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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-05 思い掛けない参加

 一応魔族領問題が片付いたので、次の議題は『転移門(ワープゲート)』である。
 といっても、一般人は技術的な説明を聞いても理解出来ないので、今後の運用を相談するという形になる。
「私としては、この『アヴァロン』と大陸を繋ぐ道に使ってもらいたいと思っている」
 セルロア王国国王、セザールが言う。
「今のところ200キロが精々なので、設置場所は我が国の南部、エゲレア王国南岸、エリアス王国西岸のいずれかに設置することになるかと思う」
 その後、改良が加えられれば全ての国に設置したい、とセザールは結んだ。

 次に発言したのはクライン王国のアーサー王子。
「セザール陛下のお申し出、まことにありがたいものであります。付け加えさせていただきますと、『アヴァロン』の受け入れ側には何らかの保安措置を設ける必要があるのではと愚考する次第です」
「それは侵入者対策という意味ですか?」
 エリアス王国のアルフォンス王太子が質問した。
「そうです。こうした場合、最悪の事態を想定しておくべきだと考えます。いかがでしょう?」
「うむ、ごもっとも」
「異議ありませんね」
 アーサー王子の意見に対する反論は出なかった。
「各国首脳が集まる場ですし、世界有数の技術が詰まった地でもあります。不審者の侵入を許してはなりませんね」
 仁は『しんかい』をそうした用途に用いているので、こうした措置の有用性を理解している。それで、
「そうですね。まずは専用のホールを作り、そこに設置。そのホールは厳重な警戒をし、場合によっては『アヴァロン』から切り離せるようにしておくのがいいかもしれません」
 と意見を述べる。さらにマキナの口を借り、
「あるいは『アヴァロン』の最下層という手もあるな。いざとなったら海水を流し込んでしまえるような」
 という意見も述べさせたのである。
「そ、それは怖いですな」
 とフランツ王国国王ロターロ・ド・ラファイエットが発言したが、それは全員同じ気持ちだったろう。

「とにかく、魔導大戦以前は『転移門(ワープゲート)』も一般に使われていた技術なのだから、再び利用できるようになることを望んでいる」
 セルロア王国国王セザールはそう締め括ったのであった。

*   *   *

「さて、実はもう1つ、お知らせ……といえばいいのか……紹介したい方々がいるのだが」
 セザールは全員の顔を見回したあと、議長である女皇帝に向かって発言した。
「この『世界会議』で是非紹介したいのだが、お許し願えるだろうか?」
 それに対し、女皇帝は常識的な答えを返した。
「どういう方々か、ご説明いただきませんと答えかねますね」
「ごもっとも。今回ご紹介したいのは『懐古党(ノスタルギア)』の重要人物で、顧問たる『黄金の姫君』エレナ嬢と、ナンバー2のドナルド・カロー殿のお二方です」
 それは仁も聞いていなかったので少し驚かされた。
「それはそれは。皆さん、いかがですか?」
 議長の女皇帝は、列席者の顔を見回すが、否やが出てくることはなかった。
「誰も異議はないようですので、ご紹介いただけますか?」
「わかりました。……私の従者に、『懐古党(ノスタルギア)』のお二方を連れて来るように伝えて下さい」
 セルロア王セザールは、会議場の雑用を務めるゴーレムメイドに伝言を委ねた。

