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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-21 仁再訪

「なるほどねえ、親の決めた縁談を蹴って2人で逃げてきたのかい」
「それでシオンさんは姉さんを連れ戻しに来たのかね?」
 サリィとギーベックがそれぞれ口を開いたが、内容はまったく別物だ。
「いいえ、あたしが来たのは連れ戻すためじゃなくて姉さまが心配だったから捜しに来ただけです」
「シオン……」
「ジンが姉さまをすぐに見つけてくれたのよ」
「そうでしたか……」
 そこでシオンは、ずっと黙っているネトロスに向き直った。
「ネトロスがそこまで姉さまを想っているとは思わなかったわ。でも、こうなった以上、姉さまを幸せにしてくれるわね?」
 ネトロスがはっと顔を上げる。
「はい、シオン様」
「そう。それならいいわ。……姉さまをよろしく、ね」
 少し寂しそうに、しかし毅然と、シオンはネトロスに声を掛けたのである。

「しかし、これからどうするべきか」
 仁は腕を組み、悩んだ。そこに助け船を出したのはサリィ。
「ジン君、君は、彼等の親ごさんとも知り合いのようだ。君が出向いて説得してあげるのが一番角が立たないんじゃないかねえ」
「……やはり、そうでしょうか」
 サリィは頷いた。
「私はそう思うよ」
 その助言で、仁の気持ちも決まった。
「わかりました」
 立ち上がり、シオンとイスタリス、そしてネトロスに告げる。
「まずは俺の所に来るといい」

*   *   *

 15分後、仁、シオン、イスタリス、ネトロスは二堂城にいた。礼子は4人分のお茶を持ってきてくれる。
 熱いお茶(仁の分のみ少し冷ましてある)を飲んで少し落ちつくと、仁が口を開いた。
「さて、この後俺は『コンロン3』で魔族領に行く。3人とも一緒に来てくれ」
「あたしはいいけど……姉さまたちも?」
 シオンがちょっと不安そうに言った。
「一応2人は話がきちんとつくまで『コンロン3』に乗っていてもらう」
「それならいいわ」
 そして仁は一息つくと、
「さて、イスタリスに聞くけど、今回の縁談って、どこから来たんだい?」
「ええと、お祖父様がマクシムス様と話を付けてきたと……」
 イスタリスの祖父は『森羅』の氏族長バルディウス。マクシムスというのは『傀儡くぐつ』の氏族長、『傀儡』のマクシムスのことだろう。
「氏族長同士の話し合いか……」
「そうなんです。……私も仕方なく、といいますか……」
「姉さまは、『森羅』の氏族のためになるから、と最初は素直に受けたのよね」
 言い淀んだイスタリスの代わりにシオンが説明した。
「婚約発表の頃の姉さまを見ていたら、まさか内心で嫌がっているようには見えなかったわ」
 それだけ自分を殺していたということなのだろう、と仁は同情した。
 なにしろ仁の愛妻エルザも、親の決めた縁談を嫌って出奔した過去があるのだから。
 それを話すとシオンが食い付いてきた。
「なにそれ! あのお淑やかで大人しそうなエルザさんもやるわね!」
「これ、シオン。エルザ様は、今はジン様の奥方なんですよ」
「あ、そうか。……ごめんなさい、ジン」
 そんなシオンを、仁は笑って許した。
「まあとにかく、俺としてはやっぱり当人の意志を尊重したいと思う。だから氏族長にもそう言ってやるつもりだ」
「ジン、頼りにしてるわよ!」
「もう、シオンったら」

「それで、ベリアルスの方はどうなんだ?」
 これにはシオンが答えた。
「うーん、仕方なく、という感じ?」
 完全なポーカーフェイスで、シオンとしてもよくわからない、と言う。
 ただ、イスタリスが出奔するのを手助けしたところをみると、思慕の情は薄そうだ。
「イスタリスはどう感じていたんだ?」
「はい、ええと、ベリアルス様は、ご自分の感情を押し殺してらっしゃるように感じました。他に好きな方がいらっしゃるのではないでしょうか」
「そうか」
 ベリアルスもまた、己の意思を隠している可能性がある。
「そういえば、前回『傀儡くぐつ』の氏族領へ行った時、ベリアルスの姿を見なかった気もするな」
 とにかくまずは魔族領へ行ってみなければ始まらない、と思う仁であった。

*   *   *

 ということで、行ってきたばかりであるが、翌日早々に仁は『コンロン3』で魔族領を目指した。
 同行者はエルザと礼子。もちろんシオン、イスタリス、ネトロスも乗っている。
 操縦士はエドガー。
 現地時間午前9時、魔族領に到着。
「まずは『森羅』に行くか……」
 『コンロン3』は森羅氏族領の外れに着陸した。
 すぐに森羅氏族たちが集まってくる。
「ジン様、ようこそ。本日はどんな……シオン!? なぜお前が?」
 森羅氏族の族長でシオンの祖父、バルディウスが仁を出迎え、シオンが一緒にいるのを見て目を剥いた。
「それはこれから説明しますよ」
 仁がそう言えば、バルディウスもそれ以上は強く言えず、まずは仁たちを家へと招き入れたのである。

「さて、発端はイスタリスが失踪したと言ってシオンが俺の所までやって来たことから始まります」
 氏族長バルディウスの家で、仁はさっそく本題を切り出した。
「シオンから聞きましたが、イスタリスとベリアルスの縁談は、氏族長同士が決めたものだったとか」
「……はい」
 仁に対して隠しごとをする気はないと見え、バルディウスはその事実を即認めた。
「ですが、イスタリスは喜んでいたようですし、ベリアルスもすぐに承知してくれたので問題はないと思っていたのです」
「なるほど」
 そこへエルザが発言をした。
「イスタリスさんは家族思い、氏族思いの方、です。よかれと思っての縁談、ましてや、氏族長同士が決めたことに逆らおうと思わなかったので、しょう」
 かつて父が勝手に決めた縁談に承服できなかったエルザの言葉。
「……」
「イスタリスさんは自分を偽って氏族のため、と思い込もうとしていたのでしょう。それが、なにかが切っ掛けで吹っ切れてしまい、失踪したのだと、思います」
 その言葉にバルディウスは、
「そういえば、いなくなる前の日、ベリアルスと会って長いこと話し込んでいたな。てっきり将来のことなどを話しているのだと思っていたが……」
「なるほど……そうなるとやはり、ベリアルスも承知の上、かもしれないな」
「そ、そんなことが?」
「とにかく、これから『傀儡くぐつ』の氏族の所まで行ってみようと思う」
 仁は立ち上がった。
「ジ、ジン様、儂も一緒に連れて行ってください!」
 バルディウスが懇願するので、仁はそれを諒承した。
「わかった。……シオンも来てくれ」
「いいわ」

 こうして、仁一行はバルディウスも加えて、『傀儡くぐつ』の氏族領へと向かったのである。
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