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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

1443/1619

39-28 首都アスントにて

「ジン! リース!」
 エゲレア王国王城では、第3王子アーネストも一行を出迎えた。
「殿下、ご無沙汰しております」
「また会えて嬉しいよ、ジン」
 少し大人びた雰囲気のアーネスト王子。身長も170センチくらいまで伸びている。
 そういえば今年15歳だったな、と仁は思った。
「ネスト様!」
「リース、ようこそ!」
 そんなアーネスト王子であるが、リースヒェン王女に微笑みかけるその顔つきは昔のままだった。
「ハーヴェイ・ソトス・フレグロード魔法技術省次官、ようこそ」
 が、ハーヴェイに対する態度は、王族としてのそれである。
 そして仁には昔のまま、フランクな口調で話し掛ける。
「ジン、是非王城に泊まっていってよ。いろいろ話もしたいしさ」
 『コンロン3』でエゲレア王国に来た以上、避けられない話である。それは仁もわかっていた。
 こっそり城下町を見物したいなら、転移門(ワープゲート)で来ればいいのだから。
「ありがとうございます」
 この場にはアーネスト王子以外にも大勢の騎士や兵士がいるため、仁は敬語を使っていた。
「リースヒェン王女様ご一行はこちらへどうぞ。ジン様ご一行はこちらでございます」
 仁たちを案内するために現れたのは王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイド第2班班長のリアンナ。近々『アヴァロン』勤務になる予定の、優秀な侍女である。
「やあリアンナ、よろしく頼むよ」
「はい、こちらこそよろしくお願いしますね」
「それではジン、エルザ、ハンナ、リシア、レーコ、エドガー、また後でな」
 律儀に全員の名を呼び、リースヒェン王女はハーヴェイ魔法技術省次官と共に案内されていった。

「こちらの部屋をお使い下さい」
「ありがとう」
 仁たちが案内されたのは、大きな居間に隣接して寝室が4つ。
 うち1つはダブル、2つはシングルで残り1つがツインとなっていた。
 どうやら大家族用の貴賓室らしかった。
 夫妻がダブル、小さな子がいたら乳母と共にツインを使う、というような設定なのだろう。
 もちろん仁とエルザがダブルで、ハンナとリシアはそれぞれシングルを使うことになった。
 長期滞在の予定はないので荷物も少ない。足りなければ蓬莱島から送らせることもできるからだ。

「昼食はいかがいたしますか?」
 時刻はそろそろ正午になろうという頃。
「部屋に運ばせましょうか?」
 リアンナの言葉に頷く仁。
「そうだな、そうしてくれ」

 昼食は、かなり仁の好みを反映させたものになっていた。
「最近、献立が増えてきたんですよ」
 運んできたリアンナが微笑みながら言った。
「ジン様に招かれた方たちが、戻って来てから味にうるさくなりまして、一時厨房は大混乱したほどです」
「なんか悪いことしたかな」
 だがリアンナは笑って首を振った。
「いいえ、食に関する意識が高まったことはいいことだと、皆さん仰ってますから。当の料理長さえも」
「それならいんんだ」
「おにーちゃん、食べようよー」
 仁が手を付けないので、エルザやハンナもおあずけ状態であった。
「ああ、ごめん。……いただきます」
「いただきます」

「あ、美味しい」
 エルザが口にしたのは大麦の粥。
 塩と香辛料、それにハーブの香りがして、なかなかのものだった。
「これ、美味しい!」
 ハンナが食べているのはパスタのような麺。
 バターと胡椒、それにハーブの香りが加わって、単純な中にも味わいがある。
「うん、うまく焼けてるな」
 仁は焼き魚を食べてみて、味付けが気にいった。そしてそれ以上に、冷めていないことに感心していた。
 焼き魚は冷めてしまったら、身が硬くなってまずくなってしまうのだ。
「あ、このお魚美味しい」
 ハンナも焼き魚が気に入ったようだ。これもバターと塩胡椒なのだが、それ以上に海の魚ということで、クライン王国出身のハンナにはもの珍しかったらしい。
「本当ですね、美味しいです」
 同じくリシアも焼き魚が気に入ったようだった。
「エゲレア王国はハーブが豊富?」
 エルザも食べながら仁に尋ねてくる。
「いや……エルザの方が知っているんじゃないのか?」
「あまり記憶にない」
 ここでリアンナから説明が入る。
「ええとですね、ここ半年ほどですが、ハーブを使う料理が流行り始めまして、今年に入って王城でも使うことになったんですよ」
「へえ、そうなんだ」
 仕掛け人が誰なのか気になるところである、と思ったら、思わぬところから答えが出てきた。
「(第5列(クインタ)のデネブ10、イリーナです)」
 仁にしか聞こえないくらいの礼子の声。
「(町の食堂の若女将としてデネブ10が老君から聞いていろいろ行ったようです)」
 第5列(クインタ)は各国に散らばり、情報収集のみならず、地域への貢献などもやっている。
 今回のケースは、食生活の向上であろう。
 こうして仁が訪れた時のため、という理由が一番大きそうだ。

「ごちそうさま」
「ごちそうさま、美味しかった!」
「ごちそうさまでした」
「美味しかったです。ごちそうさまでした」
 食べ終わった仁たちはエゲレア王国特産のテエエを飲む。
 やはり王城で使われている茶葉は特上らしく、香りと味が格別であった。

「午後はいかが致しますか?」
 食器類を下げた後、リアンナが尋ねてきた。
「そうだな……明日は遺跡の調査報告会だろうから、今日は城下を観光に行きたいな」
「それでしたら、お伴……いえ、ご案内致します」
 仁もエルザも、ましてリシアもハンナも首都アスントには詳しくないのでこの申し出はありがたかった。
 もし仁たちだけだったなら、第5列(クインタ)のミラ1、メイベルに頼もうかと思っていたのである。
「それじゃあ頼もうかな」
「はい、承りました。上司に断ってまいりますので5分ほどお待ちいただけますか」
「うん、その間にこっちも出掛ける準備しておくから」

 こうして仁たちは、リアンナの案内でエゲレア王国の首都アスントを見物することになったのであった。
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