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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

1403/1476

38-12 ミヤコ到着

 セキの町からミヤコまで連絡が行き、返事が戻ってくるまで丸2日掛かった。
 セキ——ミヤコ間は100キロもない。伝書鳩なら往復4時間も掛からない距離である。
 往復の時間よりもいろいろと決定するための時間が掛かったのだろうと仁は推測した。

「ミツホのヒロ・ムトゥ殿はラインハルト殿の来訪を心から歓迎すると共に、お目に掛かる時を心待ちにしていますとのことです」
 クロウからそれを聞き、仁たちは『コンロン3』に乗り込んだ。
 セキの住民はこぞって見送りに出ている。
 半分は空を飛ぶ乗り物見たさのようだが。

「いやあ、ほんまに空飛べる言うんは嬉しいなあ」
 世話係としてマヤが付いてくることになった。式の準備などはいいのかと思ったが、書類上の手続きのため、オリヴァーは今ミヤコにいるそうなのだ。
 この『コンロン3』でミヤコに行ったらきっとびっくりするだろう。
「まさに渡りに船、ってことか」
「ああ、それそれ。『賢者(マグス)』様もそういう言い回し、時々言うてはったそうや」
 そんな話をしている間に『コンロン3』はゆっくりと上昇を開始した。
「おお、ほんまに飛んだわ! 凄いわあ」
 見慣れた町並も上空から見下ろせばまた違う趣がある。
「ああ、セキの町いうんは、こうなってたんやなあ……町長はんのいる役場は……あれやな」
 そして『コンロン3』は進み始める。
「おお、速い速い。でも、街道ってほっそいなあ」
 荒野の中に引かれた灰色の筋が街道であった。

 エヒム、テマエ、ナルド、ヤシマ。そしてサヤマ湖が見えてくればミヤコである。
「ああ、あれがサヤマ湖やな」
「何かやってるみたいだな」
「干拓か? ……いや違うか。水路を引いているんだな」
 どうやら、町の中央と周囲を巡るような水路を作っているようだ。
「ロイザートを思い出すな」
 ラインハルトがいみじくも言ったように、その光景はショウロ皇国の首都、ロイザートを彷彿とさせた。
 『コンロン3』は降下に入った。
 ゆっくりと高度を落としていくと、ミヤコの南にある広場に人が集まっているのが見て取れた。
「あそこに着陸すればいいみたいだな」
 仁は操縦士のエドガーに指示を出した。
「はい、わかりました」
 ベテラン操縦士となったエドガーは『コンロン3』を巧みに操り、広場を目指した。
「ああ、間違いないわ。あそこにミイはんがおるもん」
 マヤの言葉を聞き、目を凝らしてみると、確かにミイが正装をして手を振っており、その両脇には旗をもった職員らしき者が立っていた。
 直径50メートルほどの空き地、その中心にエドガーは『コンロン3』をぴたりと停止させた。
 ドアを開け、タラップを降ろし、まず礼子が、続いて仁が、そしてエルザ、ラインハルトと続く。
「ジン様、エルザ様、レーコ様、ようこそいらっしゃいました!」
 ミツホ首長、ヒロ・ムトゥの孫、ミイ・ムトゥが、正式な礼を行った。
「連絡をいただき、お待ちしておりました。そちらがラインハルト様ですね。ようこそ、ミツホの首都ミヤコへ。歓迎いたします」
「ショウロ皇国外交官、ラインハルト・ランドル・フォン・アダマスと申します。よろしくお願いいたします」
 ラインハルトも外交官として礼を返した。

 その時、今まで静かだった観衆から声が上がる。
「ようこそ! 『魔法工学師マギクラフト・マイスター』様!」
「ジン様! ようこそおいでくださいました!」
 仁を歓迎する声である。
「ジン、すごいな……これほどとは」
「いや、俺も今更ながら実感した」
「ジン兄、前回ミヤコを発つ時を思い出せば想像できた、はず」
 エルザから冷静な指摘が入るが、
「いや、あれって一過性のものだと思ってさ」
 時間が経てば熱狂は冷めるものだ、と仁は思っていたのだ。
 現代日本にいた祭、○○ブーム、などというものが流行り、そして廃れていったのを何度も見ていたから。
 しかしここでは違ったのだった。
「ジン様! ジン様!」
「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』様万歳!」
「……恥ずかしい」
 ミイに先導されて歩きながら、小声でぼそっと呟いた仁であった。
「申し訳ございません。うちも、できるだけ小規模に、と言ったのですが、空を飛んで来られるという話が伝わりましたらこんなことに」
 半分は仁の自業自得だったようだ。
「マヤさん、ご苦労様でした。ここからはミヤコの者がジン様方をご案内致します」
「わかりました。……ジンはん、ほな、また」
「うん、マヤさん、ここまでありがとう」
 ということで、仁たちをここまで案内してきたマヤはこれで役目を終え、オリヴァーの下へ向かったのであった。

*   *   *

「ようこそ、外交官殿。私がミツホの首長、ヒロ・ムトゥです」
「ショウロ皇国外交官、ラインハルト・ランドル・フォン・アダマスです」
 ラインハルトとヒロは握手を交わした。
 そしてラインハルトは女皇帝からの親書を差し出す。
 ヒロ・ムトゥはそれを受け取り、開いた。彼が目を通す間、ラインハルトは静かに待った。
 そして。
「なるほど、皇帝陛下のお言葉、よくわかりました」
 ヒロ・ムトゥは大きく頷いた。
「この世界を、平和、平穏のために緩やかに結びつけようというお考え。『世界会議』というあり方。『賢者(マグス)』様のお教えにも一致いたします」
 やはりシュウキ・ツェツィは『国連』の考え方を説いていたようだ、とこの場では傍観者である仁は思っていた。
「まずはミツホをそちらの世界に紹介し、次いで『世界会議』に参加してほしい、とのお言葉、お受けしたく思います。とはいえ、私1人で決めていい内容ではないので、会議に諮らねばなりませんが」
 非常時の命令権など、その権限は大きいが首長は独裁者ではない。
「結構です。日時はどのくらい見ればよろしいでしょう?」
「2日ほど、いただけますか」
 1月30日に返答する、とヒロ・ムトゥは答えた。それならば、女皇帝に約束した日時の範囲内である。ラインハルトは受諾することにした。
「わかりました。よいお返事をお待ちしております」
「その間、このミヤコをお楽しみください」
「ありがとうございます」

「ジン様、エルザ様、ラインハルト様、こちらでお寛ぎ下さいませ」
 仁一行はミイに案内され、以前泊まった迎賓館に案内された。
「ありがとう」
「ご滞在の間はうちがご用を承りますので」
「なんだか悪いなあ」
「いえ、うちが自分で申し出たことですからお気になさらないでください」

 一方ラインハルトは、瓦によく似たもので葺いた建物に目を見張っていた。
「ほう、これはジンの『家』にも似ているなあ」
「そうなんだ。庭もよくできているから、楽しむといい」
 日本庭園風の庭は、仁がロイザートに持つ屋敷の庭で参考にさせてもらっている。
「ほほう! これはなかなか」
 仁を通じて和風文化もある程度知っているラインハルトにとっても、ここミヤコの文化は興味深いものがあったとみえ、終始その目は輝いていたのである。
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