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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

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39-17 荒事

 2月20日夜、カルツ村で動きがあったようだ。
 21日の朝。
「ジン、昨夜、3番の穀物倉庫がやられた」
 4箇所の倉庫には、わかりやすいように番号を振ってある。
 3番は4つのうち最も北側にある倉庫だ。
「そうか、わかった」
 仁はさっそく老君に連絡をし、ラインハルトと共に蓬莱島へ移動した。

御主人様(マイロード)、ラインハルトさん。現在追跡中です』
 老君は既に追跡を開始していた。
『北の森林地帯を移動中ですね』
 場所が特定できれば『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の出番である。
「お、映った」
「こいつらは……」
 やや旧式にも見えるゴーレムが2体おり、穀物の入った袋を大量に抱えている。
「なるほど、ゴーレムがいたか」
「それなら荷物を持っての移動も楽だな」
 仁とラインハルトが見ているとも知らず、盗賊たちは森の中を北上していった。
「うーん、あのゴーレム、どっかで見たような気もするな……」
 仁はそんな感想を抱いたが、どこで見たのかは思い出せない。
 そもそも、かなり原始的な作りなので、そうそう見る機会もないはずである。
「まあ、実物を見たら思い出すかもな」
 あらためて『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の映像を見直す仁。
 賊の人数は5人。どうやら森の北側に拠点があるようだった。

*   *   *

「よし、行くぞ」
 『蔦の館(ランケンハオス)』に戻ったラインハルトは、手勢を連れて盗賊確保に出発することにしたのだ。
 手勢といっても、館の護衛2名と『黒騎士(シュバルツリッター)』、それに村の有志5名だけだ。
 あとは仁(の分身人形(ドッペル))と礼子が協力することになっている。
 場所は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見て見当が付いていた。
 2時間ほどを掛け、拠点へ慎重に接近。
 そこは小さな岩山が点在する場所で、賊はそれをうまく利用して拠点にしていたのだった。

「見張りが1人いるな」
 ラインハルトが小声で言った。
「見張りを倒したら一気に制圧しよう」
 賊の人数は5人とわかっているので気が楽である。ラインハルトは黒騎士(シュバルツリッター)に『麻痺(スタン)』の魔導具を渡して指示を与えた。
 直後、黒騎士(シュバルツリッター)は目にも止まらぬ速さで飛びだしていき、見張りを昏倒させた。『麻痺(スタン)』の魔導具の効果だ。
「よし、行け!」
 さすがにラインハルトは直接戦闘はできない。
 黒騎士(シュバルツリッター)が先頭で賊の拠点に突入し、2名の護衛がそれに続く。村の有志5名は外で待機し、逃げ出してくる賊がいたら確保する役割だ。
 ラインハルトと仁は障壁(バリア)を張って制圧を待つ。

 賊の1人が飛び出してきた。
「くそっ、ゴーレム、やっちまえ!」
 その言葉に、拠点とは別の岩山の影からゴーレムが1体現れた。
 ゴーレムは賊の拠点の中ではなく、別の場所に隠されていたのだ。
「お前たちは下がれ!」
 ラインハルトが村の有志5人に向かって叫ぶ。どう考えても相手になるものではない。
「は、はい!」
 幸いなことに、賊の所有するゴーレムは動きが鈍く、5人は怪我を負うこともなく無事に距離をとることができた。
「『炎の槍(フレイムランス)』!」
 周囲に味方がいないことを確かめたラインハルトは、ワンドを取り出すとゴーレムに向けて魔法を放った。
 ポトロックで凶魔海蛇(デス・シーサーペント)に放った炎の槍(フレイムランス)は、ゴーレムに着弾すると、その外装鎧を吹き飛ばし、内部の魔導樹脂(マギレジン)を溶融させた。
 当然、ゴーレムは破壊され、動きを止める。
「あと1体、ゴーレムがいたはずだが……」
 首を傾げるラインハルト。そこに礼子から、
「ラインハルトさん、もう1体は拠点の中です。もう黒騎士(シュバルツリッター)が倒してますよ」
「ああ、そうなのか。ありがとう、レーコちゃん」
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で様子をみている老君からの情報であった。
 すぐに黒騎士(シュバルツリッター)が賊を2人、腕を拘束しながら出てくる。
 護衛の2人も、賊1人を縛り上げて出てきた。
「ご苦労」
 見張りを入れて賊は5人。これで全員捕らえたわけだ。

「はあ……」
 ラインハルトが溜め息をついた。
「なんとかなったな……」
 仁も礼子も一緒であるし、『仲間の腕輪』もあるので、危険はないとわかってはいても、実際にこうした『捕り物』を率いるのは初めてなので緊張していたようだ。
「これも領主の仕事だからな」
 ラインハルトの父、ヴォルフガングも、若い頃はこうした討伐にも積極的に参加していたそうだ。
 上の者が先頭に立つと、士気が違う、と教わったとラインハルトは言った。
「まあ、僕には荒事は向かないということがよくわかったよ」
 とはいえ、障壁(バリア)があるのだから、必要な場合はこうして同行するよ、とも付け加えたラインハルトであった。
 村の有志5人と黒騎士(シュバルツリッター)とで賊が貯め込んだ穀物を回収する。まだほとんど食べられていなかったので、損失も僅かだ。
「とりあえずは、よかった。これから父上に報告に行ってくる」

 捕らえた盗賊は、このあたり一帯を治める領主、つまるところラインハルトの父、ヴォルフガング・ランドル・フォン・モルガン伯爵のところへ送り、処罰してもらうことになる。
 護衛2人、それに黒騎士(シュバルツリッター)と共に賊を護送し、ラインハルトは久しぶりに実家へと向かった。

*   *   *

 ラインハルトが実家へ向かったので、仁もエルザの実家へ戻った。
 『コンロン3』は空へと飛び立った。

「これでラインハルトの問題は解決出来たようだな」
「そうですね、お父さま」
 船室キャビンでは仁と礼子が話をしている。
 仁は特に何かした覚えはないが、蓬莱島がバックアップについているというだけでラインハルトの安心感は違ったことだろう、と思った。
「しかし、あの賊と、ゴーレムはどこから来たんだろう」
「お父さま、それにつきましては『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見ていた老君が推測を立てているようです」
「そうか」
 等と会話をしていると、もうエルザの実家である。

「ジン兄、お帰りなさい。……どうだった、の?」
 エルザが仁たちを出迎えた。
「ああ、中でゆっくり話すよ」
「ん」
 ということで、仁はエルザの実家、ランドル家の居間で緑茶を飲みながら経緯を説明した。
「賊が捕まって、よかった」
 エルザも胸を撫で下ろした。
「こっちの領地にまで来られたら、困る」
「うん。賊の処置はラインハルトの親父さんに任せよう。あと、賊の正体というか出自も老君が推測してくれたようだ」
「はい」
 老君に代わって礼子が内容を説明し始めた。エルザもそれを聞いて納得したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170212(初午) 修正
(旧)「解決したなら、よかった」
(新)「賊が捕まって、よかった」
(旧)
(新)「うん。賊の処置はラインハルトの親父さんに任せよう。あと、賊の正体というか出自も老君が推測してくれたようだ」
(旧)老君に代わって礼子が内容を説明し始めた。
(新)老君に代わって礼子が内容を説明し始めた。エルザもそれを聞いて納得したのである。
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