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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

1451/1507

39-36 決勝戦観戦

「いよいよ、第12回ゴーレム艇競技の決勝戦と相成りました!」
 ポトロックの中央広場には、大勢の観客が集まっていた。
 以前と同じように階段状に観客席が作られ、最も高い位置には領主フィレンツィアーノ侯爵が座り、その隣に来賓のアーネスト王子、リースヒェン王女が。そしてエルザ、リシア、ハンナが座っている。
 その1段下に仁や司会者が座っているのだ。
 その下が貴族たちの席となり、一般観光客はさらにその下、となる。

「本日は、来賓としてエゲレア王国のアーネスト第3王子殿下、そしてクライン王国のリースヒェン第3王女殿下がお見えになっております」
 司会者が紹介を行っていく。
「さらに特別ゲストとしまして、第10回ゴーレム艇競技の優勝チーム『MJR』、その魔法工作士(マギクラフトマン)にして『魔法工学師マギクラフト・マイスター』、ジン・ニドー殿が来てくれております!」
 歓声が沸いた。仁たちの優勝は、まだ人々の記憶に新しいようだ。

「おにーちゃん、大人気だね」
「ん、優勝したことは、大きい」
「ジンさんっていろいろやってたんですねえ」
 貴賓席ではハンナ、エルザ、リシアたちが話を交わしていた。
 そんな中、一際大きな歓声が上がる。

「決勝戦、いずれも劣らぬ8艇! いま、スタートラインに着きます!!」
 司会者は簡単な説明を始めた。
「ゼッケン1、赤色の水着はリーチェ嬢、予選2位! 優勝候補の一角です!」
 決勝にあたり、ゼッケンは振り直されるようだ。そしてリーチェという小柄な操船者に仁は見覚えがあった。
(確かバレンティノのチームにいた子だったな)
 バレンティノの陰謀とは無関係であったので罪には問われず、こうして競技に参加しているのだ。

「ゼッケン2、橙色の水着はアデリー嬢、予選4位! 出場回数4回というベテランです!」
「ゼッケン3、黄色の水着はエイニー嬢、予選8位! 今回が初出場にして決勝戦に進出、期待の新人です!」
「ゼッケン4、緑色の水着はデボネラ嬢、予選3位! 堅実な操船が持ち味です!」
「ゼッケン5、青色の水着はノールン嬢、予選7位! 2度目の出場でこれからに期待です!」
「ゼッケン6、紺色の水着はマルシア嬢、予選1位! 造船工(シップライト)でもあり、自ら製作した船での出場です!」
 マルシアの紹介の時の歓声は一際大きかった。
「ゼッケン7、紫色の水着はモーブル嬢、予選5位! まだその実力は出しきっていないようです!」
「ゼッケン8、白色の水着はトライネ嬢、予選6位! エゲレア王国からの参戦です!」

「へえ、あのトライネって、エゲレア王国の人なんだ」
 エルザも出たことがあるわけで、この大会は結構国際色豊かなのである。

「解説のベルナルドさん、本日の予想はいかがですか?」
「そうですね、ゼッケン6はやはり強いと思います。横置き水車駆動……スクリュー、でしたか。一昨日の予選ではちょっと調整不足のようでしたが、それでもあの速度。1日おいた今日は、調整も万全でしょうからね、期待したいですね。。船の形式が皆同じ『三胴船トリマラン』であるので、決め手は駆動方法になるやもしれません」
「なるほど。……ゲストのジンさん、横置き水車駆動……スクリュー、というのはどうなんでしょうか?」
 ここで仁に話が振られた。仁は待ってましたとばかりに解説を行う。
「そうですね、水車駆動を開発したのは自分ですが、あれは水飛沫が上がるんですよね」
「はい、そうですね」
「その水飛沫は船を動かすのに役に立っていないんですよ。ですが、横置き水車駆動……スクリューではそうではない。これがどういうことかわかりますか?」
「ええと、無駄がない、ということでしょうか?」
「そのとおりです。つまり、同じ力で駆動したら……」
「一番速いということ、ですか?」
 ここで仁は笑った。
「そううまく行けばいいのですがね。結果は、競技が証明してくれますよ」
 仁も場数を踏んで、こうした席での発言もうまくなっていた。
「ありがとうございます。……さあ、間もなくスタートです」

