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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-19 意外な訪問者

「さて、まずはやり残したことをしないと」
 2月1日、仁はロイザートの『屋敷』で朝食を済ませたあと、蓬莱島へと飛んだ。
「ジン兄、やり残したことって?」
 一緒に来たエルザが尋ねる。
「アキツのことなんだ」
 アキツとは、その昔『賢者(マグス)』シュウキ・ツェツィが設置した教育用の自動人形(オートマタ)である。
「今回メンテしてやれなかったし、何より……」
 飛行船を各国に贈った今、上空から発見される可能性が増えたのだ。
「俺の責任においてなんとかしないと」
「ジン兄の言うこと、わかる。で、どうするの?」
「移設する」

*   *   *

 ということで、仁は『アドリアナ』を出動させた。
「これなら楽ちんだものな」
 アキツの拠点であるドームをそっくりそのまま崑崙島へ移設してしまおうというのだ。
 それには直径300メートルの『アドリアナ』が適役であった。
 直径10メートル、高さ4メートルのドームを重力制御魔法と『力場発生器フォースジェネレーター』で土台ごと引っこ抜いて『アドリアナ』の下部倉庫に収納したのである。
「……ここまでするとは思わなかった」
 エルザも少し呆れ気味だ。
「だけど中途半端なことはしたくないしな」
「それは、わかる」
「『賢者(マグス)』……シュウキ・ツェツィお祖父様が遺された施設ですからね」
 礼子も仁の支持をする。
「だよな。俺はこれがいいと思ったんだ」
「私のために、恐れ入ります」
 ドームは倉庫の中だが、当のアキツは仁たちと一緒に中央艦橋にいる。
「いいえ伯母様、お父さまはこのくらい朝飯前ですので」
 アキツには礼子が対応している。
 アキツは礼子たちの伯母にあたるのだろうか……などと考えているうちに『アドリアナ』は崑崙島上空に到着。
「どこがいいかな……」
 少し考えた末、五常閣や翡翠邸がある平地から離れた、島の西側の林の中に設置することにした。

 力場発生器フォースジェネレーターで該当地をならし、ドームを設置する。
 工事そのものは蓬莱島から呼んだ職人(スミス)たちが10分で終わらせた。

「さて、どうだい、アキツ?」
「はい、ありがとうございます。とても居心地のよさそうな場所ですね」
 幸い、ミツホにある転移門(ワープゲート)には距離的な制約がない……というか十分な余力があったので、この場所にアキツが移動してもまったく問題はない。
 一番は、礼子や他の自動人形(オートマタ)、ゴーレムがアキツに会いに来ることもできるということだ。
「今まで独りでしたから嬉しいです」
 僅かに付与された感情を表し、アキツはこの措置を受け入れてくれたのである。
「伯母様、今度来る時は、他の者たちも連れてきますね」
「楽しみにしています」
 アンやロル、レファは礼子の異父妹もしくは異母妹といえるから、アキツはやはり彼女らの伯母に当たるだろうし、仁が作った者たちは礼子と同じく姪や甥にあたることになる。
 孤独だった長い年月に終止符が打たれたことは、感情の乏しいアキツにとっても喜ばしいことだったようだ。

*   *   *

「ああ、これで一段落した」
「ジン兄、ご苦労様」
 半日足らずで済んだ移設。仁も心の底からほっとしていた。
「実をいうと、昨日『コンロン3』で帰る時、はっと気が付いたんだよ……」
 蓬莱島の家で3時のお茶を飲みながらエルザに打ち明ける仁。
「納得。それで慌てていたの」
「うん」
 さらにエルザが何か言おうとした時、礼子が急ぎ足でやって来た。
「お父さま、シオンさんがお見えです」
「え?」

*   *   *

「シオン、どうした?」
 そんな仁の顔を見るなり、シオンは爆弾発言をした。
「ジン、姉さまがいなくなっちゃったの!」
「ええっ!?」
 シオンの姉、つまりイスタリスが失踪した、というのだ。
「何でまた?」
「……あと半月で結婚式だったのよ」
 それだけ言うとシオンは俯いた。
「……もしかして、それが嫌で?」
 シオンは無言でこくりと頷いた。
「ええと、ベリアルスは何と?」
 以前魔族領に行った時、イスタリスは『傀儡くぐつ』のベリアルスと婚約したと聞いた覚えがあるのだ。
「……そのベリアルスがお膳立てしたみたいなの」
「はあ?」
 背景がまったく理解できないため、仁はまず腰を落ち着けてシオンの話を聞くことにした。
 それによってわかったことがいくつかある。

 イスタリスとベリアルスの婚約は親同士、祖父母同士が決めたことだった。
 つまり、氏族間での婚礼であって、当人同士の意思はそこには反映されていなかった。
「……あたしは、てっきり姉さまも喜んでいたと思っちゃったのよ。にこやかだったし」

 また同時に、ベリアルスもこの婚約には乗り気ではなかった。
 その証拠に、イスタリスが失踪しても慌てておらず、シオンは彼が微笑むところを影から見てしまった、という。
「好きな人が失踪しているのにできる表情じゃなかったわ、あれ」

 なのでこっそりと尋ねてみたら、南への逃避行をお膳立てしたのがベリアルスだったという。

「ええと、逃避行の相手というのはもしかしてネトロスか?」
「そうよ。よくわかったわね」
「ええー……」
 あれでわからないという方がおかしいんじゃないかと仁は思った。そんな思いが顔に出たのか、
「ジン兄、あまり近くにいると、見えなくなることもある、と思う」
 とエルザにたしなめられてしまった。
「だって、姉さまとネトロスは小さい頃から一緒にいて、ずーっとあんな感じだったのよ?」
「なるほど……」
 兄妹のように育ったならば、同じく実の妹であるシオンがそれと気付けないこともある……のかもしれない、と仁は思った。

「ねえ、姉さまを捜すの手伝ってちょうだい! せめて無事でいることがわからないと、あたし……」
 切羽詰まった表情のシオンに、仁は優しく告げる。
「わかった。任せておいてくれ」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170120 修正
(誤)素音は無言でこくりと頷いた。
(正)シオンは無言でこくりと頷いた。
 orz

(旧)アンやロル、レファはアキツの従姉妹くらいに当たるだろうし、
(新)アンやロル、レファは礼子の異父姉もしくは異母姉といえるから、アキツはやはり彼女らの伯母に当たるだろうし、

 20170122 修正
(旧)アンやロル、レファは礼子の異父姉もしくは異母姉といえるから
(新)アンやロル、レファは礼子の異父妹もしくは異母妹といえるから
 アドリアナが礼子(の前身)を作った方が古いですものね……
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