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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

1399/1503

38-08 森羅氏族領

 第2回『世界会議』も成功裏に終了。
 参加者はそれぞれ飛行船で国へ帰っていった。
 仁も『コンロン3』で蓬莱島に戻る。

 そして1月23日。
「じゃあ、行くとするか」
 仁は『ヴァルカン』を見上げて言う。つい昨日、任務を果たして戻って来たばかりだ。
 これから仁は魔族領へ向かう。『コンロン3』を使わないのは、冬の魔族領は気象条件が厳しいことと、ゴーレム馬を多数運搬する関係からである。
 同行者はエルザ、礼子、エドガー、アン、マキナ、レイである。
 事前にシオンとマリッカには連絡してあるので、まず向かうのは『森羅』の氏族領。
 ゴンドア大陸の南東部、その沿岸にある小さな湾だ。

 蓬莱島からわずか30分でゴンドア大陸に到着。
「早い」
「元々宇宙船だからな。秒速100キロを出せば10秒だぞ」
 冗談混じりに仁が言えば、
「それは大気圏で出していい速度じゃない」
 とエルザに突っ込まれてしまった。
「お父さま、そろそろ着陸です」
 礼子の声に魔導投影窓(マジックスクリーン)を見れば、もう地表はすぐそこだ。
 『森羅』氏族が遠巻きに出迎えている。が、皆驚愕に顔を引き攣らせているようだ。
 力場発生器フォースジェネレーターを使い、積もった雪を巻き上げることもなく『ヴァルカン』は着陸した。
 少々の凹凸は、伸び縮みする着陸脚が吸収するので、艦体は水平に保たれる。
「この辺の積雪は20センチくらいのようだな」
 沿岸部なので降雪量は少ないのである。
「よし、荷物を降ろそう」
 静止した『ヴァルカン』は、下部ハッチを開き、斜路を伸ばして地表へと続く道を作った。
 『ヴァルカン』の下部倉庫には、ゴーレム馬が収納されている。
 マキナとレイが2体のゴーレム馬に跨り歩き出すと、8体のゴーレム馬がそれに続いて動き出した。
 10体のゴーレム馬は整然と斜路を歩いて下っていく。
 同時に仁、エルザ、礼子、エドガー、アンは『ペガサス1』で森羅氏族のそばまで飛んだ。

「ようこそ、『魔法工学師マギクラフト・マイスター』」
 『森羅』氏族の長、バルディウスが仁たちに挨拶を行う。出迎えた他の者たちも頭を下げる。
「ご無沙汰してます。シオンたちから聞いているかと思いますが、お約束のゴーレム馬をまずは10体、持って来ました」
 仁も挨拶を返す。
 息が白い。日中だというのに気温は氷点下のようだ。
 ちょうどその時、マキナとレイが引き連れたゴーレム馬がそこに到着したのである。
「おお、これは素晴らしい! さすが魔法工学師マギクラフト・マイスターですなあ!」
 他の者たちも目を輝かせている。
「まずは運んでしまいましょう」
「そうですな」
 仁たちは除雪された道を歩き、森羅の氏族領に向かった。

 氏族領はしっかりした石垣に囲まれていた。
「すごいですね。いつ作ったんですか?」
「昨年秋に、ですな。寒風を防ぎ、獣の侵入も防いでくれます」
 ローレン大陸の人間の2倍から3倍の力がある魔族ならではだ。これに重力魔法を併用すれば、土木工事はさらに楽になるわけだ。
「それでもこれはな……」
 集落の周囲をぐるりと取り囲む石垣は、高さ3メートルはある。
 そして厚みも3メートルあって、土が詰められ、灌木が植わっていた。
「シオンのアイデアでしてな」
「これは丈夫でいいですね」
 単なる石積みではなく、草木を植えることで無骨さが和らいでいる。
 石垣の中に入ると、思った以上に広かった。
「いったいどのくらいの広さが?」
「ほぼ円形に囲んでおりますがな。直径1キロくらいでしょうか」
「それはすごい」
「これから住民も増えていくでしょうしな。広めに取ったのですよ」
「なるほど」
 食糧事情が改善したので、人口増加にも拍車が掛かるだろうと思われた。

 石垣の中は雪もなく、ゴーレム馬はとりあえず広場に置くことにした。
「さてと、まず……」
「あっ、ジン、いらっしゃい!」
 そこにシオンの声が聞こえた。
「これ、シオン!」
「あ。……よ、ようこそいらっしゃいました、ジン様」
 祖父であるバルディウスにたしなめられ、シオンは挨拶をし直した。
 その後ろからやって来たのはマリッカだ。
「いらっしゃいませ、ジン様」
「シオンもマリッカも元気そうだな」
「はい、おかげさまで」

 一通り挨拶を済ませた仁は、ゴーレム馬の引き渡しを行った。
 指導はマキナとレイ、アン、エドガーが行う。
「ここをこうすると歩き出し、こうやると止まる。これを曲げるとそちらへ進路が変わる」
「ここを開けると収納スペースがあります。小物や貴重品はここに入れるといいでしょう。もちろん馬の背中に積むこともできます」
「ほら、簡単でしょう?」
「なるほどなるほど」
「簡単な指示ならいうことも聞きます。『歩け』『止まれ』『右へ』『左へ』などですね。ソリや荷車を牽かせる時にはいいでしょう」
「ううむ、これはすごい!」
「整備箇所としては関節部分と蹄ですね。磨り減ってきたら修理、交換です。初歩の工学魔法で十分可能ですよ」
「わかり申した」
 そんな簡単なレクチャーで、森羅の者たちはゴーレム馬をすぐに乗りこなせるようになった。
「これはすごい!」
「快適ですね!」
 今回のモデルは、最高時速150キロ、オートバイ並みだ。
 魔族ならではの身体能力で乗りこなせるだろう。
 若い連中はさっそくゴーレム馬で遠乗りに出掛けたようだった。

*   *   *

「いや、ジン様、ありがとうございました」
 氏族長の家で仁たちはもてなされていた。
「同じゴーレム馬を他の氏族にも配るつもりです」
「いいですな。それで、マリッカに聞きましたが、対価はキュービックジルコニアでよろしいのですか?」
「お祖父ちゃん、それから毛皮、ね」
 シオンが補足をした。
 キュービックジルコニアは、ローレン大陸では重さあたりでいうと金と同程度。グラムあたり300トールの価値が付いていたのである。
 それを毎回10キロ仕入れている仁。時価300万トール、日本円でおよそ3000万円だ。
 十分に支払いの役に立つと言えた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170110 修正
(旧)いいですな。それで、マリッカに聞きましたが、代償はキュービックジルコニアでよろしいのですか?
(新)いいですな。それで、マリッカに聞きましたが、対価はキュービックジルコニアでよろしいのですか?
+注意+
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