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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-17 ドリル

 少し早めの夕食後、仁はソファにもたれて昼間のことを考えていた。
「ジン兄?」
 そんな仁を見て、エルザは何かを察したようで、そっとしておこう、と少し距離を取った。
くさび……ツルハシ……ドリル……」
 ぶつぶつ呟く様は少し異様だが、エルザはこれが仁の思考形態だととっくに慣れてしまっている。
 そして5分くらいの後。
「よし、構想は決まった。あとは聞いてみないとな」
 勢いよく立ち上がった仁は、
「ちょっとミイの所へ行ってくる」
 と断り、部屋を出た。咄嗟のことで、礼子だけは付いて行けたが、エルザは『ん』と答えただけであった。

*   *   *

 30分ほどで仁は戻って来たが、その顔は嬉しさに溢れていた。
「何か、いいことあった?」
 そう、思わずエルザが尋ねてしまうほどに。
「ああ、あったよ。ほら、昼間、土木工事で大岩が出てきて困っていたろう?」
「ん」
「あの時は礼子が砕いたが、普段はどうしているのか聞いてみたんだよ」
「ん、わかる」
「さっきの現場監督のデューザさんもここに泊まっていたんで聞いてみたんだ」
 工事現場近くにいい宿泊所がないので、職員棟に泊まっているという。
「そうなの?」
 仁が興味深そうな顔をしていたので、何か心の琴線に触れたのだろうとは思っていた。それが土木工事だとは思わなかったが。
「で、砕く時はハンマーか、タガネでコツンコツンだそうだ」
「……それで何かする、気?」
 顔つきを見れば見当は付いたが、一応聞いてみるエルザであった。
「うん。少しは役に立ってあげたいよな」

 ということで仁はその後、一旦蓬莱島へ戻った。
「アダマンタイトを部分的に使えば十分いけるな」
「お父さま、他はどうします?」
「炭素鋼……いや、ニッケル鋼にするか」
「わかりました」
 礼子に手伝って貰い、仁が作り上げたのはツルハシ。先端部分がアダマンタイトで、大抵の岩に食い込む。
 ニッケル鋼にも『強靱化(タフン)』を掛けてあるので、強度的には十分だろう。
「あとはタガネも作っておくか」
 こちらも先端にアダマンタイトを使ったもので、掘削量は推定3倍。
「最後は……これだ」
「ドリル、ですか」
「そう。確か、これで穴を開けて、楔を打ち込んで割る、ということを聞いた気がする」
「なるほど」
 仁が作っているのはハンドドリル。それも『子錐こぎり』もしくは『クリックボール』と呼ぶタイプ。
 単純にクランクハンドルを回すだけの構造なので壊れにくい。
 ドリルビットの先端はもちろんアダマンタイトだ。
 これらを各10セット作り、仁はミツホへと戻った。

*   *   *

「お帰りなさい」
 仁が戻った時、ミツホは午後8時半。
 仁は礼子にサンプルを持たせ、デューザの下へ向かった。
「ジン、何を持っているんだい?」
 廊下でラインハルトとミイに会う。明日の日程について打ち合わせていたそうだ。
「ジン、それは?」
 ラインハルトは目ざとく礼子が持つ道具に興味を示した。
「工事用の道具さ。これがツルハシ、これはタガネ、これはドリル」
「ふうん。ドリルは面白い形をしているなあ!」
「これからデューザさんの所へ行くんだ」
 仁がそう言えば、
「よし、僕も行こう!」
 ラインハルトからは当然といえば当然の答えが返ってきた。

「デューザさん、いますか?」
 職員棟のデューザの部屋を尋ねる仁。
「おお、これはジン様、まだ何か?」
「ちょっといい物を用意したので見てください」
 職員棟の休憩室で、仁は礼子に持たせた道具類を披露した。

「ほう、面白そうですな!」
「タガネ、ツルハシ、ドリルです」
 仁は簡単に説明していく。
「タガネはわかりますが、これは?」
「これはこう使います」
 仁はまずツルハシの使い方を教える。
 といっても振りかぶって振り下ろすだけだが。
「ははあ、これはいいですね。小石混じりの場所を効率よく掘り返せそうです」
 デューザは現場の人間らしく、ツルハシの有用性はすぐに理解してくれた。
「で、こっちはドリルです」
「ドリル?」
「そうです。ええと、何か穴を空けてもいいものはないですか?」
 仁がそう言うと、ミイは少し考えていたが、厨房へ行くと、大きな瓶を抱えて戻ってきた。
「それでしたらこの瓶はどうでしょう? 縁が欠けて、植木鉢にでもしようかと思っているんです」
「なら穴を空けてもいいですね」
 瓶、すなわち陶器はかなり硬い部類に入る。
 しかも脆いので、穴を空けるには工具だけでなくそれなりの技術も必要となるのだ。

 仁は瓶をひっくり返し、底を上に向けた。その中心部にドリルの先端を当て、回し始める。
「おおー!」
 アダマンタイト製の先端は、陶器などものともせずに切削し、たちまち穴を空けてしまった。
「こ、これは凄い! さすがジン様!」
「ジ、ジン様、これを譲って下さるのですか?」
 デューザは飛び上がるほど喜び、ミイも目を輝かせた。
「ええ、そのつもりです」
「とってもありがたいですね!」
 そこで、対価をどうするか、でミイは仁と打ち合わせに入った。

「俺としては、友好の証なので最低限でいいんですが」
「そうはいきません」
「でも……」
 少々の押し問答の結果、『梯子下がり』の対価として貰う予定の味噌とミョウバンを増やしてもらい、それに工房で見た木材のうち、蓬莱島にない『桐材』を分けて貰うことで話が付いたのであった。
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