*   *   *

「……ジン? ジンだって?」
 船の上でマルシアはその声を聞いていた。
「ジン、来てくれたんだ! でも、解説席にいるのか……水くさいなあ」
 マルシアも『仁ファミリー』の一員とはいえ、連絡を受けていなかったのでやはり仁の来訪は寝耳に水であったのだ。
 同時に、半ば公人として来訪している以上、個人的な友誼は後回しになるであろうことも理解していた。
 仁としてはサプライズイベントを考えていたりする。

「まあいいや。あとは優勝してからだ!」
 そして始まるスタートへのカウントダウン。

「5……4……3……2……」

*   *   *

《……1……スタート!》
「さあ、一斉にスタートしました! 真っ先に飛び出したのはゼッケン3! 以下、4、1、6、8、7、2、5と続いています!」
 ファーストステージは、2艇が並んで通過することはできない、狭い水路。1列になって進むので、はっきりと順位が見える。
 それがおよそ400メートル続く。
 ゼッケン3は最高速を出しているらしく、2位以下に文字どおり水をあけていった。

「ベルナルドさん、ゼッケン3はうまい駆け引きですね」
「そうですね。ファーストステージでは、遅い船の後ろに付くと悲惨ですからね」
 先へ行きたくとも先へ行けず、ストレスが溜まりそうである。
「先頭のゼッケン3、水路を抜けました!」
 セカンドステージは外洋である。横方向の規制は一切なし。およそ10キロメートルのスピードを競うステージだ。
 狭い水路から飛び出した各艇は、弾かれたようにスピードを上げる。
「おおっ、ゼッケン1も速い! ゼッケン6も追い上げる! 3、1、6、4、8、7、2、5と……ああっ、今、8と7の順位が入れ替わりました!!」
 巨大な『魔導投影窓(マジックスクリーン)』に映し出される映像は迫力満点。時々、カメラに相当する『魔導監視眼(マジックアイ)』を切り替えながら、中継は行われていった。

「マルシアさん、3位……」
 エルザがぽつりと呟く。その脳裏には、2年前の競技の様子が思い起こされていた。
「あの時も、前半戦は速度を抑え気味にしていて……」
 各ステージの状況が不明なため、言わば『露払い』として2艇程度に先行させ、様子を伺いつつ、チャンスを虎視眈々と狙っていた。
「きっと、今回も」

「広いエリアに出て、各艇、一斉に速度を上げましたね、解説のベルナルドさん」
「そうですね。水車駆動の場合、先程ジンさんが述べてくれましたように、飛沫が飛ぶわけです。ですので真後ろに付くのは避けたいわけです」
 操船者は人間なので、飛沫を被ることで視界が遮られたり、呼吸がままならなかったりというデメリットがある。
 ゆえに広いエリアでは、各艇、左右に広がって航行しているのだ。
「ですがその先に待つのは通称『ゲート』。船が並んで通り抜けることはできないほど狭い関門ですからね」
 浮かべた船で作られている『ゲート』。その間を抜けるため、何艇もが集中すると、危険でもある。
 そこをなんとか、少しでも先へと船を操ってみせることもまた見せ場となる。

「おおー!」
「行けー! 6番、そこだ!」
「3番頑張れ! 抜かれるな!!」
 観客席もヒートアップしている。
 仁もエルザもリシアもハンナも、そしてアーネスト王子とリースヒェン王女も、画面に釘付けであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170302 修正
(誤)1日おいた今日は、調整も万全でしょうからね、期待したいですね。。
(正)1日おいた今日は、調整も万全でしょうからね、期待したいですね。

(旧)横置き水車 / 横置き水車駆動
(新)横置き水車駆動……スクリュー
 スクリューと言う呼称はすでに30-42閑話61で出ていましたので……orz
+注意+
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