挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1414/1681

38-23 一足早い春

 仁とエルザ、礼子はシオンとベリアルス、それにマクシムスとバルディウスを残してそっと部屋を出た。
 当事者とその身内だけにしておこうと思ったのだ。

「しかし、驚いたな」
「ん」
「お父さま、人が人を好きになるのって、複雑ですね」
 仁、エルザ、礼子は、それぞれの感想を口にした。
「……もしかするとベリアルスって、歳下が好みなのかもなあ」
「え?」
 仁の発言にエルザが首を傾げた。
「ほら、ベリアルスって、妹のアルシェルを必死に捜していたじゃないか」
「ああ、確かに」
「ええと、しすたー・こんぷれっくす、って言うんでしたっけ」
 礼子が歯に衣を着せない物言いをした。
「……そ、そうなんだが、2人の……いや、マクシムスとバルディウスの前では言うなよ、そんなこと」
「わかりました」
「……シオンも、年上の頼りになる人が好み、なのかも」
 エルザも自分なりの分析を口にした。
「ああ、なるほど」
 だとすると、意外とあの2人の相性はいいのかもしれない、と思う仁である。
「なんにしても、これでほぼ目的は達成できそうだな」
「ん」
 『森羅』氏族の後継者は、ラデオゥスとロロナの後はシオンとベリアルス。
 そうなればイスタリスとネトロスは問題なく一緒になれる。
「シオンたちが氏族長になる頃には、『氏族』という壁がなくなっているかもしれないしな」
「それ、言えてる」
 仁の未来予想にエルザも同意した。

*   *   *

「いや、まことにお恥ずかしい場面をお見せしまして」
 座が落ちついたところを見はからって仁とエルザが戻ると、そこには照れたベリアルスと真っ赤な顔のシオン、にこにこ顔のバルディウスとマクシムスがいた。
「いえ、改めて2つの氏族の橋渡しが成ったことは喜ばしいことですよ」
「そう言っていただけますと恐縮ですな」
 マクシムスが嬉しそうな顔で言う。一方バルディウスは少し残念そうな顔をした。
「こうなると、イスタリスが不憫ですな……今頃、どこで何をしているやら」
「あ、彼女でしたら俺が見つけて保護しています。『コンロン3』に乗っていますよ。ネトロスも一緒に」
「なんと!」
「さすがはジン様ですなあ」
 そこで仁は、2人を呼んでくるように礼子に頼んだ。
「はい、お父さま」
 頷いた礼子はさっとばかりに姿を消す。
 そしてすぐにイスタリスとネトロスを連れて戻って来た。
「おお、イスタリス!」
「お祖父様……」
「お前の気持ちも考えずに、済まなかった」
 イスタリスに詫びるバルディウスを見て仁は、小群国の貴族のような家中心の考え方はあまりしないんだな、と思っていた。
「お前を無視して話を進めて悪かった。……お前は、好きに、するがいい」
「え、本当にいいのですか?」
 バルディウスはちらとシオンを見た。
「いいのよ、姉さま。将来の氏族長はあたしと……そ、その、ベ、ベリアルスが引き受けたわ」
 シオンは赤い顔をしたまま、たどたどしい言葉でそう告げた。
「えっ、シオン……あなた……」
「いいのよ、姉さま。あたし、これでも幸せなんだから」
 そう言いながら隣に座るベリアルスに身をもたせかけるシオン。その顔はさらにさらに赤くなったが。
「シオン……」
 そこへ仁が声を掛けた。
「そういうことだよ、イスタリス。いろいろとあったけど、落ちつくところへ落ちついた、ってところかな」
「で、でも、私、シオンに悪いことを……」
「姉さま、『氏族長』になるって悪いことじゃないわよね? むしろ、氏族のみんなに色々してあげたい、やってもらいたい、そして発展させたいって思ってるんですけど」
 シオンはどこまでも前向きだ。それでこそ『仁ファミリー』の一員だ、と仁は心の中でエールを送った。

