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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

1458/1568

39-43 お雛様

 ネタ的にちょっと間に合いませんでした
 仁たちはフィレンツィアーノ侯爵に断ってマルシアの家に泊まった。
 その翌朝。
「今日から3月か……3月といえば雛祭りだなあ」
「おにーちゃん、何それ?」
 仁の呟きをハンナが聞きつけ、質問してきた。
「うん? ええとな、3月3日に行う、女の子のお祭りさ」
「へえ?」
 こうした現代日本の行事についての情報は本にまとめられていなかったと見え、ハンナは初耳だったようだ。

 エルザも初耳だったらしく、さらにリシアとマルシアも聞きたそうにしていたので、仁は雛祭りについて説明していく。
「元は人形に厄を移してお払いする行事だったらしいんだけど」
「ん」
「いつしか川に流していた人形を飾るようになって」
「うん!」
「人形ということで女の子のお祭りになったらしい」
「へえ……」
「人形といっても男雛と女雛があって、豪華なものはそれ以外にも……まあ、言うなれば『家来』の人形もあったりするんだ」
「凄いんですね」
「え、え? 家来、ということはその『おびな』と『めびな』は王様と王妃様、っていうことかい、ジン?」
「そういうことだね」
 実際は王ではなく天皇・皇后両陛下を模したものだが、そこまで説明すると長くなるのでこの場では割愛する仁であった。
「ちょっと興味あるね」
「ん」
「よし、ハンナに人形を作るって約束していたし、お雛様を作って飾るとするか」
「うん!」
 そうと決まれば、善は急げ、である。
 迎賓館に戻り、『コンロン3』でエリアス王国を発つことにした。

 マルシアはお雛様ができあがったらカイナ村に招待することを約束し、仁たちを乗せた『コンロン3』は空へと舞い上がった。
 そして操縦士のエドガーには悪いが、仁たちは転移門(ワープゲート)で一足先に蓬莱島へ。
 とはいえ、エドガーも『コンロン3』と共に3時間後には戻ってくるのだが。

*   *   *

「……大体こんな感じかな」
 仁はざっと絵を描いて説明した。
「変わってる。けど、素敵」
「本当ですね。服装は……これが『ニホン』の服装なんですか?」
 エルザは素直に感想を述べ、リシアは衣装に興味を惹かれたらしい。
「いや、日本の大昔の服を元にしたというのかな」
「楽しみ!」
 そしてハンナは純粋にできあがるのを楽しみにしている。
「エルザには顔を作ってもらおうかな」
 仁よりもうまくできそうだ。
 仁としても、雛人形の細部まで再現できるわけではない。
 どうせアレンジするなら、この世界風に、ということで、顔はエルザに任せたわけである。

「老君、絹系で豪華な布地はあるか?」
 こんな曖昧な尋ね方であるが、仁が何を作ろうとしているかわかっている老君は適切な返答をする。
『はい、御主人様(マイロード)。通常の絹ではなく、魔絹(マギシルク)になりますが、ございます』
「お、それはよかった」
『ソレイユとルーナが、こうした布地も、御主人様(マイロード)の工芸系製作に必要になるかもということで織ってくれました。後で褒めてやってください』
「わかった。できる配下を持って幸せだよ、俺は」
『恐れ入ります』
 ということで仁は、その布地を運んできたソレイユとルーナに、
「2人ともご苦労だったな。すごく有り難いよ」
 と讃辞を述べた。
「恐縮です」
「光栄です」
 本当に、2人が運んできた布地は、 繻子(しゅす)(=サテン)や、羽二重、ちりめん、西陣織風、など多様に渡っていた。
「種類は多いですが、量は少ないです」
 などと言っているが、それぞれ5反くらいは在庫があるそうだ。
「1反で十分だ、助かるよ」
 がらも多種多様で、無地、和風柄、洋風、金襴と、よりどりみどり。
「細かいがらがいいな」
 人形は小さいからだ。
 布地を決めた仁は、人形の身体を作り始めた。
 正式な雛人形の構造は知らないので、かなり自己流である。
 粘土ではなく『魔導樹脂(マギレジン)』で作っていく。後々の微調整がやりやすいからだ。
 そして作った身体に服を着せていく。

 基本は十二単じゅうにひとえ
 一番下に肌着になるひとえを着て、その上に五衣いつつぎぬといって、色の異なる5着のひとえを重ねて着る。
 この時に、袖口と襟に綺麗なグラデーションが出るよう組み合わせる。これを『襲色目かさねのいろめ』といい、季節や身分などで変えたらしい。
 その上に打衣うちぎぬ、さらに表着うはぎを着て、最後は唐衣からぎぬという手の込んだ服を羽織る。
 下は足が出ない長袴ながばかまで、腰にはを付ける。

 だが、実際にそれだけの枚数を着せ掛けることはしない。
 見える部分、つまり襟元を中心に重ねていくのである。

「エルザ、顔というか頭はできたか?」
「ん」
「お、これはいいな」
 胴体と組み合わせてみる。大きさもぴったりだ。
 髪型は『大垂髪おすべらかし』が普通だが、アルス世界では馴染みが無さ過ぎるので無難な『垂髪すいはつ』(=下げ髪)とする。

 同様に男雛も作るが、こちらは衣冠束帯風だ。
 女雛は赤系統で仕上げたので、こちらは青系統にする。

 仁の手元を覗き込んだリシアが感心したように、
「面白い襟ですね。それって伝統衣装なんですか?」
 と言った。
 盤領まるえりという形状は、おそらくこの世界にはないだろうから、珍しいのも当たり前だ。
「うん、そういう分類になるんだろうな」
 日常的に着ている人などは、一部の神職や伝統芸能関係者以外にほとんどいないのだから。

 仁も正式な構造は覚えていないが、人形を作るだけなら十分だ。
 冠もそれなりの形に仕上げ、男雛にはしゃく、女雛には扇を持たせる。

 あとは台座と金屏風を作って完成だ。
 現代のお雛様と比べたらいろいろ足りないものもあるが、異世界アルス版『お雛様』はこうして完成を見たのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170310 修正
(旧)「そう、また来て下さいね、『崑崙君』」
「ジン、またね!」
「ジン、いろいろ世話になった!」
 フィレンツィアーノ侯爵、アーネスト王子、リースヒェン王女にも別れを告げる。ロッテとティアは無言で頭を下げていた。
(新)-
 彼等との別れは前日(前話)で済ませていました……orz
+注意+
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