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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

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39-34 仁からの提案

「ジンさんは優しいですね」
 リシアが感激したような声で言った。
「ん、ジン兄はゴーレムも自動人形(オートマタ)も、とっても大事にしてる」
「だよね。おにーちゃんは必ず『一人、二人』っていうものね」
「ん」
「ああ、1体2体、って言わないんですね。ジンさんらしいです」
「そう。おにーちゃんは優しいの」
 仁があずかり知らぬところで、株が少し上がっていたようだ。

「ん、ジン兄は昔から人形が、好き」
「……」
 エルザの一言で、上がった株がまた下がった仁である。

*   *   *

 姉妹との感動(?)の再会も済み、落ちついた一同。
 そこに、リアンナがお茶(テエエ)を運んできた。
「エルザ様、ご無沙汰しております」
 そんな声に、見れば王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイドで、かつてエルザの担当をしていたケイトが、トレイに何やら載せてやって来たのだった。
「どうぞ」
「お、これは」

 それは『焼きアプルル』。
 アプルルの芯をくり抜き、砂糖やシナモンを加えてフライパンやオーブンで温めたもの。
 水分が抜けて甘さが引き立つと共に、しんなりした食感が好まれる。

「……なんだってさ」
 アーネスト王子が解説してくれた。
「ブルーランドのクズマ伯爵が教えてくれたんだよ」
「へ、へえ……」
 かつてビーナの家計を立て直す手伝いをしていた時に教えた食べ方である。
 おそらくビーナが作り、それを食べたクズマ伯爵がこちらへ伝えたものだろう。
 ちゃんと、シナモンによく似た香りもしていたので、工夫したことが窺えた。

「うむ、美味しいのう」
「甘いです」
「香りが、いい」
「おいしーい!」
「今日のは出来がいいね」
 皆に好評だった。
 お茶(テエエ)も、もちろんアプルル(テエエ)
「うん、いい香りだ」
「ネスト様、これはどうやって淹れておるのですか?」
「これはね。……ええとロッテ、知ってる?」
「はい。剥いたアプルルの皮をお湯に入れて沸かすのです。そうしますと香りがお湯に移りまして、こうしたお茶(テエエ)が楽しめます」
「……だって」
 くすっ、とリースヒェン王女は笑い、お茶(テエエ)を飲み干した。
「もう1杯いかがですか?」
「おお、是非に」
 そこへ今度は、王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイドから王子付き侍女になったライラがポップコーンを持ってやってきた。
「うん、甘いものばかりじゃなくこれもいいよね」
 さっそくアーネスト王子はポップコーンに手を伸ばした。
「殿下、あまりお食べになると夕食に差し支えますよ」
「うん……程々にするよ」
 ロッテにたしなめられたアーネスト王子は素直に言うことを聞いた。

*   *   *

 夕食も同じ顔ぶれで、であった。
 給仕をしてくれるのも同じメンバー。
「最近新しいメニューが増えてきたんだよ」
 とはアーネスト王子の言葉。
「ジンのところの食事は美味しかったからね。あれに触発されたんだ」
 出てきた献立は、白米のご飯、コンソメっぽいスープ、いろいろな天ぷら、ステーキ、野菜サラダ。
 仁としては組み合わせに難あり、と言いたいところだが、今回は無理もなし、と文句を飲み込んだ。

「でも『崑崙島』で食べたあの味は再現できていないんだよ」
 少々残念そうなアーネスト王子を、仁は慰める。
「今日はアンもロルもレファもいる。多少のアドバイスはできると思うぞ」
 素材については無理にしても、目の前で湯気を立てているご飯だかお粥だかわからないものをちゃんと炊きあげるコツや、揚げたてなのにへにゃっとしている天ぷらなど、調理法についてのアドバイスはできる。
 だが、まずは食事をしてからだ。

「……この『ごはん』、どうしてもこんなんなっちゃうんだよ。水の量や火の強さをいろいろ試しているらしいんだけどね」
「うーん、みごとにべちゃべちゃだな」
 苦笑する仁。これなら、最初からお粥にしたほうがましだろう。

 それから天ぷら。
 白身魚と野菜なのだが、さくさく感はまったくなく、もったりしている。間違いなく衣を作る際にかき混ぜすぎている、と仁でもわかった。

 それらに対し、スープ、ステーキは絶品であった。

「ごちそうさま」
 食後にはほうじ茶が出て来た。
「これだけの食材を輸入するのは大変だろうな」
 と仁が言えば、リースヒェン王女も頷いた。
「そうじゃろうな。ゆえに我が国では街道を整備するのじゃ」
「ああ、リースのところは海がないから陸送なんだね。僕のところは海運を考えているんだ。エリアス王国とタイアップしてね」
「なるほど、それはよさそうだな」
「ジンみたいに大きな船をいきなりは無理だろうけど、まずは20メートル級を増産するところから、かな」
 一気に大型船を造るのではなく、ステップアップしていこうということだ。
「扱いやすい大きさで、運搬効率も今より格段に上がるし」
 船員の雇用が増えるというメリットもある。
「その大きさの船なら、エリアス王国は既に作っているしね」
 海洋国家、エリアス王国には、既に30メートル級を建造することのできるドックが幾つもあるということだった。
「行ってみたいよね」
 何気なく呟いたアーネスト王子の言葉だったが、仁はいい機会だと感じた。
「殿下、許可を貰って、王女殿下と共に、エリアス王国へ行きませんか?」
 と提案したのである。
「いいね、行ってみたいよ」
(わらわ)も行ってみたいのう」
 リースヒェン王女も同意した。
 そこで、魔素通話器(マナフォン)を使ってそれぞれの国の許可を今夜のうちに得るべく、アーネスト王子とリースヒェン王女は席を立ったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170228 修正
(旧)「……んだってさ」
(新)「……なんだってさ」

(誤)まずは20メートル級を増産するところか、かな」
(正)まずは20メートル級を増産するところから、かな」
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