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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

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39-15 実家へ

 2月18日、クライン王国の調査隊は帰途に着いていた。
 主要メンバーであるグロリア、パスコー、ティファニーらは飛行船内で反省会を開いていた。
「……やはり我々は力不足だと認めざるを得ない」
「はい。今回の遠征で、何が必要か、痛感しました」
「遺跡に対する知識が足りなすぎる。未知の危険への対処もまだまだ未熟だ」
「そうですね……」
 グロリアとパスコーが主に発言し、ティファニーは時々相槌を打っている。
「こうしてみると、ジン殿やマキナ殿は偉大だな。やはり個人に必要なのは武力よりも智力なんだろうか」
「仰ること、わかります。武力はゴーレムで補えますものね」
「うん、ティファニーの言うとおりだ。個人の武力ももちろん大切だが、調査隊としてみるなら、やはり知識が不可欠だな」
「そういった意味でも、『世界警備隊』の第一期生になれたら素晴らしいでしょうね」
「うむ、本当にな」
 飛行船の飛ぶ空は青く澄んでいた。

*   *   *

 調査隊一行はその日のうちに首都アルバンへ帰り着き、国王に報告を行っていた。
 アロイス三世はグロリアの報告を小さく頷きながら聞いていた。
 聞き終わると、幾つかの質問をする。
「それでは、今回は特に危険はなかったのだな?」
「はい。その代わりと申しますか、新たな発見もほとんどありませんでしたが。唯一の収穫は『石板』です」
「おお、あれか。……正直、謎だな。いずれ近いうちに報告会を開いてもらう。内容をまとめておくように。今日はもう下がってよい。ゆっくり休め」
「はっ」
 グロリア、パスコー、ティファニーは一礼し、退出した。
 アロイス三世は宰相のパウエル・ダーナー・ハドソンに告げる。
「やはり彼国かのくにの遺跡は一筋縄ではいかぬようだな」
「そのようですな」
「『世界警備隊』の発足を待ち、任せるのが一番かもしれぬ」
「王よ、それは彼国を領土に組み込むことを諦めるということですか?」
 アロイス三世は曖昧な顔で笑った。
「王として、ではなく個人としての意見を述べさせて貰えばな、旧レナード王国の地は『世界会議』が管理すればいいのでは、と思っているのだ」
「それは……」
「わかっておる。あくまでも個人の意見だ。宰相以外に聞いている者もおらぬ。と言うより、今の発言は忘れてくれ」
「はっ」

*   *   *

 一方、エゲレア王国の調査隊も、同日帰国の途に着いていた。
 こちらも成果らしい成果はなく、可もなく不可もない報告しかできなかったのである。

*   *   *

『……と、いうことです』
 蓬莱島では、老君が両国の調査隊がたいした成果も出せずに帰国したことを仁に報告していた。
「仕方ないだろうな。遺跡に対する予備知識もなく、いきなり行ってできることは限られているし」
 ゆえに考古学、というものがあるのだ。
「そういえば、ルコールはどうしているだろうな」
 ルコールというのは、元統一党(ユニファイラー)の考古学者である。
 洗脳が解かれてからはフリーで大陸内を回っており、先日はヴィヴィアンと共にセルロア王国のゴーレム競技(ゴンペテイション)絡みの事件に関わっていた。
 その後、彼はまたどこかへ旅立っていったのである。
「彼も『アカデミー』に招きたいものだな……」
 仁は『アヴァロン』に設立する学舎まなびやを『アカデミー』と呼ぶことにしていた。
 アカデミーとは、学術団体、学会というような意味であるが、転じて、学校名として使われることもある。
 仁は、『アヴァロン』に作る予定の学舎をこの世界初の『アカデミー』と名付けたのだ。

第5列(クインタ)に捜させましょう』
 老君が言った。
『彼の魔力パターンもマーキングしておくべきでしたね』
「まったくだ」
 残念ながら、それが必要になると思わなかったため、記録していなかったのだ。もし記録しておけば、魔力探知機(マギレーダー)を使って、すぐに発見できたのだが。
 とはいえ、今更言っても仕方ないので、仁はルコール捜索の指示を老君に出した。
「それじゃあ老君、よろしく頼む」
『はい、お任せください』

 このあと仁は、エルザと一緒に親友ラインハルトを訪ねて、彼の領地カルツ村へ行くことにしていた。
 お伴は礼子とエドガー。
「まずはエルザの実家に挨拶だな」
「ん」

*   *   *

 移動は『コンロン3』を使った。
 蓬莱島からトスモ湖上空までは転送機で移動したので所用時間は15分ほど。
 まず仁はエルザの実家へ向かった。
 広い前庭に『コンロン3』を駐機し、仁たちはランドル邸へ。

「ご無沙汰してます」
 最近ではエルザの父ゲオルグも、日常生活ができるまでに回復しており、仁とエルザを見てにこりと笑った。
「おお、よく、来た、な」
 まだ言葉はたどたどしいが、発音はしっかりしている。
「エルザ、ジンさん、よく来てくれたわね。ゆっくりできるんでしょう?」
「ありがとうございます」
 仁としても挨拶してはいさようなら、というわけにもいかず、その日は泊まることにした。

「……この部屋も、久しぶり」
 実家には、エルザが使っていた部屋がそのままにしてあり、里帰りした時は必ずそこに泊まる。
 もちろん仁も一緒だ。
(もっと女の子女の子した部屋かと最初は思っていたけど、意外とシンプルなんだよな)
 エルザは部屋をゴテゴテと飾り立てる趣味はなかったようで、仁としても居心地は悪くない。
 ただ唯一と言っていいのは、数体の人形が飾ってあるくらいか。
 侍女が手入れしているようで、部屋にも人形にも埃は溜まっていなかった。

「俺は明日ラインハルトに会いに行くけど、エルザはゆっくりしておいで」
「ん、ありがとう」
 実はラインハルトから、何やら相談事がある、と連絡が入ったのだ。
「ちょっと困りごとがある、と言っていたな」
 内容は言わなかったので、仁にもわからない。
「何かあったら老君に聞いてみてくれ」
「ん、わかった」
 こうして、ランドル家での夜は更けていく。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170209 修正
(誤)「王よ、それは彼国の領土に組み込むことを諦めるということですか?」
(正)「王よ、それは彼国を領土に組み込むことを諦めるということですか?」
+注意+
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