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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

1404/1503

38-13 カイナ村は長寿村

 1月28日はマーサの誕生日である。
 当然、仁は『コンロン3』の転移門(ワープゲート)を使い、カイナ村に移動している。エルザも同様。
 代わりに仁とエルザの『分身人形(ドッペル)』がミヤコへ行っていた。
 礼子もカイナ村なので、ミヤコではエドガーが2人の分身人形(ドッペル)と行動を共にすることになる。
 礼子はエドガーと交代して『コンロン3』の番をしている設定だ。因みに、実際に番をしているのは再編成された『蓬莱島隠密機動部隊(SP)』のパンセ。崑崙島から一時的にこちらへ来ている。

*   *   *

「マーサさん、誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうございます、マーサさん」
「お誕生日おめでとうございます、マーサさん」
「おばあちゃん、お誕生日おめでとうございます」
「おめでとうございます」
 カイナ村のマーサ邸では、仁、エルザ、ミーネ、ハンナ、礼子らがお祝いの言葉を述べていた。
「まあまあ、ありがとうよ。この歳になって誕生日を祝ってもらえるなんて思わなかったよ」
「去年はお祝いできなくてごめんなさい」
 仁が謝る。昨年のこの日は、『コンロン2』のお披露目などで忙しかったのだ。女皇帝、宰相、フローラらを『コンロン2』に乗せたのもこの日だった。
「いいさね、そんなこと」
 マーサは笑って言った。

 仁が持ち込んだ白ワイン、エルリッヒの3454年。アウスレーゼと呼ばれる高級ワインで乾杯だ。
「飲みやすいねえ、これ」
「ジン様、これって高級ワインなのでは?」
「ラインハルトが10本単位でくれたんだ。だからどんどん飲んで下さい」
「ほんとにねえ。甘いから幾らでも飲めそうだよ」
「あたしも飲んでみたいな……」
「ハンナはまだ駄目だよ」
「はーい……」
 因みにハンナはシトランジュースである。まだ11歳ではお酒は早すぎるのだ。
「それから、これ、誕生日のプレゼントです」
「まあ、ありがとうよ、ジン」
 仁がマーサに渡したのは懐中時計。『仁ファミリー』共通のアイテムである。
 マーサで最後のはず……だ。
「マーサさん、私からは、これ」
「エルザちゃん、ありがとうよ」
 エルザからは『地底蜘蛛(グランドスパイダー)』の糸で織った布から作った割烹着である。
 熱に強く、燃えない。汚れもすぐに落ちる優れ物だ。
「これはちょっと変わったデザインだねえ。でも、着易いよ」
 要所にポケットをあしらい、ワンポイントの刺繍を入れるなど、エルザなりの工夫を入れた一品である。
「私からは、これを」
「まあわざわざありがとうよ」
 ミーネからは普段着の着替え一式。彼女自ら仕立てたものだ。
「あたしからは、これ!」
「ハンナ、ありがとうよ」
 ハンナは森へ行って、この時期に咲くケメリアの枝を、紅白取り揃えて花瓶に活けていた。

「……そういえば、サラはどうしているんです?」
 サラとは、仁がマーサ家のために作ったゴーレムメイドである。蓬莱島のものとほぼ同じスペックであるが、いざという時の戦闘力が高められているのだ。
「あの子には主に畑の世話をしてもらっているよ」
「ああ、なるほど」
 カイナ村では、共同の畑を共同で耕しているのだ。
「あたしは家の仕事、サラちゃんには畑仕事をしてもらっているのさね。最近は新しい畑を開墾してくれているようだねえ」
 適材適所、とはちょっと違うが、現オーナーであるマーサがいいというならそれでいいのだろう。
 ゴーレムメイドのサラが畑を耕すなら、おそらく10人前、20人前の働きをしているはずで、開墾をするにしても、大岩を砕き大木の根を引っこ抜き……という活躍ぶりが目に見えるようだった。
「でもみんな元気だよな……」
 過去、戦争に若手を駆り出された経緯があってカイナ村の人口比率は老人が多く、壮年が少ない。赤ん坊の出生率はここ数年で倍加しているから、10年、20年単位で見ればいずれ正常に戻るだろうが。
「元気っていえばねえ、この前マーキーのところに子供ができたって聞いたねえ」
「マーキーさん?」
 仁はちょっと考えて、その名前に思い当たる。
「ああ、村長さんとこを挟んで村の反対側に住む人でしたっけ」
 あまりマーサ邸との交流がないので思い出すのに時間が掛かってしまった。
「……あれ? あの人ってもう40過ぎていませんでした?」
「かみさんのエデは38だったね」
「……」
 現代日本でならともかく、この世界ではかなりの高齢出産になるのでは、と仁は考えていた。
 そんな仁にエルザが告げる。
「カイナ村の人たちは、多分、長生き」
「え?」
「この土地は、他の地よりも自由魔力素(エーテル)が濃い。それは昔から。そして、ジン兄のおかげで生活環境が劇的に改善された。サリィ先生もいる。そして、血統」
 推測ではあるが、カイナ村の人々は、旧レナード王国の血を色濃く引いているはずなのだ。
「さらに私の推測になるけど、北の民族の血も流れている可能性が、ある」
「……」
「だから、環境がよければ、きっと他の国の1.5倍くらいの寿命がある、はず」
 魔族ほどではないにせよ、寿命が長いということは、子供を産み育てられる期間もそれなりに長いということ。
 マーキーの妻、エデが38で妊娠してもおかしくはなかったのである。

「そうするとおばあちゃん、まだまだ元気でいてくれるね!」
 ハンナが嬉しそうに言った。
「そうだな」
 仁も微笑みながら同意する。
「ふふ、曾孫ひまごの顔を見られるねえ。もしかしたら玄孫やしゃごも」
 マーサも、自分が元気で長生きできると聞かされて嬉しさを隠せないようだ。

 そんな和やかな雰囲気の中。
「あ、雪」
 ハンナが窓の外を見て声を上げた。
 粉雪がちらちらと舞っている。
「積もるかなー」
 今年はまだ積もるほどの雪は降っていなかったカイナ村。
 そろそろ積もる雪になりそうだ。
「でも、温泉もあるし、雪は雪室に貯めておけばいいし」
「ゴーレム馬もあるしね!」
 マーサとハンナが明るく言った。
「これもジンのおかげだよ」
「そう言われると照れますね。この村は俺の故郷ですから」

 大地を白く染め行く雪。
 カイナ村は冬だが、マーサ邸の中は暖かだった。
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