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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-18 我が家

 1月30日。
 約束の時間になると、ラインハルトは外交官として、ミツホの首長、ヒロ・ムトゥに会いに行った。
「お待ちしておりました」
 ヒロ・ムトゥは自らドアを開け、ラインハルトを出迎えた。
「ショウロ皇国女皇帝陛下よりの提案、全てお受けすることとなりました」
「おお、それは重畳」
「つきましては、ジン様にお願いが1つございます」
「何でしょうか」
 公式の場での仁は随員としての扱いになる。
「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』であるジン様にも、この『世界会議』が全世界の平和を願うものである、という言質をいただきたく」
「もちろんですとも。それは自分の願いでもあります」
 ヒロ・ムトゥからの申し出を、仁は即座に肯定した。
「ありがとうございます」

 こうして、『異民族』といわれていたミツホと、『東の国々』とは将来に渡る協力体制を築き上げていく、その第一歩を踏み出したのである。

*   *   *

「いやあジン、大成功だったなあ!」
 同日昼、『コンロン3』はミヤコを発った。
「しかしジンの人気は凄いな」
 今回仁は大したこともしていないというのに、前回にも増して盛大な見送りとなっていたのだ。

「だけど、楽しかったよ」
 ラインハルトは目を閉じて感慨に耽る。
「これが外交官のいいところなんだよなあ」
 かつてエリアス王国までを往復したラインハルトである。きっとあの頃のことを思い出しているのだろう、と仁は思った。
「ジン兄、ライ兄。ハリハリ沙漠をもうすぐ飛び越える」
 エルザの声が掛かる。超高速で飛ぶ『コンロン3』は1時間ちょっとでショウロ皇国まで帰ってきたのだ。
 ショウロ皇国上空に差し掛かると速度を半分以下まで落とす。
 結局、ミヤコの町を発ってから2時間ほどで仁たちはロイザートまで戻って来たのである。

*   *   *

「ラインハルト、ご苦労でした」
 ヒロ・ムトゥからの返書を受け取り、中を確かめた女皇帝は上機嫌であった。
「ジン君もエルザもご苦労様」
 ふわりと柔らかく微笑みかける女皇帝。公的な顔はお終いのようだ。
「で、何か面白いことはあった?」
 時刻は午後5時、執務終了の時間だ。
「このあと、食事を一緒にどうかしら? その時に向こうでの話を聞かせてちょうだい」

 宮城(きゅうじょう)の応接室へ、女皇帝と共に仁とエルザ、ラインハルト、礼子、エドガーらは移動した。
「ジン君に感化されて、ここのメニューも増えたのよ」
 少し嬉しげな女皇帝。だが。
「でもねえ……やっぱりジン君の所で食べた味にはかなわないの。それと……」
「それと? どうなさったんですか?」
「……冷めちゃってるのよ」
「……ああ……」
 一国の皇帝陛下が口にする食事であるからして、毒見というものが必要なのだろう。
 それが済んでから持ってくれば、冷めてしまうのもむべなるかな、である。

 加えて、出てきたのは焼き魚と天ぷら。
 どちらも冷めてしまったら美味しさが半減するものだ。
「……せめて『ヒ……』いや、『電磁波加熱(マイクロウェーブ)』」
 ただ温めるより、内部から全体を温めた方がいいと思った仁はオリジナル工学魔法『電磁波加熱(マイクロウェーブ)』を使った。
 電子レンジと同じく、マイクロ波に分類される電磁波で対象を温める魔法である。
 銀の皿でなく陶器の皿に載っていたので使ったのだ。

「……あら、温かいわ」
「少しはましになったでしょうか?」
 温め直した焼き魚は硬くなっていて美味しくないが、冷たいままよりはましだ。
 天ぷらも同様。
 温め直した料理は、基本的に味が落ちてしまうのは仕方がないことである。
(うーん、この点を何とかできたらいいなあ)
 温め直した天ぷらを口に運びながら仁は考えた。そして1つの結論に辿り着く。
「保温結界か!」
「え?」
「な、何?」
「……何か思いついた、の?」
 ラインハルトと女皇帝は黙り込んでいた仁が突然声を上げたことに驚いていたが、エルザは落ちついていた。
 黙り込んだのは何か考えているからで、そうなった仁は突然再起動することを知っているのだ。
「ああ。……ええと、あそこの魔法制御の流れ(マギシークエンス)がこうだから、ここの魔導式(マギフォーミュラ)とあっちの魔導式(マギフォーミュラ)をこうして……うん、できそうだ」
 今度は全員、仁が説明してくれるのをじっと待つ。
「ええと、今思いついたのは『保温結界』です。毒見の時以外は伝導・対流・放射を極力抑えることで対象物を冷めにくくします。同時に冷たいものもぬるくならないようにできるはずです」
「よくわからないけど、素晴らしいわ、ジン君! ぜひ作ってちょうだい!!」
 仁の提案に飛び付く女皇帝。
「承りました」
 仁も即引き受けた。

「それでは、完成し次第、報告に伺います」
「お願いね」
 午後7時、仁たちは宮城(きゅうじょう)をあとにした。ラインハルトはまだ詳しい報告という仕事が残っているので泊まることになる。

 ひとっ飛びで『コンロン3』は屋敷の屋上に着陸。
「ああ、帰ってきたな」
「ん」
 蓬莱島、崑崙島、カイナ村、そしてここロイザートの『屋敷』。
 エルザと一緒に過ごす時間は、ここと蓬莱島が群を抜いて長い。
 ゆえにゆったりと寛げる『我が家』なのだ。
「お父さま、エルザさま、ご入浴なさったらいかがでしょう?」
 そしていつでもどこでも、礼子は仁の第一番の従者である。
「そうだな。久しぶりに自宅の風呂に入るか」
「ん」
「お背中お流しいたします」
「頼むよ」

 慌ただしかった日々に一区切りが付いた。
 仁は久しぶりの我が家でゆっくりと旅の疲れを癒したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170119 修正
(誤)冷めた天ぷらを口に運びながら仁は考えた。
(正)温め直した天ぷらを口に運びながら仁は考えた。

(旧) 午後7時、仁たちは宮城(きゅうじょう)をあとにした。
(新) 午後7時、仁たちは宮城(きゅうじょう)をあとにした。ラインハルトはまだ詳しい報告という仕事が残っているので泊まることになる。
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