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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

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39-23 お忍び1

 『コンロン3』の中で、仁はリースヒェン王女の変装を試みた。

「まず、服装はできるだけ簡素にして」
「ふむ」
「髪型は三つ編みにしてみましょうか」
「おお、ハンナとお揃いじゃな」
「髪の色も一時的に変えてしまいましょう」
「おお、面白いな」
「あとはその口調ですね。ハンナみたいに喋れませんか?」
「できると思うぞ……思うわ」
「その調子です」

 仁自身も、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』のローブから、普段着に着替える。エルザとリシアも同様だ。
 ハンナはよそ行きなのでそのままとした。
 仁自身は同行者も含めたフリーパスの許可証を所持しているので、この状態の王女を伴って一旦王城を出ることに問題はない。

「さて、この大人数をどう説明したものか……」
 一般庶民としては大人数の一行。間違いなく町に出たら目立ってしまうだろう。
「ジン兄、ローランドさんに相談したら?」
「ああ、その手があったな」
 ラグラン商会の人なら、町にも詳しいだろうし、顔も効くだろう。その上で、遠方からの客人を案内しているということにすれば、この人数でも違和感がなくなる。
「おにーちゃん、いいアイデアだね!」
 ハンナも賛成してくれた。
「あとは、ティアの青髪も一時的に色を変えないとな」
 こうして擬装は完了した。

 仁たちは門衛に挨拶をして城を出たが、その際、変装したリースヒェン王女を見た兵が首を傾げていたという。

*   *   *

 ラグラン商会の場所は、礼子が老君に問い合わせてくれたのですぐに判明し、一行は間違うことなく向かうことができた。
「なるほど、そういうことですか」
 ローランドはすぐに一行を奥の応接室へ案内してくれ、仁の説明を黙って聞いていたが、全部聞き終えるとリースヒェン王女に向かって一礼し、胸を叩いた。
「お任せください。……少々お待ちいただけますか」
 そう言って奥へ行き、1分くらいで戻ってくる。
「商会長の許可を貰ってきました。行き先にどこか御希望はありますか?」
 この質問に、仁はリースヒェン王女の顔を見る。
「そうじゃ……そうね、人の多い場所ならどこでもよい……いいわ」
 まだ少し言い辛そうだが、口調を変えようと一所懸命なリースヒェン王女。
「そうだ、これからは全員リースと呼んで……ちょうだい」
 仁やエルザは、公式の場でなければリースと呼んでいたが、ローランドやリシアにもそう呼ぶように、ということだ。
「うん、リースお姉ちゃん!」
「はい、リースさん。では行きましょう」
 こうして、仁たちは連れ立ってラグラン商会を出たのである。

「人が多い場所といえば中央通りです。うちの第3支店が、最近中央通りにできましたので、そこへ向かいましょう。歩いて15分ほどです」
「おお、それはいい……わね」
 リースヒェン王女……リースはきょろきょろと周囲を見回しながら歩いているのでなかなか進まないが、それに文句を言う者はいない。
「今日は何というか……町の様子が違うのう……わね」
 やはり普段は、お忍びといっても王女が町に出ているということが通達されていたのだろう。
 今日はそういうこともしていないので、ありのままの町の様子が見えているというわけだ。
「皆、楽しそう……ね。いいこと……だわ」
 今一つ口調に慣れない様子がわかるだけに微笑ましい。
「あ、リースお姉ちゃん、あそこに面白そうなお店があるよ!」
 ハンナはリースと手を繋いで歩いており、見つけた店へとその手を引いて行く。
「どれどれ? ……ほう、これは……」
 仁たちも少し遅れてその後を追った。

 その店は最近できたばかりのようで、作りも斬新なものだった。
「へえ、小物の店か」
 置物、壁掛け、額縁に入った絵などが所狭しと置かれている。
 いずれも一般向けのようで、品質的にはそこそこ、といったところだ。
 エルザはリシアとエドガーと、仁は礼子と、リースはハンナとティアと一緒になって見て回っている。
 ローランドはそんな彼等を一歩離れて見守っていた。

「これ、かわいい」
 そんな中、エルザが見つけたものは。
「可愛いですね」
 リシアも顔を綻ばせる。それは、マスコット人形であった。
 陶器で作られているようで、馬をデフォルメした置物。他には猫、狐、うさぎ、鹿らしきものがある。

「おお、これはいい……わね」
「うん、可愛い!」
 一方、リースとハンナも人形を見つけていた。こちらはビスクドールのような人形で、多少なりとも関節が動くようだ。
「おにーちゃんなら作れる?」
 ハンナは振り返って仁を呼んだ。
「どれどれ……ああ、可愛いな。欲しいのかい?」
「うん……」
「わら……私も欲しいぞ」
 『それじゃあ』と言いかけて、仁は手持ちのお金がないことに気がついた。
 普段はそれほど持ち歩かない上に、今回はこうして買い物をするつもりがなかったのだ。
 『コンロン3』に行けば、転移門(ワープゲート)を使ってお金を取り寄せられるのだが。
「それでしたら、私が」
 ローランドが申し出た。どうやら、商会長からこうした場合に備えて、お金を預かってきたようだ。こうした抜け目のなさは商人らしい。
「うむう……」
 だが、リースは渋った。
 王族として、一商人からそういった援助を受けることに抵抗があるようだ。
「リース様、後ほどお返しなさるということで、今はお借りなさいませ」
 そんなリースに、ティアが助言をした。
「おお……ええ、そうね」
 こうして、リースはローランドに立て替えてもらい、人形を手に入れたのであった。
「ハンナはよかったのか?」
 仁が尋ねると、ハンナはこくりと頷いた。その理由とは、
「あとでおにーちゃんに作ってもらうから」
 ……ということであった。
 仁は微笑んでそれを引き受けたのである。

 その後、一行はその店を出て、再び中央通りへと向かった。
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