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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

06 旅路その2 エゲレア王国篇

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06-27 乱戦

 注意、今回少し血なまぐさく? なります。
「うわっ!」
 非常口の扉が吹き飛び、王と王子目掛けて2体のゴーレムが襲いかかった。だが。
「させません!」
 それを防いだのは(あかがね)色のメイドゴーレム。
「ロッテ!」
 ロッテはその華奢な手足で襲ってきた警備ゴーレムの拳を防ぎ、あまつさえ相手を投げ飛ばしたのである。
 その腕は僅かに凹みが出来ているが、そんなことは意に介さずもう1体を相手取り、腕を捻りあげて見事その腕をもぎ取った。
 そして残ったもう片方の腕を掴むと、何と振り回して投げ捨てたのである。
 ロッテは王達に向かい、現状を告げる。
「陛下、殿下。おそらく城中のゴーレム、その大半が暴走しているようです」

*   *   *

 他の出入り口からも警備ゴーレム、騎士ゴーレムなどの戦闘用ゴーレムが雪崩れ込んできたところである。
 仁とビーナはバリアの中、ゴーレムごときの攻撃は一切感じていない。そんな状態で、
「ビーナ、大丈夫か?」
「いいいいいったいななななにがあったの?」
 仁はパニックを起こしかけたビーナを落ちつかせようとその肩を軽く叩き、
「落ち着け。俺の傍にいれば大丈夫だから」
 そう言い聞かせ、現状の説明をする。
「多分、城中のゴーレムが乗っ取られた」
「何ですって!?」
 そこで仁は、手短に、ラインハルトと共に出会ったゴーレム、『アルバス』の話をした。
「今回感じた魔力はあの数百倍、いや数千倍強かった。しかも、『消去(イレーズ)』と『書き込み(ライトイン)』の2回。これがどういう事かわかるだろ?」
 ビーナは青い顔で肯くと、
「ええ。……相手が誰かわからないけど、その誰かの命令しか聞かなくなっちゃった、ってことでしょ?」
「そうだ。多分乗っ取られなかったのは俺の『ロッテ』とラインハルトの『黒騎士(シュバルツリッター)』だけだ」
 そこで一旦言葉を切ってから、
「幸いと言っていいかわからないが、書き込み(ライトイン)で出来たのは簡単な命令だけだろう。……つまり暴れろ、とか人間を襲え、みたいな、さ」

*   *   *

黒騎士(シュバルツリッター)、そいつを潰せ!」
 ラインハルトも仁同様、今の状況を分析し、非常にまずい状態であると結論していた。広間にいる全員はとても助けられそうもない、ならばとラインハルトはエルザとクズマ伯爵を探していた。最初の混乱ではぐれてしまったのである。
 周囲も見回し、黒騎士(シュバルツリッター)に命令を出していくラインハルト。
 今、外から来た騎士ゴーレムを叩き伏せたところである。
「そいつの剣を拾え。……よし、こちらへ来い」
 僅かに出来た余裕の時間に、ラインハルトは黒騎士(シュバルツリッター)に剣を拾わせた。これで攻撃手段が出来た。
「エルザ! ルイス! どこにいる! 無事か!?」
 エルザとクズマ伯爵を呼ぶラインハルト。それに答えて、
「ラインハルト! 私は無事だ」
 その声を聞き、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、伯爵を襲うゴーレムが1体。
黒騎士(シュバルツリッター)!」
 クズマ伯爵を襲おうとしたゴーレム、『ズィンゲル』の脚をぎりぎりのところで1本斬り飛ばす。
「すまん、助かった」
 クズマ伯爵の所へ駆けつけ、隣にいるように言うと、
「バリア」
 仁からもらった保護指輪(プロテクトリング)を起動した。これでとりあえず2人の身は安全である。
「エルザは!?」
 そうなると次に心配なのはエルザである。

 そのエルザは孤立していた。
 仁からもらった保護指輪(プロテクトリング)のおかげで怪我はしていないが、周りはすべてゴーレム。
「ライ兄……ジン、君……」
 バリアのため、ゴーレム達はエルザの手前30センチのところで止まっているが中にいるエルザは不安で泣き出しそうであった。
「たす、け、て……」

