挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

1437/1568

39-22 懇談

 リースヒェン王女が説明した街道整備計画とは、次のようなものだった。

・クライン王国首都アルバンから延びる街道を順次整備していく。
・まずトカ村(カイナ村方面)への街道整備。
・エゲレア王国方面へ延びる街道の整備。
・フランツ王国方面へ延びる街道の整備。
・整備内容の1は道幅を、馬車が楽にすれ違える4メートル以上に調えること。
・整備内容の2は凹凸を極力減らし、馬車での移動速度を3割向上させること。

「……どうじゃ?」
「基本的にはいいと思うよ」
 仁は正直なところを述べた。
「うむうむ。……で?」
 基本的には、という注釈が何を意味しているのか聞かせてほしい、とリースヒェン王女は微笑んだ。
「俺は政治のことはほとんどわからないし、口を出す気もない。だから、別方面からの意見を言わせてもらう」
 と前置いて、仁は思ったところを口にすることにした。
「まず、街道を利用しやすくすること。それから、各町の発展を促すこと。この2つを組み込んだらどうかと思う」
「ほう? 具体的には?」
「ラグラン商会には少し話をしたんだが、『街道の駅』を作ったらどうかと思う」
「『かいどうのえき』じゃと?」
 ここで仁は、ラグランたちにした説明をリースヒェン王女にも行った。
「ふむ。無料の休憩所を設け、旅人の便宜を図ると共に、有料の施設や売店を併設し、利益も出そうということか。なかなかじゃな!」
 リースヒェン王女にも『街道の駅』構想はなかなか受けがいいようだ。
「とはいえ、これを組み込むには予算的に厳しいものがあるのう……」
 クライン王国は財政難の真っ最中である。リースヒェンが悩むのもむべなるかな、であった。
「商人たちに話をして、予算を出させるかのう……」
 ラグランやローランドに話をしてわかっているが、商人としてもこの構想は旨味がある。
 完成時には優先的に出店を許可する、などの特典を与えれば、出資する商人も多いだろうと思われた。

「それから、施設や設備について。水とトイレだな。これは俺も協力できると思う」
「うむ、その時は頼む! もちろん、礼はするぞ」
「あとは『舗装』だな……。何か安上がりな方法があるといいが」
 舗装には、馬車などが走りやすくする他に、降雨後に泥濘化するのを防ぐ目的もある。
「今後の課題じゃな。ジン、感謝する!」
 リースヒェンは手元の紙にメモを取ると、それをティアに渡した。
「預かっておいてくれ」
「はい、姫さま」
「さて」
 リースヒェン王女はあらためて仁たちに向き直った。
「難しい話はこれくらいにして」
 リースヒェン王女はにこりと笑う。
「いろいろ話を聞かせてくれ!」

 運ばれてきた昼食を食べながらいろいろ話をする。
 クライン王国では、昼食は話をしながら和気藹々と食べるものということで、話が弾んだ。

「この前、グロリアが率いる調査隊が戻って来たのじゃが、力不足を痛感しておった。『世界警備隊』ができたなら是非参加し、鍛えてもらいたいと言うておったぞ」
 それは仁も老君を通じて聞いていた。
「ああ、グロリアさんなら、きっと幹部になれるでしょうね」
 ここでエルザが一言。
「グロリアさんは、結婚しないのでしょうか?」
 これに対してリースヒェン王女は、
「うむ、近衛騎士じゃからの。色々面倒なこともあるんじゃろう」
「そうですね、近衛騎士という立場はいろいろと国の機密も耳にしていますからね」
 リシアも元は救護騎士。そのあたりの事情には通じている。
「確か、結婚するなら2年前に申請することが騎士規約に入っていた気がします」
「何、そんなのがあるのか!」
 それを聞いた仁は呆れとも驚きともつかない声をあげた。
「国によって違う、と思う。ショウロ皇国の軍にはそこまでの縛りは、ない」
 兄フリッツが軍人なので、エルザもそのあたりことは多少知っているのだ。
「兄さまは家に戻ってくると、いろいろ軍での話をして、くれた」
「それもどうなんだ?」
「もちろん、機密に類することは話さない。それに、父さまも軍人だったから」
「ああ、確かにな」
 父と息子とでそういった話をすることもあったのだろう、と仁は思った。
 そんな話題を受け、
「うーん、『世界警備隊』は職場結婚ってどうなんだろう?」
 などと考え出した仁であった。

「ま、まあ、その話はいずれあらためてしようではないか」
 考え込んだ仁を見て、リースヒェン王女が慌てたように言った。
「ジン兄、戻って来て」
「……あ、悪い悪い。考え込んじまったな。俺の悪い癖だ」
「ふふ、気にするでない。……そうじゃ、明日、遺跡調査報告会があるのじゃが、出てくれぬか?」
「ああ、いいよ」
「それは嬉しいのう。今日は城に泊まってくれ」
「うん」

 泊まることになったのはいいが、時刻は午後1時半、まだまだ時間はたっぷりある。

「のうジン、城下へ行きたいのじゃが付き合ってくれぬか?」
「はい?」
「いわゆる忍びというやつじゃ。いつもはグロリアが付いてきてくれるのじゃが、明日の準備で忙しくてのう」
「ええと、それは王様……陛下もご存知なのですか?」
「それはもちろんじゃ」
 TVの時代劇のように、無断で城を抜け出すわけではないと知って、少し安心する仁。
「ええと、俺とエルザとリシアとハンナと礼子とエドガー、それにティアがお伴に付くということですか?」
 総勢8人。少し人数が多すぎる気がしないでもない仁である。
「ジンさん、高位貴族ならそのくらい普通ですよ」
 リシアが説明してくれるが、
「それじゃあお忍びの意味がないだろう?」
 と言って否定した。
「ん? ジン、それはどういう意味じゃ?」
 リースヒェン王女もよくわからない、といった顔をしている。
「その前に、お忍びの目的ってなんなんだ?」
 単なる息抜きなのか、それとも民衆の暮らしを実際に見て確かめることなのか、ということを仁は尋ねた。
「民衆の暮らしを……と言い切りたいところじゃが、息抜きもしたいというのは否定できん……」
 正直な答えに仁は微苦笑した。
「なら、やっぱり身分は隠した方がいい。王族でなくとも、高位貴族が相手だと、一般庶民は態度が変わるからな」
「うむう……そういうものか?」
 これにはリシアが説明をした。
「そうなんですよ殿下。私なんかですと町の人はほとんど態度変わりませんけど、一目で貴族とわかるような方ですとどうしても皆、気後れしますからね」
「そうなのか……」
「おそらくですが、殿下が町へ出る、となると、陰ながら護衛の人が付いていたり、事前に町にお触れが出たりしていたんではないでしょうか」
「ううむ……それは否めぬ」
 リースヒェン王女は思い当たることが多々あるようで、俯いてしまった。
「では、今回は本当の意味での『お忍び』をしてみましょう」
 悪戯っぽく笑って仁が言った。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170216 修正
(誤)完成時には優先的に出展を許可する、などの特典を与えれば、出資する商人も多いだろうと思われた。
(正)完成時には優先的に出店を許可する、などの特典を与えれば、出資する商人も多いだろうと思われた。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