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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-06 最終日

 『世界会議』3日目。最終日だ。
 各国首脳も、そうそう国を空けてはいられないのである。

「では、『世界警備隊』についての議論を行いたいと思います」
 議長である女皇帝が宣言し、会議は始まった。

「最初はマキナ殿が顧問として、皆を指導して下さる、ということでいいのでしょうか?」
 大前提として、組織を作り上げるところから始めなければならないのだ。
「指導はできると思いますが、やはりまずは幹部の育成から始めるのがよろしいかと思います」
 マキナが答えた。これは老君とも話し合って決めたことだ。
 まずは指導層を充実させてから、実際の仕事に従事する層を増やしていかねばならない、ということ。
「第一期生として、各国から2名の参加者を希望いたします。彼等は今後、『世界警備隊』幹部として働いてもらうことになると思います」
「なるほど……」
 マキナの提案に、各国首脳陣はそれなりに納得したようだ。
「だとしますと、その『第一期生』は、半永久的に『世界警備隊』勤務ということになりますね?」
「そうなりますな。最低でも数年単位での勤務でしょう」
「機密事項もあるでしょうし、守秘義務なども決めねばならないでしょう」
「本国との移動には『飛行船』がありますし、今後転移門(ワープゲート)が実用化すれば、帰国問題は解決しますな」
「『世界警備隊』幹部は生え抜きということですな」

 意見が百出したが、おおむね建設的な意見である。
 結局、幹部候補生として各国2名を参加させることが決まった。期間は1年間。
 その間はデウス・エクス・マキナが指導することになる。
 細かい規定などは追って草案をまとめ、向こう1年間の間に正式なものとしてまとめ上げることになる。
 世界で初めての試みであるため、最初から細かな規定を作ることはできなかった。

 こうして世界会議3日目の午前の部は終了した。

*   *   *

「おお、なかなか美味しいですな」
すする、というのがなかなか難しい」
「音を立ててもいいということですが、慣れないとどうも品がない気がして……」
 この日の昼食は麺類。

 そば、うどん、パスタ、そしてラーメン。
 ペリドたちの苦心の甲斐あって、ついにラーメンも完成したのである。
 そば・うどんはもり(ざる)とかけが用意されており、好きに選ぶことが出来る。
 半サイズにして色々食べ比べることもできるようにした。

「ううむ、このそばの風味がなんともいえませんな」
「わさび、でしたか? この鼻にツンと来る辛さ。しかし後に残らない爽やかさがいいですなあ」
「天ぷらを入れた熱いうどんもいいですぞ」
「いやいやこの『らーめん』、初めて食べましたが病み付きになりそうです」
「この『ちゃーしゅー』が気に入った!」
「ううむ、『世界警備隊』勤務になったら毎日こうした食事が食べられるのですかな?」

 等々、好評のようであった。

*   *   *

「皆さん、『世界会議』も残すところあと半日です。残された時間を有意義に使いましょう」
 という女皇帝陛下の言葉で3日目午後の部は始まった。
「議題につきまして、私から提案があります」
 と発言したのはクライン王国のアーサー王子であった。
「旧レナード王国について、今後どうするか、ということを話し合ったらどうかと思います」
 この発言には賛同する者も多かった。
「なるほど……確かに、今は放置状態ですからな」
「遺跡や鉱山が数多く残るあの場所を放置というのは世界的な損失ですな」
「話し合うことに異議はありません」
「では、旧レナード王国をこの先どうするか、について話し合いたいと思います」

「まず、王族もしくはその血筋は残っているのかね?」
「いや、それよりもなぜ滅亡したのか誰か知っているかね?」
 2番目の質問に答えたのはマキナである。
「はい。ちょうどいい機会ですから私から」
「マキナ殿、どうぞ」
「ありがとうございます。……ええと、昨年でしたか、フリッツ殿やグロリア殿が旧レナード王国を探検したことがありましたね?」

 3458年1月のことである。
 遺跡で見つけた『容器』内の謎の液体を廃棄したことにより、『もどき』と名付けられた強力な魔物が誕生したのである。
 それを撃退したのがマキナとレイであった。

「その後、独自に少し調査してみたのです。その際、旧王都で遺跡を発見し、それによりますとかの国は230年ほど前に『魔力性消耗熱』で滅びたようなのです」
 実際に調べた時期は、フリッツとグロリアが訪れた時より半年近く前であるが。

「なんと! 伝染病ですと? しかも『魔力性消耗熱』とは……」
 フランツ王国国王、ロターロ・ド・ラファイエットが嘆息した。

「……そういうわけで、生き残りはいないと思われます」
 ミロウィーナからは国を再興するつもりはないと明言されているし、カイナ村住人が旧レナード王国民の血を引いている可能性があるといっても確証はない。
「発表する機会を窺っているうちに、なかなか言い出せなくなってしまいました。その点はお詫び申し上げます」
 頭を下げるマキナ。そして、
「その遺跡がどこにあるかにつきましては、ご要望があればお教えできますので」
 と付け加えたのであった。
 あの遺跡の地下に眠るのは単なる『メッセンジャー』であった。何があったかを後世に伝えるために作られた魔導頭脳であり、技術的なことは何も知らなかったのだ。

「……うーむ、そういうことがあったとは」
 皆、少し考え込んでしまう。
「そうなりますと、誰のものでもない土地、となりますな」
 クライン王国国王アロイス三世が呟いた。
「ええ。実は、そういう土地ほど扱いが難しい。紛争の元になりかねないので、十分に気を付けるべきでしょう」
 と発言したのはセルロア王国国王セザール。
「そうですな。領土問題というものは常に存在する。国を思えば思う程に」
 クライン王国国王アロイス三世も同意した。

「自由な土地、とすると、今度は近い国が有利になります」
 敢えてこうした発言を、旧レナード王国から最も遠い、ショウロ皇国のマーヤス・クルダム総務相が口にした。

「分割統治、という方法もなくはないですが、やはり遠い国は不利になりますね」
「いっそ、レナード王国ではない国を興してしまえば……」
「その場合でも、誰が統治するのか、という問題があります」
「住民は各国から募ることになるでしょうが、それとて国によって人数が違うと、それはそれで問題になりそうです」
 本当に、この問題は難しいと、列席者は同様に感じていた。

 基本的に傍聴しているだけの仁であるが、一朝一夕に片付けられる問題ではなさそうだ、と再認識していたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20170107 修正
(誤)「『世界会議』幹部は生え抜きということですな」
(正)「『世界警備隊』幹部は生え抜きということですな」
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