*   *   *

「くそっ、何が起こったというのだ!」
 大半の貴族達は何が何やらさっぱりわからず、その半数は身近にいた自らのゴーレムに殴打されて気を失うか、または大怪我をして床に横たわっている。
「セレス! あたしよ! わからないの!?」
 セルロア王国の魔法工作士(マギクラフトマン)、ステアリーナのクリスタルゴーレム、セレスも例外ではなく暴れ回っていた。
 だが、その体は水晶、衝撃には弱い。
 空振りした手が偶然通りかかった他のゴーレムとぶつかり、砕け散る。
「ああ! セレス!」
 残った腕を更に振り回すうちに壁を殴ってしまい、ついにセレスは両腕を失ってしまった。これで殴られる心配は無いと、ステアリーナはセレスにしがみつき、
「お願い! もうやめて! あなたが壊れるのなんて見たくない!」
 そう言いながらステアリーナは工学魔法を使った。
書き込み(ライトイン)
消去(イレーズ)』を使えるのは今のところ仁と謎のゴーレムだけである。ゆえにステアリーナは、『セレス』を止めるための手段として『書き込み(ライトイン)』を選んだ。
 これにより、制御命令が滅茶苦茶になり、セレスは停止した。
 ほっとしたのも束の間、ステアリーナは背後からゴーレムの一撃を頭部に受け、そのまま意識を失ったのである。同時にセレスもそのゴーレムにより破壊された。

*   *   *

「ぐわあっ!」
 一際高い悲鳴の中心にいるのは『タウルス』である。剣は持っていないとはいえ、人の背丈ほどもある巨大なタワーシールドはその質量だけで十分な凶器になる。
 一振りすれば3人4人が吹き飛んでいった。
「や、やめろ、『タウルス』!」
『タウルス』の魔法工作士(マギクラフトマン)、ジェード・ネフロイは必死になって『タウルス』を止めようとしていた。
 が、止まるものではない。ついに『タウルス』の振るったタワーシールドがジェードの腕をかすめ、血が噴き出した。
「ひいっ!」
 ほんの掠り傷であるが、ジェードは真っ青になり、逃げ出した。だが逃げ出した先にも別のゴーレムが待っている。
 彼にとって幸いだったことに、そのゴーレムは女性形だった。故にその一撃は彼の肋骨を折っただけで済んだのである。
 とはいえ、その痛みでジェードはその場に倒れ、血を吐いて気絶したのであるが。

*   *   *

「王! 王子! ご無事ですか!」
 ようやく近衛騎士隊が駆けつけてきた。その数15名。纏った鎧、防具はあちこち傷だらけである。
 それもその筈、この広間に辿り着くだけで数十体のゴーレムを相手にしてきたのだから。
「散開するな! 3人一組で行動しろ!」
 隊長からの指示。前後左右から襲いかかるゴーレムから身を守るためには死角があってはならない。1人あたり120度の範囲を担当しながらじりじりと歩を進めていく。
 王や王子の救出もだが、宰相、財務相、防衛相など、国家の重鎮もまた救出しなくてはならない。
「う、う、うあああ! く、くるなああ!」
「ちっ!」
 今、近衛騎士の1人が、太った伯爵を襲っていた金ぴかのゴーレムに斬りつけたところ。だが見かけによらず丈夫と見えて、浅い傷を負わせただけ。
 一方斬りつけた騎士の剣には刃こぼれが生じてしまっていた。
「くそ、見かけ倒しじゃないって事か」
 斬りつけた事でそのゴーレムの目標は太った伯爵から騎士達へと向いた。
「来るぞ、注意しろ」
 3人の騎士はそれぞれの剣を握りしめ、戦いに備えた。

*   *   *

「くそっ! 邪魔をするな!」
 近衛騎士隊長、ケリーが今切り結んでいるのはビーナの師匠、グラディア・ハンプトンの作った『アイアン』。
 既に倒された警備ゴーレムの持っていた剣を手にしているので厄介である。
 普通の警備ゴーレムでも身長は人間より頭1つ分くらい高く、その分リーチも長い。体重は人間の3倍から5倍、力も3倍から5倍はある。
 オーダーメイドの『アイアン』は『普通』と仁が評しはしたが、それでも警備ゴーレムよりも性能は高い。騎士隊長だからこそ互角に切り結んでいられるが、ただの隊員では無理だろう。

 等、等、等。
 広間は混沌に支配され、悲鳴と金属音、鉄の臭いが入り混じる凄惨な地と化していた。
 ほとんどの参加者は負傷し気絶するかしており、運の悪かった者は既に息が無かった。

 そんな中、ようやく反撃が開始されようとしていた。
 場面がころころ変わっていますが、これでもまだ最初の攻撃(書き換えの工学魔法)があってから2、3分です。

 お読みいただきありがとうございます。

 20131205 12時05分 誤記修正
(誤)書き込み《ライトイン》
(正)書き込み(ライトイン)

 20140109 21時33分 誤記修正
(誤)数10
(正)数十
(正)
+注意+
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