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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

06 旅路その2 エゲレア王国篇

142/1472

06-29 圧倒的

 予約投稿で4日にしたら何故か即掲載と言うことに。何故?
 こうなったら仕方ないので1日早くお楽しみ下さい。
「ロッテのーーーお姉さん?」
 不思議そうな顔の王子。ロッテは笑みを作ったまま肯き、剣を手放した左手を伸ばした。
「はい、あそこに」
 ロッテが指差す彼方を見やれば、そこは広間下手の通用門。今一番ゴーレムが群がっている場所であり、一番混沌とした場所であった。
 そこから現れた水色のワンピースに白いエプロンドレスを着た少女。
「『礼子』お姉様です」

*   *   *

「お父さま!」
 居並ぶゴーレムを蹴散らし、礼子は広間へ突入。邪魔をするものは雑用ゴーレムも騎士ゴーレムも関係なく同じように吹き飛ばし、仁の元を目指す。
「おお、礼子か! そろそろ来てくれる頃だと思ったよ」
 それは信頼の言葉、礼子は嬉しそうに微笑むと、
「では、まず何を致しましょう?」
 仁の指示を仰ぐ。聞かれた仁の答は1つ。
「人間を守り、襲ってくるゴーレムを無力化しろ」
「はいっ!」
 力強く床を蹴り、群がるゴーレムへと突っ込む礼子。右腕を一振りすれば騎士ゴーレムがばらばらになって吹き飛び、左手を一振りすれば警備ゴーレムが壁にめり込む。
 それを見たラインハルトは、
「おお、レーコちゃんが来てくれたぞ!」
「え? レーコちゃん?」
 エルザとビーナもそちらを見、目を見張った。
 あれほど群がっていたゴーレム達が目に見えて数を減らしている。1体2体ではない、5体10体と減っていくのがわかる。
「よし、今だ! 黒騎士(シュバルツリッター)、残った生存者を救出しろ!」
 これを好機と見たラインハルトはゴーレムの始末は礼子に任せ、生存者の救出に全力を挙げることにした。

「おとなしくしなさい!」
 吹き飛ぶゴーレム。
 礼子は暴走したゴーレムを既に60体以上倒していたが、倒しても倒しても向かってくるゴーレムはまだまだいる。
 それを見た仁は一計を案じ、散らばったゴーレムの破片から鉄系統のものを集め、
融合(フュージョン)
 一体化し、
変形(フォーミング)
 変形させていく。作り上げたのはメイスと呼ばれる打撃武器。重さは200キロくらいはあるだろうか。
 最後に『硬化(ハードニング)』させて耐久力を増して完成。
「おーい、礼子!」
 乱戦のただ中でも、礼子は仁の声を聞き取り、すぐさま傍にやってきた。
「急ごしらえだがこれを使ってみろ」
 作り上げたメイスを指し示す。すぐさまその用途を察した礼子は、
「わかりました、使わせていただきます」
 そう言って片手で(・・・)ひょいとメイスを持ち上げ、
「では掃討の続きをしてまいります」
 そう言い置いてゴーレムの集団に突っ込んでいった。

「…………」
「……」
 その一部始終を近くで見ていたのがセルロア王国特使のドミニクと、同じくセルロア王国の魔法工作士(マギクラフトマン)、ステアリーナ。
 礼子の力と仁の工学魔法という2つの規格外を見て絶句していた。

 礼子がメイスを振るうと、雑用ゴーレムが4体5体まとめて吹き飛んだ。
「これはいいですね」
 礼子にとっては木の棒を振るうくらいでしかないが、その効果は抜群だ。
 うなりを上げるメイスの前に、まるで案山子を吹き飛ばすかのようにゴーレムが消し飛んでいく。10体、20体、30体。
 更に10体ほど吹き飛ばし、ほとんどゴーレムはいなくなった。
 と、残ったゴーレムを見つけた礼子はもう一振り。
 だがその一振りは止められた。

「あれは……タウロス!」
 ブルウ公爵の持ち込んだゴーレム、タウロスが、その巨大なタワーシールドで礼子の振るったメイスを受け止めていたのである。
「これを受け止めますか。少しは力があるようですね」
 礼子は片手で持っていたメイスを両手で持ち直し、大きく振りかぶって、
「これは受けられますか!」
 タウロスに叩き付けた。
 広間を轟音が駆け抜ける。
 礼子の持ったメイスは砕け散り、タウロスもタワーシールドとそれを持つ左腕を粉砕されていた。
「なかなか丈夫ですね」
 用をなさなくなったメイスを手放した礼子は、その華奢な体を以てタウロスに立ち向かう。
「お父さまの作って下さったメイスを壊されたお返しです!」
 その時に一瞬だけ礼子は出力を30パーセントまで上げた。そんな礼子の体当たり。

