挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1445/1737

39-30 エゲレア王国での報告会

 結局、夕方までアスントを見物して回った仁たちは、山のように買い物をして王城へと戻った。
 礼子とエドガーが荷物持ちである。

「楽しかった。ジン兄、ありがとう」
「おにーちゃん、こんなに買ってくれて、ありがと!」
「ジンさん、私まで……よろしかったのでしょうか?」
 エルザ、ハンナ、リシアに、それぞれ気に入ったものを買ってやった仁はそれなりに充実していた。
 これまでの人生で、施設の小さい子を除き、誰かに何かを買ってあげたという経験は数えるほどしかなかったからだ。
 それ以前に、買い物をするという財力がなかったということもあるが。
 実のところ、今回の買い物は全てエゲレア王国持ち、とリアンナが言ってくれていたのだが、仁はそれを断って自腹を切ったのだ。

「作ったもの、だけじゃなく、こうして買ってあげる、というのもいいものだな……買ってもらった方も嬉しそうだ」
 少しだけピント外れな感慨を抱きながら、仁は部屋で寛いでいた。
 エルザたちは買ってきたものの梱包をほどいて、『自分のもの』としてしげしげと眺め回している。
「店で手に取った時はまだ店の商品、今は自分のもの、か……」
 そんなことを考えながら、仁は礼子が淹れてくれたお茶(テエエ)を一口飲んだ。
 リアンナは今、外出の報告に行っている。
 間もなく、夕食の時間であった。

*   *   *

「ジン、この前の『世界会議』には行けなかったからつまんなかったよ」
(わらわ)もじゃ」
 夕食はアーネスト王子とリースヒェン王女も同席して、王城内の小食堂で行われた。
 小食堂と名が付けられていても、王族や来賓が使うものらしく、しつらえは豪華である。
「『アヴァロン』というのは凄いところみたいだね。……リアンナは行ったんだろう? いいなあ」
「恐縮でございます」
 リアンナ、ケイト、リーザらは前回の世界会議でエゲレア王と随臣の警護に同行していたのである。
「次は是非行ってみたいよ」
「ネスト様、世界会議は遊びに行く所ではございませぬぞ」
「わかってるよ」
 無邪気な発言をしていたアーネスト王子が、隣に座るリースヒェン王女にたしなめられる、という一幕もあったが、夕食は和やかに進んだ。

「明日は9時から報告会です」
 部屋に戻った仁たちに、リアンナがそう告げた。
「朝食は7時半頃でよろしいでしょうか?」
「ああ、それでいいよ」
 仁たちは皆早起きであるから、6時でも問題ないくらいである。
「あとはわたくしがおりますので、リアンナさんはお引き取り下さい」
 礼子がそう告げると、委細承知とばかりにリアンナは一礼して部屋を出て行った。

「さて、まだ寝るには早いから、ゲームでもしようか」
「うん!」
 仁が提案するとハンナが真っ先に賛成した。
「小型の双六を持ってきてあるんだ」
 手荷物の中から仁は双六セットを取り出した。
 エゲレア王国といったら双六だ。仁は、『ゴーレム園遊会(パーティー)』のことを思い出していた。
 あの時は暇つぶしに、テーブルにマスを描いて双六を楽しんだものである。

「ええと、これが双六と言うんですか?」
 双六盤、コマ、サイコロのセット。
「そうさ。リシアは初めてだっけ?」
「え、ええ」
「リシアおねーちゃん、ルールは簡単だから!」
 ハンナがリシアにやり方を説明してくれた。
「なるほど、わかりました。ありがとう、ハンナちゃん」
 リシアも納得したようなので、仁はいよいよ始めることにした。
「まずは順番を決めよう」
 サイコロを振って大きい数を出したもの順と決める。
 エルザ、仁、リシア、ハンナの順に決まった。
「礼子とエドガーもやろう」
「いいのですか?」
「はい、お父さま」
 サイコロを振るだけなので、礼子やエドガーと言えども仁たちと条件は変わらない。
「あ、1回休み」
「うわ、5つ戻るだと」
「やった、上がりました!」
 6人で双六を楽しむ仁たち。
 エゲレア王国の夜は更けていった。

*   *   *

 翌日は予定通り7時半に朝食を食べ、8時半には報告会会場である大会議室へと仁は移動した。
 因みに、双六に夢中になって夜更かしをしそうになったものの、礼子とエドガーからの諫言によって寝不足せずに済んでいる。
 とはいえ、今回、ハンナとリシアはさすがに出席できるはずもなく、エルザも出る必要を感じないということで、出席は仁と礼子のみとなった。
 大会議室は学校の標準的な教室6つ分くらいの広さがあった。
 中央に大きなテーブルが一つあって、その周りに席がしつらえてある構造だ。
 既に何人かは席に着いていた。
「おお、ジン殿、久しいな」
 そう声を掛けてきたのは宰相のボイド・ノルス・ガルエリ侯爵。
「『崑崙君』、先日はいろいろと世話になった」
 とはエゲレア王ハロルド・ルアン・オートクレース。
 その隣にはアーネスト第3王子が座り、更にその隣にはリースヒェン王女が座っていた。2人は仁を見て小さく手を振る。仁も同様に手を振り返し、席に着いた。
 今回の報告会、仁も楽しみにしている。
 というのも、地下に施設が残っているのはわかっていたが、そこの調査は現地を訪れた調査隊に任せていたため、老君も内容は把握していなかったのである。

 少しずつ出席者が集まってきて、午前9時、定刻通りに報告会が始まる。

「それでは定刻になりましたので報告会を始めたいと思います」
 進行役はウィリアム・ヘクス・サールド内務相。
「報告者、始めてください」
「はっ。自分はポウル・レイド。第3騎士隊隊長であります。今回の調査隊隊長を仰せつかりました」
 ポウル・レイドは一礼すると、報告を開始した。
「我々は、ソルドレイク遺跡を目指しました。ここの遺跡は、かつて超巨大蟻(ギガアント)が封じ込めてあった場所です」
 ポウルは、かつての出来事と惨状を簡単に説明する。
 その場に居合わせた彼の説明は具体的かつ的確で、聞く者は皆当時の惨状に思いを馳せたのである。
 ただし、セルロア王国の調査団とのいざこざについてはさらりと流す。
 当時と今では両国間の関係がまったく異なっているからだ、

「……ですが、今回はまったく何も起こりませんでした。細心の注意を払い、少しずつ遺跡の内部に進み、調査しました。そして……」
 ポウル・レイドはいよいよ遺跡の調査結果を語り始めた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170224 修正
(誤)ここはの遺跡は、かつて超巨大蟻(ギガアント)が封じ込めてあった場所です」
(正)ここの遺跡は、かつて超巨大蟻(ギガアント)が封じ込めてあった場所です」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