養成して、ゆくゆくは……」
「じゃあ、教官もゴーレムね」
「そうですね。無理に自動人形(オートマタ)にせずとも……」
 こんな話に花が咲いた。

 『世界会議』と『世界警備隊』の準備は着々と進んでいた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170313 修正
(誤)民間に発注することで経済高価も狙えるし、何より先日『ゴーレム艇競技』で優勝したマルシアの工房の発注するというのは理にかなっている。
(正)民間に発注することで経済効果も狙えるし、何より先日『ゴーレム艇競技』で優勝したマルシアの工房へ発注するというのは理にかなっている。

(誤)それを20メートルの感覚を空けて連結している。
(正)それを20メートルの間隔を空けて連結している。

(誤)『アヴァロンの』ドックで作ろうか」
(正)『アヴァロン』のドックで作ろうか」
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