 この世界の物理法則も、魔法という現象を除けば地球と大差ない。
 軽い物と重い物がぶつかったら、軽い物の方が跳ね返される。だがそれは摩擦や抵抗などの無い時の話。
 そしてそれぞれの強度も考慮に入れなければならない。
 鋼鉄製で重さ250キロのタウロスと、レア素材使いまくりで33キロの礼子。
 タウロスの速度はほぼゼロ。対して礼子が出した速度は衝突時秒速50メートル。
 先ほどの轟音をも上回るほどの音が響き、鉄臭い煙が立ちこめた。
 その煙が晴れると、もはやタウロスの姿は無く、身体に付いた埃を払う礼子の姿だけがそこにあったのである。

 訪れた静寂に、生き残った一同はほっと安堵の胸をなでおろす。
「終わった……のか?」
 誰かがそう呟き、それに連れてそこにいた者達の肩から緊張が抜け、へなへなと床に座り込む者も。

 そんな中、近衛騎士隊副長のブルーノは傷付いた身体に鞭打って、王と王子のもとへ向かった。
「陛下、殿下、ご無事でしたか」
「おう、ブルーノ、そなたも無事であったか」
「どうぞこちらへ、生存者を集めております」
「そうか、わかった」
 こうしてようやく生存者が1箇所に集まった。
「陛下!」
「おお、宰相、そなたも無事であったか」
「殿下もよくご無事で」
「うん、ロッテに助けてもらった」
 そのロッテは傷だらけの身体で王と王子の後ろにかしずいていた。

 王と王子、ガルエリ宰相、ブラオロート財務相、ケリヒドーレ魔法相、そして防衛相、内務相、外務相といった閣僚。
 ブルウ公爵、クズマ伯爵、ガラナ伯爵、グリエリ子爵などの貴族。
 ラインハルト、エルザ、セルロア王国特使ドミニク、それにステアリーナなどの招待客。
 ヤルイダーレ、ジェード・ネフロイ、グラディア・ハンプトン、ボーテス等の魔法工作士(マギクラフトマン)
 近衛騎士隊隊長、副長。
 一部大怪我をしたものはいるが、命には別状ない。
 一方で、警護の兵士と近衛騎士隊隊員には少なからぬ犠牲者が出ていた。

*   *   *

 獅子奮迅の礼子の活躍で広間のゴーレムもあらかた片付き、新たに暴れ込んで来るゴーレムも今はないようなのでこの場にいるエゲレア国の重鎮達は今後の事を話しあっている。
 そんな中、ケリヒドーレ魔法相は、
「ラインハルト殿、あなたの黒騎士(シュバルツリッター)とクズマ伯のロッテはなぜ暴動に加わらなかったのですかな?」
 一番聞きたかったことであろう。
 それに答えたラインハルトはエリアス王国の犯罪者、バレンティノが使役していたゴーレム『アルバス』の話をし、その手口を説明。
 この話は既にエリアス王国、エゲレア王国のしかるべき筋に伝えたはず、と言い、自分の黒騎士(シュバルツリッター)は魔法による外部からの干渉を受けないよう改造してあると締めくくった。
「そんなゴーレムの話、私は聞いておりませんぞ。どこかで報告が止まっておるのでしょうな」
 難しい顔で魔法相はそれきり沈黙した。

 そこへ仁が礼子を引き連れてやってきた。
「おお、ジン! レーコ嬢も! 助かったよ!」
 ラインハルトが仁を出迎える。クズマ伯爵も、
「ジン、君の造ってくれたロッテが陛下と殿下を見事お守りしてくれた、感謝する!」
 そう言って感謝の意を伝える。それを聞いて仁は、
「え? ロッテが?」
 そう言って見回すと、後ろの方にいるロッテが見えた。その前にいるのは王と王子である。
 その王様は仁の名前を聞くと、
「おお、そなたがジンという魔法工作士(マギクラフトマン)であるか。クズマから聞いたぞ、優秀な魔法工作士(マギクラフトマン)であるな。ロッテという素晴らしいゴーレムを造ってくれたこと、大儀である」
「は、ありがとうございます」
 王様にそう言われ、頭を下げる仁、こういう時の礼儀作法はわからないので、とにかく下手に出てればいいだろうと。
「そして、レーコと言ったか。素晴らしい働きであった。それもそなたの?」
「は、自動人形(オートマタ)です」
「うむ、そうか。いろいろと聞きたい事もあるが、まずは感謝しよう」
 一国の王が一介の魔法工作士(マギクラフトマン)に感謝をしたことに傍にいた者達は皆驚いていた。

「ジンというのか。君のおかげで助かったよ! 出来るならロッテを直してやってくれないか?」
 そう言ったのはアーネスト王子。
 その言葉に仁は顔を上げ、後方にいたロッテをまじまじと見る。
 着ていた侍女服は全て千切れて無くなっており、右腕は肩からもげてしまっている。左手は中指、薬指、小指が無く、身体中には無数の傷や凹みがあった。
「ロッテ、こっちへおいで」
 仁が手招くとロッテは若干足を引きずりながらやってきた。
 傍で見ると更に酷い有様なのがわかる。
「ロッテ、偉かったな。よくぞこんなになっても陛下と殿下を守ってくれた。お前を誇りに思うよ」
 そう言って仁は傷だらけのロッテを優しくいたわったのである。
 広間は何とかケリが付いたようですが、まだ終わりません。

 お読みいただきありがとうございます。
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