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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-16 けん玉

 けん玉を手に取った仁は、重さとバランスを確かめるように前後左右に動かしてみた。
 たこ糸でつながっている玉の部分もそれに合わせて揺れる。
 そして。
「よっ」
「おっ」
「あ」
「まあ」
 ふりけん、と呼ばれる技。振り子のように玉を振り、けん先と呼ばれる尖った部分で玉を受ける技だ。
 仁は最初の一回で成功させた。
「ジン様、すごいです!」
「久しぶりだったから自信なかったけどな」
 そう言って仁は再度挑戦。今度は失敗した。
「もう一度」
 結局、10回中7回を成功させた仁であった。
「どれどれ、僕にもやらせてくれよ」
 横で見ていたラインハルトが言いだした。仁はけん玉を手渡す。
「最初は大皿からやった方が……」
 が、ラインハルトはいきなりふりけんを行い……。
「あいたっ」
 自分の顔に玉をヒットさせていた。
「ライ兄、大丈夫? ……『癒し(フェルハイレ)』」
「あいたた……エルザ、ありがとう。……意外と難しいな、これ」
「だから大皿からやった方がいいと言おうとしたのに」
 仁はラインハルトからけん玉を受け取ると今度は横に持ち、大皿と呼ばれる、一番大きな受け皿の部分で玉を受け止めた。
「これだって難しいぞ。手だけでなく腕や膝を使って玉が跳ねないようにするんだ」
「ジン兄、やらせて」
 するとエルザがやりたいと言ったので仁はエルザにけん玉を手渡した。
「え、と、……こう?」
 ひょい、とエルザはけんを振り、跳ね上がった玉を大皿で受けた。
 その際、ちゃんと膝のクッションを効かし、受けた玉が跳ねないようにしている。
「おお、うまいうまい」
 仁が褒める。エルザはなかなか筋がいい。
 何度かやっているうちにコツを掴んだようで、小皿と呼ばれる、大皿の反対側の皿でも失敗せず受けられるようになっていた。
 一方ラインハルトは。
「よっ! ……ああ、駄目だ」
 意外とこの手の遊びは不器用のようだ。
 しばらくけん玉に興じたあと、仁はこの工房に来た理由を思い出す。
「ええと……」
 仁は工房を見渡し、小物を作っているらしい一角に目を留めた。
「済みませんが、少し使わせてもらっていいですか?」
 工房の主、タッツァー・クロダに仁は断り、了承をもらうと、さっそく加工を始めた。
「カンナはおおよそ同じか。鋸も引くタイプだな……」
 洋式だとカンナも鋸も押して切るタイプが多いのだが、ここのものは仁が使い慣れている引き切り式であった。
「ええと、この角材をもらおう」
 仁が何か作り出したので、エルザとラインハルトはけん玉の練習をやめ、見学にやって来た。
「ジン、何を作ってるんだい? えらく細かい細工だな?」
「まあ見ていてくれ。これを等間隔に並べるには……」
 30センチほどの角材を2本。そこに等間隔で溝を掘っていく。
「……梯子のおもちゃ?」
 仁が作っていたのは小さな小さな梯子に見えた。
「これは確かに梯子だな。だがそれだけじゃないんだ」
 梯子の横棒には溝に合う太さの角材を使う。
「よしよし、うまくできたな」
 仁は木工の腕が錆び付いていないことを確認できて上機嫌である。
「あとは駒を作らないとな……」
 独り言をいいながら手を動かす仁。
 傍で見ているエルザと礼子は、これが仁の機嫌のいい時だと知っているのでじっと見守っている。
「できた」
 およそ1時間で完成。
「材料があったんで助かりましたよ、クロダさん」
 工房の主に礼を言う仁。
「それで、何を作られたのですか?」
 黙って見ていた者たちは興味津々である。
「ええと、『はしごくだり』っていうおもちゃです」
 土台になる四角い板の上に梯子が垂直に立てられている。
 その梯子の上に『駒』を置くと……。
「あ」
「おお!」
「面白いですね!」
 エルザ、クロダ、ミイらが驚いた声を上げる。
 『駒』が回転しながら梯子を下りていくのだ。軽業師のようでもある。
「一回で上手く行ったか。まだ腕は鈍ってなかったな」
 仁も満足だった。
「ほほう……これもジンの故郷のおもちゃかい?」
 ラインハルトが構造を見ながら尋ねた。
「そうさ。角材と端材でできるから昔何度か作ったんだ」
「へえ……」
 そこにタッツァー・クロダから声が掛けられる。
「ジン様、子供たち用にこれを作ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、いいですよ。その際はこの駒を色分けしたり絵を書いたりするといいでしょう」
「なるほど」
「さすが、ジン様ですわね!」

 このアイデア料ということで、仁は味噌とミョウバンを大量にもらった。
 ミョウバンは蓬莱島では採れないのでありがたかったし、味噌も所により味が違うので、これはこれでありがたい。

 この日の見学はこうして終わりとなった。

*   *   *

「えいくそ、上手くできないな!」
 工房訪問記念にと、仁たちはけん玉を1人1つもらった。
 ラインハルトは暇さえあれば練習しているのだが、なかなか上達しないようだ。
「ライ兄、肩に力が入りすぎ」
 一方のエルザは『世界一周』と呼ばれる、大皿、小皿、中皿、けんと玉を移動させる技をマスター。
 10回に3回は成功させていた。
 そして。
「お父さま、これでいいのですか?」
「あ、ああ、それでいい……」
 礼子は既に、仁の知っている技を全てマスターし、ほぼ100パーセントの成功率となっていたのである。
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