挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1442/1625

39-27 依頼

 報告会の後、仁たちは宰相とリースヒェン王女に呼び止められた。
「ジン殿、少しよろしいか?」
「ええ、なんでしょう?」
 別に断る理由もなく、仁たちは別室……小会議室へと通された。
「エゲレア王国も遺跡の調査隊を出していたのはご存知かな?」
「ええ、耳にしています」
「それは結構。で、エゲレア王国でも調査報告会が行われるのだが、興味はないかね?」
 なんとなく話の流れが読めてきた仁は、
「ありますよ」
 と答える。
 それを聞いた宰相の顔に笑みが浮かんだ。
「そうか。それならば、一つ頼みがあるのだが……」

 宰相の頼みというのは、リースヒェン王女とティア、そしてハーヴェイ・ソトス・フレグロード魔法技術省次官をエゲレア王国に連れていってもらえないだろうか、というものであった。
 行きだけでかまわないそうだ。
「『コンロン3』の速度なら可能ですね」
 もちろん、定員からみても十分余裕がある。
「では、是非頼む! もちろん礼はする」
「ええ、いいですよ。で、いつから始まるんでしょうか?」
「明後日だそうだ」
「でしたら明日の朝出発で間に合いますね」
「うむ。是非頼む」

 仁としても、エゲレア王国の調査隊が何をつかんだか知りたかったし、知り合いもいるので快く引き受けたのである。
「ああ、それに、リシア・ファールハイト。君も同行してよいぞ」
 宰相はリシアに同行の許可を出した。
「あ、ありがとうございます!」
 仁夫妻とリシアが懇意にしているのを知っている宰相ゆえの許可であった。
「これは公式訪問になるのでしょうか?」
「いや、あくまでも貴殿の『コンロン3』に便乗させてもらうという建前だから、ジン殿が誰を伴ってエゲレア王国に行こうとも問題はない」
 仁がハンナを連れて行きたいと思っていることを見越し、宰相は説明をした。あくまでも仁がエゲレア王国に行くので、一緒に乗せて行ってもらう、というスタンスと言うことだ。
「わかりました」
 仁も納得する。ただ一つの疑問は、どこへ2人を送り届ければいいのかということである。
「『崑崙君』は各国王城へ自由に行き来できると聞いているので、王城へ送っていただきたいのだが」
 それも既知のことなので、仁は納得した。
「承知しました」
 ここでリースヒェン王女が嬉しそうに微笑んだ。
「ジン、よろしく頼む!」
 リースヒェン王女としても、婚約者であるアーネスト王子のいるエゲレア王国へ行くのは楽しみなようだ。

 そんなこんなで、仁、エルザ、ハンナ、リシア、礼子、エドガーらは、リースヒェン王女とハーヴェイ魔法技術省次官と共にエゲレア王国へ行くことが決まった。
「あたし、エゲレア王国って初めて。楽しみ!」
 ハンナは嬉しそうだ。
 仁としても、この機会にハンナに、今まで行ったことのない国を見せてやりたかったのでちょうどよかったのだった。

「私も行っていいのでしょうか……」
 対して、リシアは少し遠慮気味だ。
「宰相がいいって言ってくれたじゃないか。あとはトカ村での業務だな」
「……それは、今はあまり仕事はないですし、フレッドも大分仕事を覚えてくれましたし」
「フレッド、って、あの兵士の少年だっけ?」
「ええ、そうです。事務仕事の方が向いているようで、近々正式に秘書官に取りたてようかと思っています」
「へえ」
 人は、自分でも気が付かないような意外な才能を持っている場合がある。
 教育機関に通うということは、そうした才能に気付く機会を増やすということでもある。
「リシアだって、騎士より救護騎士の方が向いていたわけだし、エルザも工学魔法の才能が隠れていたわけだしな」
 一番意外なのはハンナだけど、と言う仁。
「おにーちゃんのおかげ」
 ハンナは少しはにかみながらそう答えたのである。

 その夜も仁一行はクライン王国王城に泊まった。

*   *   *

「では『崑崙君』、娘をよろしく頼む」
「はい、お任せください」
 翌日、仁たちは『コンロン3』でエゲレア王国に向かうべく、発進準備をしていた。
 そこへ、リースヒェン王女を伴って国王アロイス三世が現れたのである。ティアも一緒だ。
 少し遅れてハーヴェイ魔法技術省次官もやって来た。

「ジン殿、気を付けてな。殿下、行ってらっしゃいませ」
「はい、ありがとうございます」
「うむ、行ってくる」
 宰相に言葉を掛けられ、仁とリースヒェン王女、ティアは『コンロン3』に乗り込んだ。エルザとハンナは既に機上の人である。
「リシア、君も気を付けてな」
「は、はい!」
 リシアも乗り込み、最後は礼子が一礼して『コンロン3』に乗り込み、ハッチを閉じた。
 そして『コンロン3』はゆっくりと上昇を開始。次第に高度を上げていく。
 数分後には見送る者たちの視界から完全に消えてしまった。

*   *   *

「おおお、と、飛んでますな!!」
 一番興奮しているのはハーヴェイ魔法技術省次官だ。
 彼は170センチ、65キロという、この世界での標準的な体型に茶色の髪。茶色の目というこれまたありふれた容姿をしていた。
 年齢は、聞くところによると35歳。宰相の話では、かなり有能だということだった。
「ジン殿、私は一度だけ我が国の飛行船に乗ったのですが、安定性が段違いですね。何か秘密があるのでしょうか? ……あ、これは聞くべきではなかったかもしれませんね」
 やや興奮していろいろと仁に尋ねては自分でそれを取り消したりと、なかなか忙しい性格のようである。
「ハーヴェイ、少しは落ち着け」
 リースヒェン王女にまで言われる始末。
「は、はい、失礼致しました」
「確かに、何度乗っても空からの眺めは飽きないがのう。特にジンの作ったものじゃし」

 床窓から下界を眺めながら言うリースヒェン王女。『コンロン3』は高度3000メートルを時速100キロほどで飛んでいるので、時折雲が下を流れていく。
 クライン王国首都アルバンからエゲレア王国首都アスントまでの距離はおおよそ300キロ、所用時間3時間ほどだ。
 アルバンを発ったのは午前8時頃なので、午前11時には到着できることになる。
 『コンロン3』が向かうことは、『魔素通話器(マナフォン)』により連絡が行っているはずなので、空中で誰何される心配もない。
 それ以前に『コンロン3』を見間違うはずもないのであるが。

 そして予定どおり、仁たちは午前11時にエゲレア王国首都アスントに到着。
 エゲレア王国の熱気球に出迎えられ、先導されて『コンロン3』は王城中庭にある特別飛行場に着陸したのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