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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-09 技術提供

「ほほう、いよいよ我等とローレン大陸人との間で友好を、ですか」
「できることなら、と考えています」
 仁はもう一つの目的を氏族長バルディウスと話し合っていた。
 同席しているのはバルディウスの息子、ラデオゥスとその妻ロロナ、そしてバルディウスの孫でラデオゥスとロロナの娘、シオン。そしてマリッカ、である。
 マリッカが『オノゴロ島』の新たな『主人』となったことは、『森羅』氏族だけでなく、他の氏族も知っていた。その上で祝福されていたのである。

「ローレン大陸の人間がこちらに危害を加えることはない、と保証します」
「うむ、ジン様が保証して下さるなら安心ですな」
 バルディウスは乗り気である。
「問題は誰を代表とするか、です」
 仁はシオンの姉、イスタリスのことをちらと考えた。

 イスタリスは、食糧援助を取り付けるため、妹シオンと別々のルートでローレン大陸にやって来たことがあった。
 シオンが仁と出会って協力の約束を交わしたのに対し、イスタリスはフランツ王国で捕らえられ、従者のネトロスと共に拷問を受けていたのだ。
 それを仁が救出し、治療したのである。その際、2人は死亡したことになっている。
 当時のフランツ王国国王はリジョウン・ド・バークリーであり、現国王はロターロ・ド・ラファイエットなので問題はないと思われるが、彼女のことを思えば、別の者が望ましいだろう。

「森羅氏族からは私たちが行きましょう」
 ラデオゥスとロロナが立候補した。
「うむ、そなたたちなら任せられるな」
 バルディウスもこの2人なら、と頷いたのである。

「それでは、およそ半年後くらいになるかと思いますが、日程が決まり次第連絡しますよ」
「ジン様、よろしくお願い致します」

*   *   *

 仁は、翌日昼過ぎに『森羅』の氏族領を発った。
 まずは成功だ。
「次は……先に『福音』の氏族へ行くか」
 『福音』の氏族は北の山の中に住んでいる。
 『ヴァルカン』は北を目指した。

 『ヴァルカン』にとって、吹雪は障害になり得ないが、この日は珍しく快晴であった。
 福音氏族の住居がある岩山のそばに『ヴァルカン』は着陸した。
 この付近の積雪量は50センチくらいだ。
 人間だと膝上まで来てしまう。
「ゴーレム馬は……大丈夫そうだな」
 パワーが桁違いな上、低温にも強いので、1メートルくらいの雪までならなんとかなるだろう。
 仁の作るゴーレムは全て『体温』を持っているため、低温で皮膚が貼り付くような心配はいらない。
 また緊急用に『加熱(ヒート)』の魔法を放てるようになっているので、雪氷に閉じ込められることもないはずだ。

「お、おお、これはジン様!」
 『福音』氏族の居住地である岩壁からアレクタスが出てきた。
 結界があるので、付近の気温は摂氏5度くらい。雪も積もっていない。
「『森羅』から連絡は受けておりましたが、これはまた……」
 仁たちの背後にそびえる『ヴァルカン』を見て、圧倒されたようだ。
 そしてゴーレム馬にも。
「これは素晴らしいですね。雪の中でも移動が楽になります」
「こちらでは『そり』を牽かせるといいでしょう」
 ゴーレム馬が1メートルの雪でも平気とはいえ、乗っている者はたまらないだろうから、橇を牽かせればいいと仁は提案した。
「おお、たしかに。まあ、立ち話もなんですので、どうぞ中へ」

 岩壁に作られた集落。内部の気温は摂氏15度くらい、少し厚着をすれば問題なく暮らせる気温だ。
 『これ以上室温を上げると、外との気温差が大きくなりすぎますのでな』とは、氏族長ファビウスの言葉だ。
 仁もエルザも寒がりではないし、十分な防寒着をしているのでまったく問題はない。
 その日は『福音』の氏族領に泊まり、色々と話をすることにしたのである。

「ふむ、『世界会議』ですか」
「そういうことです。『森羅』では承知してくれました」
「ジン様が保証して下さるなら」
 『福音』氏族も、ローレン大陸人との友好に反対の意は示さなかった。
「ただ、代表は少人数でいいでしょう」
 各氏族から2名、などとしたらかなりの人数になってしまう、という。
「ここは、最初にジン様と友好関係を結んだことに敬意を表し、『森羅』氏族に代表として行ってもらえばいいと思いますがな」
「なるほど」
「もちろん、氏族会議を行って、氏族間の意思を統一しておく必要はありますが」
 そうしたまとめについて、『福音』の氏族が行うつもりはある、とファビウスは結んだ。
「いずれにしても春から夏頃の話になるでしょうからね」
 6月なら雪も消え、氏族間の連絡を取り合うには問題のない季節となる。

「ところでジン様、今回いただいたゴーレム馬の対価に何を求められるのですか?」
 『福音』の氏族には5体のゴーレム馬を贈っている。
 マキナとレイが氏族の者たちに扱いを教えているところだ。アンとエドガーも手伝っている。

「それなんですが、以前こちらで見た魔導具を、と考えています」
「ほう? 魔法工学師マギクラフト・マイスターであらせられるジン様が興味を持たれるような魔導具がございましたかな?」
「それがあるんですよ。また、理由もありまして」
 仁はそれについて説明を始めた。
「一言で言えば、魔族からの技術提供という形で紹介したいんですよ」
「ふむ」
「具体的には、『通信機』ですね」
「『通信機』、ですか?」
「ええ。こちらにあった通信機は、俺が作った『魔素通信機(マナカム)』とは似て非なるもので、『放送』に使えそうなので」
「放送、ですか?」
「そうです」
 仁は簡単に説明する。
 町中の要所要所に受信部を設置し、必要に応じて放送を行うのだ。
 普段は時報を流してもいい。
 現代日本でも、地方にはそうした公衆放送のシステムがある。
 地域によって防災**などという名前がついているようだが(**は地方都市名)。

「ははあ、なるほど。ですが、それしきのもの、ジン様なら作れるのでは?」
「作れるか作れないかと言われたら作れます。ですが、魔族領からの提供技術である、という点が大事なのですよ」
「ああ、そういうことですか」
 ファビウスも納得してくれたようだ。
「そういうことでしたら、喜んで技術提供を致しますよ」
「ありがとうございます」
 交渉がうまくいったことで仁はほっとした。
 情報の伝達は、いつの世にも重要であるからだ。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170110 修正
(誤)仁は、翌日昼過ぎに『森羅』の氏族領を経った。
(正)仁は、翌日昼過ぎに『森羅』の氏族領を発った。

(誤)『森羅』氏族も、ローレン大陸人との有効に反対の意は示さなかった。
(正)『福音』氏族も、ローレン大陸人との友好に反対の意は示さなかった。

(旧)「ところでジン殿、今回いただいたゴーレム馬の代償に何を求められるのですか?」
(新)「ところでジン様、今回いただいたゴーレム馬の対価に何を求められるのですか?」

(誤)「はほう、いよいよ我等とローレン大陸人との間で友好を、ですか」
(正)「ほほう、いよいよ我等とローレン大陸人との間で友好を、ですか」
 はほうって……orz

(旧) 緊急用に『加熱(ヒート)』の魔法を放てるようになっているので、雪氷に閉じ込められることもないはずだ。
(新) 仁の作るゴーレムは全て『体温』を持っているため、低温で皮膚が貼り付くような心配はいらない。
 また緊急用に『加熱(ヒート)』の魔法を放てるようになっているので、雪氷に閉じ込められることもないはずだ。
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