挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1415/1682

38-24 閑話71 保存結界

 大変申し訳ないことですが、前話 38-23 一足早い春 に加筆しております。
 物語の流れには影響ありません。
 もしよろしければご確認下さい。どう加筆したかはいつもどおり後書きに(旧)/(新)で記録してあります。



「うーん、難しいな……」
 仁は今、ショウロ皇国女皇帝から受けた依頼を遂行するべく知恵を絞っていた。
 そう、『保温結界』である。
「ジン兄、あの時はすぐできそうなこと言っていたんじゃ?」
 エルザが鋭い突っ込みを入れる。
「うん、そうなんだが、じっくり考えてみると、追加したい機能が多すぎてさ」
「追加したい機能?」
「そうなんだ。……例えば、この前の天ぷらだけど、時間が経つと、冷めなくても油が染みてさくさく感がなくなるんだよな……」
 これはエルザにも覚えがあるのですぐ理解できた。
 天ぷらの衣は揚げたてのさっくり感が大事で、時間が経って油が衣の中まで染み込むと台無しになるのだ。
「ああ、確かに」
「それから、陛下に献上するものだから、滅菌結界を重ねて、食中毒防止と考えたんだが……」
「だが?」
「どうせなら毒物検出機能も付けたくなって」
「ジン兄……」
「仮にも女皇帝陛下が口にするものだから、と考えていたらさ……」
「それはわからないでもない、けど」
 凝り性な仁に、少し呆れるエルザであった。
「で、悩んでいたんだ」
「……理解した。私も、手伝う」
 一時は呆れたが、仁が作ろうとしている結界は応用範囲が広く、確かに実用的である。
 食材を扱うことの多いエルザとしてもあった方がいいと考えたのだ。

「滅菌結界は問題ない、でいい?」
「うん」
 まずは、自分も参加するので、やるべきことを一旦整理することから始めた。
「保温も、問題ない」
「うん」
 思いついた際に大体出来上がっていたはずなのだ。
「となると、油の問題と毒の検出が未完成」
「そういうことだな」
 これでエルザとしても考えやすくなった。
「毒について、は、特定の毒なら簡単にできる、と思う」
「それは俺も考えた。……砒素とか、水銀とか、鉛とか」
 だが、未知の場合は? と考えると難しいのである。

 これが人体なら比較的簡単だ。
 端的にいえば、本来人体に含まれないような物質を検出、除外すればいいのである。
 『解毒』のアクセサリーはまさにこれだ。
 だが料理の場合は一概に除外できない場合があるので困る。

「元素はいいんだ。さっき言ってた鉛や砒素は」
 が、銅やクロム、鉄などは、微量ならミネラルとして人体に必要である。
 ところが、量が増えると害になるものが多い。
 クロムを例に取ると、三価のクロムは糖代謝に必要であるが、六価クロムになると発がん性もあり有害である。
「だから、今考えているのは人体を基準にしている『解毒』のアクセサリーと同じ仕様でいいかな、と思うようになったんだ」
「……ん、解毒が目的の結界じゃないから、それでいいと、思う。と言うか、目的と手段をはき違えちゃ、駄目」
 エルザの言葉に仁も反省する。
「ああ、そうだよな。欲張った揚げ句、迷走していたよ。ありがとう、エルザ」
 仁も迷いが吹っ切れ、解毒機能はあくまでも『おまけ』ということで落ちついたのである。

「そうなると、油の問題だ」
 元々、冷めた天ぷらが美味しくないと言いだした女皇帝からの依頼である。
 油が染みた天ぷらも美味しくはない。
 この問題には仁もきっちりと取り組みたかった。
「油が染みるのは物理変化、酸化して味が変わるというのは化学変化だな」
「ん」
 どっちも絶対零度まで温度を下げれば止められるのだが。
「……それは、駄目」
「だな」
 保温という目的からかけ離れてしまう。
「……原子、分子の運動を止めるためにはどうすればいいか、を考えてみよう」
「ん」
 エルザも中学生レベルの科学知識はあるので、こうした問題を検討する能力は十分にある。
「時間停止」
「さすがに無理だぞ」
 エルザの言に仁が否定を入れる。
 技術者として『無理』という言葉は使いたくなかったが、さすがに一朝一夕では無理だろう。
 元々が料理のための保存結界の『おまけ』機能であることでもあるし、と仁は考えた。
(でも、考えてみたいテーマでもあるな)
 と、一応心の中でメモだけはしておく。
「遅くするなら、できる?」
「うーん、どうだろう?」
 仁はちょっと考えて見る。
 『魔力庫(エーテルストッカー)』という魔導具がある。これに魔力系素材を入れておくと、半永久的保存が可能なのだ。
「原理的には、原子の隙間に入り込んだ自由魔力素(エーテル)が魔原子の移動を阻害するからと考えているけど、普通の原子だって阻害されるんじゃないかな?」
 ということで実験をしてみることにした。
 氷を『魔力庫(エーテルストッカー)』に入れ、温めてみたのだ。
「うーん、明らかに溶けるのが遅くなったな」
 5倍くらいの時間が掛かるようになっていた。
「これと保温結界を組み合わせれば、かなりの性能になりそうだな」
「保温結界……というより『保存結界』?」
 エルザがいいネーミングをしてくれた。
「そうだな。『保存結界』だ。あとはこれをどう運用するか、だ」

 これについては、とりあえず家庭用冷蔵庫くらいの大きさの『保存庫』と、一時保存用の『保存トレイ』を作ってみた仁たちである。
「うん、これを献上することにしよう」
 あとは使って見た感想をフィードバックすればいい、と仁は考えた。

*   *   *

「まあ! 凄いわ、ジン君!」
 完成の報告、そしてサンプルの献上をすると、女皇帝はご満悦である。
「ちょっと時間は掛かりましたが、ご満足いただけるかと」
 機能の説明をすると、さらにその上機嫌に拍車が掛かった。
「ええ、ええ! 素晴らしいわ。おまけの機能、なんて謙遜しているけど、腐らない結界に解毒結界ですって? 国宝級よ!」
「あ、ありがとうございます」
 女皇帝からの手放しの賛辞に、かえって恐縮する仁。

 だが、実際に使ってみて、その有益性に驚いた厨房の全員から懇願され、厨房棟の一室をまるまるこの『保存庫』に仁が改造したのは5日後のことであったという。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170125 修正
(誤)ショウロ皇国女皇帝から受けた依頼を推敲するべく知恵を絞っていた。
(正)ショウロ皇国女皇帝から受けた依頼を遂行するべく知恵を絞っていた。

(誤)『解毒』のアクセサリーと同じ使用でいいかな、と思うようになったんだ」
(正)『解毒』のアクセサリーと同じ仕様でいいかな、と思うようになったんだ」

(旧)「ああ、そうだよな。欲張った揚げ句迷走していたよ。
(新)「ああ、そうだよな。欲張った揚げ句、迷走していたよ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