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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

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39-32 報告会その2

 昼食を挟んで、午後もまた報告会である。
 仁はリシアやハンナ、エルザたちにちょっとだけ会って、3人とも楽しくやっていることだけは確認した。

「ではこれから、遺跡で発見されたゴーレム資料の解読結果についての報告会を行います」
 午前と同じく内務相が進行役を務めている。
 出席している顔ぶれは、午前中とほとんど同じであるが、騎士など軍人がいないようだった。
 技術的な話を聞いても仕方ないということだろう、と仁は思った。
 そしてそれは、報告内容を聞いて確信に変わる。

「……骨格は内骨格にして、筋組織は****。腐食を防ぐための表面処理として++++を行う」
 ****や++++は解読ができない部分、もしくは資料の欠損部分らしい。
「最低でも強酸に強き素材を厳選すべし」
 これらの内容は超巨大蟻(ギガアント)対策であることは疑いようがない。
「盾は大きく作り、これも強酸への対策を施す。生体素材は厳禁なり」
 確かに、ほとんどの生体素材を溶かしてしまうだろう、と、仁は胸中で頷いた。
 かつての礼子の皮膚、『海竜(シードラゴン)』の翼膜でさえ溶かしてしまったのだから。

「……そしてその制御は@@@@@とする。……以上が資料一に書かれていた内容です」
 仁は、資料一は、対超巨大蟻(ギガアント)用ゴーレムのコンセプトが書かれていたのだろうと考えた。

「続いて資料二ですが、こちらは非常に欠損が多く、さらに意味不明な内容となってしまいましたことを最初にお断りいたします」
 皮紙の場合、保存状態が悪いとカビが生えたり、最悪の場合虫に食われたりするのである。
 今回は両方だったらしい。
「ええと、ゴーレムの補充とか、(コア)がなにやら、としか読み取れませんでした」
 仁は、遺跡内で発見された大量の魔結晶(マギクリスタル)は、誘き寄せるエサであると同時に、新たにゴーレムを作るための制御核(コントロールコア)用だったのだろうと推測している。

「資料三、四は、ほとんど全てがカビで覆われ、解読不能。資料五には当時の鉱山に超巨大蟻(ギガアント)が現れた状況が書かれていました」
 簡単に述べられたそれによると、長年魔結晶(マギクリスタル)を採掘してきた坑道がおよそ200メートルの地下に達した時、超巨大蟻(ギガアント)が現れたということだ。
 最初は1匹2匹単位だったが、10日後には溢れんばかりの数となり、多大な被害を出しながら坑道奥へ押し戻した。
 虫型魔物は低温に弱いため、『冷凍(フリーズ)』等の魔法を使い、弱体化させて行ったということだった。

(なるほど、理にかなっているな)
 仁は旧レナード王国の人たちの知恵に感心していた。

「資料六は、施設、つまり遺跡の見取り図などでした。それによりますと、もう1つ資料室のような場所があるらしいのですが、当時の調査ではそこは瓦礫の下になっており、過去何らかの災害に見舞われたものと推測します」
 さすがに皮紙などの資料は残っていないだろうと思うと、それは残念だ、と仁も思った。

「……以上であります」
 ぱらぱらと拍手が起こった。
「さて、質問などありますかな? ……ジン殿」
 仁は真っ先に挙手をした、どうしても知りたいことがあったからだ。
「はい。資料一の解読不明な箇所ですが、それは全て、『文字そのもの』が読めなかったのでしょうか? それとも、文字は読めても単語が理解できなかったのでしょうか?」
「お答えします。筋組織は……の部分は『めたーろ』? というように読めたのですが、意味がまったくわからなかったのです。同様に表面処理として……のあとも『ぱしべいと』となっており、理解不能でした。あとは虫食い等でまったく文字すら読めませんでした」
「それは残念ですね。わかりました」
 仁は礼を言い、少し考え込む。
(『めたーろ』は……『METALLO』かな? METAL? 金属の? ……金属製の筋肉ということか?)
 それはありそうだ、と仁は思った。超巨大蟻(ギガアント)の体液に対する抵抗は、生体素材よりも金属の方が強そうだからである。
(もう1つは『ぱしべいと』か……こっちはもしかして『PASSIVATE』か!?)
 パシベート処理はステンレスの防錆処理の一種である。
 ステンレス鋼において、含有するクロムによって自然にできる不動態被膜は非常に薄いため、これを人為的に厚くする処理だ。
(そう考えれば、強酸に対抗するための表面処理なんだろうな……)
 金属工学にはかなり詳しい仁は、おおよその見当を付けたのであった。
(だけどこれ、説明しても理解してもらえないだろうな……)
 それが少々歯がゆい仁であった。

