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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

39 拾遺篇

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39-13 謎かけ

 地下室に降り立ったドナルドを、エレナが迎えた。
「大丈夫。どうやってかはまだわからないけど、空気は澱んでいないわ」
 このあたりは、過去に幾つもの遺跡を調査してきたノウハウからだ。
「危険はないと思うわ。ほら、あの扉が気になるの」
 だがドナルドが持つ明かりの魔導具だけでは暗すぎて、エレナが見ているものを確認することができなかった。
「エレナ、ちょっと暗いんだが」 
「ああ、ごめんなさい」
 エレナの目には十分明るく見えていたので、一言詫び、明かりを灯すことにする。
「『光の玉(ライトボール)』」
 これで明るくなり、ドナルドにも地下室内がよく見えるようになった。
「なるほど、扉の他、この部屋には何もないな……」
 対して、突き当たりには扉が1つあり、エレナが言うとおりその奥に何かがあるような気がする。
「行ってみましょう」
「そう……だな」
 いずれにせよ、行かねば何もわからないのだ。ドナルドとエレナは扉に向かった。
 扉は、旧式のドアノブが付いており、多少軋んだが、ゆっくりと開いていった。
 ドアを開けた瞬間、中に明かりが灯った。まだ魔導装置は生きており、換気もなされているようだ。
「ここは?」
「資料室のようだな」
 壁際の棚にぎっしりと詰まった本。
 埃が少し積もっているので、ドナルドはハンカチで鼻と口を覆った。
「さっきのホールは埃っぽくなかったのにな」
「そういえばそうね。保存のためとか、何か理由があるのかしら」
 エレナは部屋を見渡してみる。と、その視線は部屋の片隅で止まった。
「あれは……」
 そこにあったのは、ゴーレムとも自動人形(オートマタ)ともつかない魔導人形らしきものだった。
 形状は女性型。
 エレナは確認するため、ゴーレムに近付いていく。ドナルドもそのあとを追った。

「これはゴーレムね」
「そうだな。だが、外見を人間に近づけようとしたものだな」
 自動人形(オートマタ)を現代日本でいう『ドール』とするなら、このゴーレムはさしずめ『フィギュア』だろう。
 全体が金属でできており、当然髪も金属製だ。
 エゲレア王国のアーネスト王子のために仁が作った『ロッテ』が最も近いかもしれない。
「壊れてはいないようだな」
「休眠しているだけのようですわね」
 ドナルドとエレナは、そっとゴーレムを調べてみた。それは、古びてはいるものの、故障はしていないようだった。
「これを再起動してみたいものだな」
 興味深そうにドナルドが言った。
「そうね。この資料室の司書みたいな存在かもしれないわ」
 だが、再起動の方法がわからなかった。
「うーむ……『魔力検知』で自動的に動き出すものではないようだし」
「『魔鍵語(キーワード)』も効かないようね。古いもの、新しいものを試してみたけど反応がないわ」
「内部の機能が消失しているわけでもなさそうだしな」
「そうね。あと考えられるのは、起動のための魔道具があるのかもしれないわね」

 エレナの推測により、2人は部屋を確認することにした。そしてそれはすぐに報われる。
「エレナ、これじゃないかな?」
 ドナルドが、制御装置らしきものを見つけたのである。
 とはいえ、TVのリモコンのようなものではなく、むしろブラウン管TVに近い大きさ、形であった。
「魔導具ですね」
「ここが起動するための仕掛けかな?」
 エレナとドナルドは慎重に仕掛けを解析していった。
「間違いなく、これでいいはずよ」
 エレナが『起動スイッチ』を押すと、制御装置の一部が明るくなった。魔導投影窓(マジックスクリーン)になっているようだ。
「エレナ、何か書かれているぞ」
「少し古い文字ね。……ええと、『知識を欲するならば相応の智を示せ』ですって」
 そう言っている間にも、表示されている文字は変わっていった。
「『脚が4本、背中もあるのに身体がないものとは何か』ですって?」
「謎かけ、だな」
 エレナが読み上げ、ドナルドが唸った。
「……椅子、ね。背もたれのあるやつ」
 エレナがそう呟くと同時に、画面の文字が切り替わった。
「まだ謎かけが続くのかしら。……『一つ目おばけに脚一本、これは何か』?」
「何だ、それは?」
 エレナが首を傾げ、ドナルドも頭を捻った。
 仁が聞けばすぐわかるのだが、これは日本の昔からあるなぞなぞである。

「縫い針ではないですか?」
 エレナとドナルドの背後から声がした。見れば護衛兵である。
「なかなかお戻りにならないので、捜しに参りました。縄梯子を掛けてありますので戻るのは容易です」
 独自に判断せよ、と言っていたので、これに文句は付けられない。
 また、特に危険はなく、さらに言えば、
「『立てば低くなり、座れば高くなるものはなにか』」
 と、次の謎かけが表示されたのである。
「天井ですね」
 またも護衛兵が答え、画面が切り替わった。

「おお、正しかったようだ。そなた、大したものだな」
 ドナルドは無口な護衛兵を称賛した。
「いえ、故郷でそのような謎かけを聞いたことがあっただけです」
「そうか。そなたの故郷というのは……」
「ドナルド、後にしてちょうだい。いよいよ起動するみたい」
 ドナルドの言葉をエレナが遮った。
 その言葉どおり、停止していたゴーレムの目に光が灯ったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170207 修正
(誤)古いもの、新しいものを試してたけど反応がないわ」
(正)古いもの、新しいものを試してみたけど反応がないわ」
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