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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-04 議論と話題と提案と

 あけましておめでとうございます。
「……先王の時の出来事とはいえ、まことに遺憾である」
 ロターロ・ド・ラファイエット王は項垂れた。
「魔族とは、どんな者たちだったのですか?」
 エリアス王国代表の1人、アルフォンス王太子から質問が飛んだ。
「……姿形は我々と変わらない。男の方はやや色が浅黒く、焦げ茶色の髪と目。女の方は色白で銀髪、水色の目だったという」
「言葉は通じたんですね?」
「報告によれば、意思疎通にはまったく問題なかったようだ」

「どうやって捕らえたのですか?」
 今度の質問はクライン王国のアーサー王子から。
「食事に毒を盛ったのだ」
「毒……ですか。しかし、それを疑わずに食べたということは、こちらを信頼していた、あるいはしようとしていた、ということでは?」
 アーサー王子の言葉に、ロターロは苦笑した。
「そのとおりだ。その信頼を裏切ったわけだからな」

「その2名以降、魔族からの接触は?」
 再度エリアス王国のアルフォンス王太子。
「ない。……残念ながら」
 短く答えたロターロ・ド・ラファイエットは沈痛な表情をしていた。

 それからも幾つかの質問が出、ロターロ王は逐次それに答えていった。
「……では、質問もそろそろ終わりとします。そして、この問題はまさに『世界会議』で行うに相応しい議題だと思います」
 議長である女皇帝が宣言をした。
「魔族との問題を避け続けることはできません。今後どうしていくか、話し合いたいと思いますが、いかがでしょう」
「はい、議長」
 そこにエリアス王国のアルフォンス王太子が挙手をし、発言を開始した。
「まずは各国からの情報を全て発表してもらい、その後優先順位を設けて議論していくのがよろしいかと存じます」
「仰るとおりですね。いささか慌てていたようです。では、エリアス王国は何かございますか?」
「はい。……我が父である現国王、ブリッツェン・スカラ・エリアス12世は、ここ4年ほど体調が優れぬため病床についておりました。先年、『崑崙君』の奥方に病を癒していただきましたが、体力の衰えは隠せず、このたび、来たる3月1日に私が正式に王となることが決まりましたのでお知らせ致します」
「なんと、そうでしたか」
 ブリッツェン・スカラ・エリアス12世は病気というよりも虚弱体質であった。子供もアルフォンス王太子1人。
 病気ではないので、治癒師の手当も効果がなく、十分に政務を見ることができないため、譲位を決意したということであった。
「なるほど、それでは即位式には出席せねばな!」
 クライン国王、アロイス三世が明るい声で言うと、周りの者たちも同じように参加を表明した。

「エゲレア王国としては……」
 ハロルド・ルアン・オートクレース=エゲレア国王が口を開き、ちらとクライン王国国王、アロイス三世を見た。
 アロイス三世が小さく頷いたのを確認すると、
「このたび、我が息子アーネストと、クライン王国第3王女、リースヒェン・フュシス・クライン王女殿下との婚約が正式に取り交わされたのでここにお知らせするものである」
「おお!」
「それはめでたい!」
 暗い話題が続いた——アルフォンス王太子の即位は明るい話題と言えるが、現王の容態があまりよくないという裏があった——ところへこの発表は、一服の清涼剤であった。
 仁も、あの2人がついに……と、感無量であった。

*   *   *

「おお、この味! やはりいいですな」
「同じ味が出せないのですよ」
「パンが違うのでしょうな」
 時間的にちょうど昼食となった。献立はサンドイッチとパスタである。
 挟む具を変えることで飽きが来ないサンドイッチは今回も好評だ。

「このパシュタは、一地方の特産でして」
 トカ村でリシアたちが作り出した味である。
 今回仁が出したのはペペロンチーノもどき。
 オリーブオイルが手に入らなかったのでバターと丸豆(大豆)油を使った。
 あとはニンニクの代わりにヤマネギ(ギョウジャニンニク)の根、唐辛子の代わりに胡椒。そして醤油一垂らし。
 『どこがペペロンチーノだ!』とお叱りを受けそうなレシピである。
「おお、これは美味い!」
「洒落た味わいですね」
 だがこちらも好評のようだ。
 シトランジュース、アプルルジュースなども評判がいい。
 参加者たちは一時、憂い、憂さを忘れて『アヴァロン』という別天地を満喫したのである。

*   *   *

 2時間の休憩の後、午後の会議が始まった。

「ではまず、『魔族』についての話し合いをしたいと思います」
 議長であるショウロ皇国女皇帝が宣言した。
「まずは情報が必要です。魔導大戦以降の『魔族』について知っていることがありましたらお話し願います」
「では」
 ここで仁が挙手をした。
「3457年、自分の妻、エルザの実父である、当時子爵であったゲオルグ・ランドル殿の配下にマルカス・グリンバルトという魔法技術者(マギエンジニア)がおりました。彼は魔族に操られ、毒を用いてゲオルグ・ランドル殿と、ゲーレン・テオデリック侯爵の身体を害しておりました」
 これについては知っている者も多く、秘密ではない。
 が、情報に正確を期するため、当事者の1人であった仁が話すのが一番いいと判断したのである。
「彼を操っていた魔族の名はマルコシアスといいます。逃げおおせており、捕まっておりません」
 ここで仁は言葉を一旦切った。
 初めて聞いた者も多く、印象を消化する時間を取ったのである。

「もう1つ、知るところをお話しいたします」
 人々のざわめきが静まるのを待って、仁は再度口を開いた。
「クライン王国にも魔族の影は現れました。それは、まずワルター伯爵に接触し、伝書鳩を用いて『魔力性消耗熱』を蔓延させたのです」
「おお、覚えておるぞ。あの時はリシア・ファールハイトとパスコー・ラッシュが活躍したとも報告を受けておる」
 アロイス三世が仁の発言を裏付けた。
「はい。その時、謎の男が、伝書鳩に何か細工をしたらしいと、当時の執事から話を聞き出しました。どうやらその男が魔族だったようです」
「なんと、そうであったか」
 仁はカイナ村の領主であるから、関係筋への聞き取りを行ってもおかしくはない。
 それ以上にアロイス三世は仁の情報力と目の付け所に感心した。
「……以上が自分の知るところです」
 仁が話し終えると、各国首脳の意見は分かれる。
「ふむ、好戦的かと思うと、友好を望む、か」
「内部分裂……でしょうか?」
「油断させておいて……ということも考えられますぞ?」
「いや、我々もそうだが、幾つかの派閥があるのでは?」
 このままではいつまで経っても話はまとまらないと見た仁は、
「……これにつきましては、自分とマキナに任せていただけないでしょうか?」
 と提案した。
「マキナと共に魔族領へ行き、真相を確認して報告いたします」

「ううむ……ジン殿とマキナ殿なら間違いはなかろう」
「よろしくお頼み申す」
「よろしくお願いします」
 こうして、仁は改めて魔族領との橋渡しをすることとなったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。本年もどうぞよろしくお願いします。

 20170105 修正
(旧)「それはおめでたい!」
(新)「それはめでたい!」

(旧)我が父である現国王、ブリッツェン・スカラ・エリアス12世は、ここ4年ほど体調が優れぬため病床についております。
(新)我が父である現国王、ブリッツェン・スカラ・エリアス12世は、ここ4年ほど体調が優れぬため病床についておりました。先年、『崑崙君』の奥方に病を癒していただきましたが、体力の衰えは隠せず、
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