「……他にはございませんかな?」
 仁が考え込んでいるうちに、別の質問と回答が済んでいた。
 そして、それ以上質問が出ることはなく、報告会はそれまでとなったのである。

「この後、休憩を挟みまして、魔法省の関係者で検討会を行いますが、参加御希望の方はいらっしゃいますかな?」
 解散前に、ケリヒドーレ魔法相が宣言をした。
 仁も出てみたかったが、朝からずっとエルザやハンナ、リシアたちを放っているので、今回は見送ることにした。
 そこへやって来たのは。
「ジン、これでゆっくり話せるね!」
 アーネスト王子とリースヒェン王女であった。

「これからお茶(テエエ)にするんだけど、ジンも一緒にどう? もちろんエルザや、一緒に来たお友達も一緒に」
「ネスト様、『一緒に来たお友達も一緒に』という言い方は面白いですのう」
「あ、あはは」
 仲のいい2人であった。

*   *   *

「うわあ、こんな部屋、初めて!」
「はは、気に入ってもらえて何よりだよ」
 仁たちは王城内の一角にあるアーネストの居住エリアにある居間に案内されていた。
 居間といっても応接室とどこが違うのかと聞きたくなるような部屋で、さすがに王子の居室であると思わされた。
「わあ、綺麗な壁掛け!」
「それはのう、確か南部地方特産のタペストリーじゃ。……でしたな、ネスト様?」
「うん、そのとおりだよ」
 ハンナはエゲレア式の調度などが珍しいようではしゃいでいる。リースヒェン王女はそんなハンナを姉のような目で見つめていた。
 エルザは何度かエゲレア王国に来ているし、元々が子爵令嬢なので、落ちついた雰囲気を纏ってお茶(テエエ)を飲んでいた。
 一方リシアは、新貴族であり、エゲレア王国王子が同席しているということでガチガチに緊張しつつお茶(テエエ)を飲んでいる。
 そして仁はといえば、アーネスト王子の斜め後ろに立つ侍女ゴーレム、ロッテに話し掛けていた。
「ロッテ、調子はどうかな?」
「はいジン様、悪くありません」
「そうか。せっかくだからあとで診てあげよう」
「はい、ありがとうございます」
 そして仁の視線はアーネスト王子の隣に座るリースヒェン王女、その斜め後ろに立つティアへと向き……。
(あ)
 不意に、過去の約束を思い出したのである。
(いつだったかティアに、姉妹であるレファに会わせてやる、って約束したことがあったっけ)
 それに気が付いた仁は、小声でそっと礼子にそのことを告げる。
 礼子は内蔵魔素通信機(マナカム)で老君に伝え、老君は今の状況を考慮し、最適な手を打ってくれるだろうと仁は期待した。

*   *   *

『どうせならアン、ロル、レファ、全員を送り込みましょうかね』
 蓬莱島では老君が動き出していた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170216 修正
(誤)午前と同じく内務相が進行役と務めている。
(正)午前と同じく内務相が進行役を務めている。

(誤)それに気が付いた仁は、小声でそっと礼子のそのことを告げる。
(正)それに気が付いた仁は、小声でそっと礼子にそのことを告げる。
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