*   *   *

「本当にな。俺の感覚だと『氏族長』なんて面倒なだけだが、誰かがやらなくちゃいけないものだし、自分からそれを選ぶとは、シオンはやっぱり大したものだよ」
「えへへ、そう?」
 落ちついた後、仁は、エルザ、礼子、シオン、イスタリス、ネトロス、ベリアルスらと『コンロン3』の中で寛いでいた。
 因みにバルディウスとマクシムスはいろいろと打ち合わせをしている。
 婚約する者が変わったことで、いろいろと対外的にやることがあるらしい。そういう点を仁は面倒だ、と思っているのだが。
「ところで、俺の記憶違いだったら申し訳ないんだが、シオンとイスタリスには兄さんがいなかったっけ?」
「……ああ、クライドス兄さまのことね」
 まずシオンが答え、イスタリスが引き継ぐ。
「ええと、クライドス兄さまは、『諧謔かいぎゃく』の氏族へ婿入りすることになっているんです。それというのも、私たちとお母さまが違うので……」
 『諧謔かいぎゃく』の氏族は、『デキソコナイ』の事件で20名ほどに減ってしまった氏族である。
 そこのドネイシアと婚約しているということであった。
「いろいろ複雑なんだな」
 氏族間や氏族内の事情に深入りするつもりはない仁。今回は例外である。
「だけど……」
 仁はシオンに向かって言った。
「確かにシオンはリーダーに向いているかもな」
「ほ、褒めても何も出ないわよ!」
 今度は照れて頬を染めるシオン。今日は顔を赤くしてばっかりだ。
「うん、姉の私から見ても、シオンは凄いなあと思うわ」
「お、お姉さま」
「だからこそ、頼りがいのある男に惹かれるのかもな」
 仁はそう言ってベリアルスを見た。
「はは、私もそうであるよう、頑張りますよ」
 ベリアルスも少し照れながらシオンの肩を抱き寄せた。
 仲がよさそうで何より、と仁は思う、エルザもそうだったらしく、
「シオン、よかった」
 と言葉少なに改めて祝う。
 そこに、バルディウスとマクシムスがやって来た。話し合いは終わったらしい。
「ジン様、いろいろとお骨折り、ありがとうございました」
 マクシムスが深々と頭を下げた。続いてバルディウスも、
「おかげをもちまして、二氏族間の絆を、よりよい形で結び直すことができました」
「いえ、俺はシオンに頼まれて、イスタリスが幸せになれるようにと行動しただけです。一番の功労者はシオンですよ」
「そうじゃな、シオン、いろいろと済まん」
「お、お祖父様……やめてよ、あたしに、そんな」
 孫のシオンにまで頭を下げたバルディウス。当のシオンはあたふたしている。
「そして、イスタリス、ネトロス。お前たちにも謝らねばな」
「お祖父様……」
「バルディウス様……」
 バルディウスはにこりと笑った。
「家族が増えるというのはいいものだ。なあ、ベリアルス。シオンを頼むぞ」
「はい!」
 今だけは、氏族長バルディウスも、孫を可愛がる祖父の顔を見せているようだった。
 魔族領はまだ凍てつく冬だが、『森羅』と『傀儡くぐつ』の氏族には、一足早い春が来たようだ、と仁は思ったのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170124 修正
(旧)「うう、姉の私から見ても、シオンは凄いなあと思うわ」
(新)「うん、姉の私から見ても、シオンは凄いなあと思うわ」
(旧)「おかげをもちまして、二氏族間の絆を、よりよいかたちで結び直すことができました」
(新)「おかげをもちまして、二氏族間の絆を、よりよい形で結び直すことができました」

(旧)婚約する者が・・・そういう点を仁は面倒だ、と思っているのだが。
(新)婚約する者が・・・そういう点を仁は面倒だ、と思っているのだが。
「ところで、俺の記憶違いだったら申し訳ないんだが、シオンとイスタリスには兄さんがいなかったっけ?」
「……ああ、クライドス兄さまのことね」
 まずシオンが答え、イスタリスが引き継ぐ。
「ええと、クライドス兄さまは、『諧謔かいぎゃく』の氏族へ婿入りすることになっているんです。それというのも、私たちとお母さまが違うので……」
 『諧謔かいぎゃく』の氏族は、『デキソコナイ』の事件で20名ほどに減ってしまった氏族である。
 そこのドネイシアと婚約しているということであった。
「いろいろ複雑なんだな」
 氏族間や氏族内の事情に深入りするつもりはない仁。今回は例外である。
「だけど……」
 仁はシオンに向かって言った。

 感想欄で御指摘を受けまして、確かに一度だけ16-23でシオンとイスタリスの兄が登場していました……orz
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