 そして数分後、ゴーレムメイドに案内されて『懐古党(ノスタルギア)』の2人が会議室にやって来た。
「初めての方も、お会いしたことのある方もいらっしゃいますわね。私は『エレナ』。『懐古党(ノスタルギア)』の顧問をしておりますわ」
「私はドナルド・カロー。かつてはセルロア王国で『アルファ』の地位にいたこともある魔法工作士(マギクラフトマン)です」
 挨拶後、エレナはさらに言葉を続ける。
「このたびは、このように重要な集まりにお招きいただけたこと、そこまで信用して下さったことを心より御礼申し上げますわ」
 優雅な仕草でカーテシーを決めるエレナ。
 セザールが補足を行った。
「ドナルド殿は、かつての『アルファ』、我が国最高の魔法工作士(マギクラフトマン)であった。いや、今でもそうに違いないと私は考える。その彼が国の技術職を捨て、『懐古党(ノスタルギア)』のナンバー2になっていたということを聞き、最初は驚き、次に残念に思った」
 セルロア王国に仕えるよりも『懐古党(ノスタルギア)』の方が魅力的、ということに等しいからだ。
「……なんだか、申し訳ございません、陛下」
「はは、冗談だよ。……当時は私の父が王だったし、父は……あまり君にとってよい王ではなかっただろうからね」
「いえ、そんなことは……」
「……もうよそう。それよりも皆にアピールをしてくれ」
「それはエレナが」
 セザールとドナルドのやり取りが終わると同時に、エレナが口を開いた。
「お集まりの皆様、『懐古党(ノスタルギア)』顧問として、ご説明させていただきますわ」
 その声はよく響いた。
「『懐古党(ノスタルギア)』、すなわちいにしえに智の源泉を求め、未来に生かすための集団です。魔導大戦以前の世界は、今よりも魔法技術が進んだ世界でした。
その名残が今も残る古代遺物(アーティファクト)です。我々はそういった古代遺物(アーティファクト)を見つけ出し、解析することで少しでも過去の超技術を再現し、世の中に役立てたいと思っております」
 そしてぺこりと頭を下げた。
「ええ、存じておりますよ。あの『魔素通話器(マナフォン)』はとても役に立っています」
 女皇帝が各国首脳を代表して礼を述べた。

 『魔素通話器(マナフォン)』は対になる2台間での遠距離通話を可能にする魔導具だ、大きさは事務机くらい。
 仁たちが使う『魔素通信機(マナカム)』の前身である。

「ありがとうございます。本日は、その改良型を『世界会議』発足のお祝いとして持って参りました」
「改良型、ですか?」
「はい。大きさを小さくすることに成功しまして、机の上に置ける程になりました」
 その発言を聞いた誰かが称賛の声を発した。
「それは素晴らしい!」
「ありがとうございます。ですので、この『アヴァロン』と全ての国の間で通話ができるようにしたいと思います」
 『魔素通話器(マナフォン)』は対になる2台間での会話用であるから、各国には新たに『アヴァロン』用の『魔素通話器(マナフォン)』を。
 『アヴァロン』には各国用の『魔素通話器(マナフォン)』を設置する、ということになる。
「次の課題は通話先を選べるようになるといいですわね」
 エレナはそんな抱負を述べた。

 それを聞き、仁は『懐古党(ノスタルギア)』も頑張っているな、と感じていた。
 小型化は彼等の努力によるものだからだ。
 そこで仁は、思いついたことを発言させてもらうことにした。
「『懐古党(ノスタルギア)』の方々にも、この『アヴァロン』への出入りを今後許可し、そういった魔導具の研究成果を発表してもらったらどうでしょうか」
 さらにマキナからも提案をさせる。
「いずれここに『研究所』を開ければいいと思っている。その講師として協力してもらえたら嬉しい」
「いいですねえ、それ」
 クライン王国のアーサー王子が真っ先に賛成した。
「うむ、是非お願いしたいものだ」
 ドナルドの実力を知っているセルロア王国のラタント第一技術省長官も賛成した。

 2日目午後は、こうして過ぎていったのである。

*   *   *

「エレナ、これからもよろしく頼むよ」
「ええ、こちらこそですわ、ジン様」
 会議終了後、仁、マキナ、礼子、エレナ、ドナルドは小会議室で顔を合わせていた。
 仁も、今回の『懐古党(ノスタルギア)』紹介については聞いていなかったので、どういう意図があるのか、と聞いてみたかったのだ。
「ジン様方の負担を減らす、それが一番ですわね」
「また、我等も影の組織でいるより、表に出た方が活動しやすい面もありますので」
 エレナとドナルドがそれぞれ理由を説明する。
「確かにな。『世界会議』の下部組織として研究機関があってもいいからな」
 同時に教育ができたらなおよい。仁はそう思っていた。
 そんな腹案に、『懐古党(ノスタルギア)』の参加はぴったりだったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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