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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-03 情報発表

 2016年最後の更新です。
 皆様、1年間ありがとうございました。
 『世界会議』2日目。
「本日の議題は、まず『情報交換』としたく思います」
 議長であるショウロ皇国女皇帝が宣言した。
 その言葉どおり、まずはショウロ皇国から正式発表がある。

「まずは、マーヤス・クルダム・フォン・スキラ殿、お願いします」
「では」
 ショウロ皇国総務相、マーヤス・クルダム・フォン・スキラが発言を開始した。
「我が国では西方にハリハリ沙漠があり、そのさらに西に異民族が住んでおります」
 このあたりは既知の内容である。
「我が国では、隣接する国家として、本年1月12日、国交を結びました」
 どよめきが会議場に広がる。
「正式な国交ですか」
「ついに!」
 とはいえ、『魔素通話器(マナフォン)』により、仮の国交を結んでいることは、昨年のうちに事前に通達してあったので。驚きの声ではない。
 また、過去の侵略の意志、というものが誤解に発することも理解を得ていた。
「はい。『ミツホ』というその国は『王』がおりません。代わりに……」
 ミツホの政治形態を説明する女皇帝。列席者は興味深そうに耳をそばだてていた。

「なるほど、まさにこの『世界会議』のやり方を国の運営に用いているのですな」
「だが、緊急の場合には会議を行って決定していたのでは間に合わないこともあるのでは?」
 クライン王国代表の1人、アーサー王子が発言した。なかなか鋭い意見である。
「そのために、一定の権限を『首長』が持っているようです」
「なるほど」
「とはいえ、我々もそれに倣う必要があるとは思っておりません」
「そうですな。我々の政治形態にも、長い歴史があるわけで……」
「よいところは取り入れ、悪いところは取り入れず、改良していけば……」
 統治形態について、多数の意見が飛び交った。
 議長であるショウロ皇国女皇帝は、適当なところで意見交換を一旦止めさせる。
「活発なご意見、まことに結構ですが、今は先に進みましょう」
 本来はミツホ国の紹介である。
「できますならば、次回の『世界会議』にはミツホの首長、『ヒロ・ムトゥ』氏をお招きしたいと考えておりますが、いかがでしょう」
 総務相が言葉を続けた。
「問題ないですな」
「むしろ歓迎したく思います」
 など、概ね歓迎されそうな結果となった。
 これも仁の満足できる内容である。
 とはいえ、事前にヒロ・ムトゥにもう一度会って、仁の顔を見ても初対面の振りをしてもらうよう伝える必要がありそうだ、などと考えていた。
 だが。
(いや、正式な国交というなら、俺が単独で訪れてもいいわけだ……そうだ、そうしよう)
 もっといい考えが浮かんだ仁は、そのことを心に刻み込んだのである。

*   *   *

 次の発表はセルロア王国からであった。
 発言者は国王、セザール・ヴァロア・ド・セルロアである。
「我が国からは朗報であります」
 何だろう、という顔を列席者が浮かべる、そのタイミングを見はからって、
「ついに『転移門(ワープゲート)』の再現に成功いたしました!」
 という爆弾宣言を行ったのである。
「な、何ですと!」
転移門(ワープゲート)!!」
「そ、それは!」
 各国首脳陣は驚愕を顔に浮かべていた。
「記念式典の際、地下に転移門(ワープゲート)があったことを覚えておられる方も多いと思う。あれを慎重の上にも慎重に解析を行ったのだ」
 魔法工学が進んだセルロア王国だからこそできたのだろう、と仁は思った。
「とはいえ、いろいろと問題もある」
 ざわめきが収まるのを待って、セザールは説明を続けた。
「まず、大量に魔力素(マナ)を喰う。そのくせ、転移できるのは人間2人くらいだ」
「それでもたいした進歩ではないですか」
 誰かが言った。
「まだある。転移できる距離も限られており、今のところ200キロがせいぜいだ」
「これから改良していけばいいではないですか」
「もちろんだ。これが完成すれば、世界への大きな貢献になるだろう」
「ジン殿やマキナ殿に協力してもらったらいかがか?」
 フランツ王国国王のロターロ・ド・ラファイエットが発言した。
「それも考えた。が、当分は我が国だけでやらせてほしい」
 発見した国で、できる限りのことはやってみたい、ということ。その心情もわかるので、それ以上の発言はなかった。

「ですが、非常に楽しみではありますね」
 議長のショウロ皇国女皇帝が締め括った。

*   *   *

 3番目の発表はフランツ王国であった。
「ええとですな……我が国の恥をさらすことになるのでどうすべきかと国内で揉めたのですが」
 いきなりおかしな切り出し方で始まった。
「人類全体の問題でしょうから、この場で発表することに決めました」
 皆、何を言い出すのか、興味津々である。
「3457年の夏のことです。その頃の王はリジョウン・ド・バークリーでしたが……」
 何があったか、仁は見当が付いた。
「北の地からやって来た民族がいたのです。……いや、はっきり言いましょう『魔族』です」
「何ですと!!」
「魔族!?」
「魔族ですって?」
 場は一時騒然となる。
 無理もない、300年前、存亡をかけての大戦を行った相手なのだ。
「……お静かに! まずはお話を聞きましょう」

「ことの起こりは、2名の『魔族』が北部のイーナクという町にやって来たことでした」
 若い男女の魔族で、その時1人は、
『戦いは双方に憎しみをもたらし、土地は荒れ、人心は荒廃する。国力は落ち、人々は塗炭の苦しみに喘ぐことになる』
 などという言葉を口にしたと、現国王ロターロは説明した。
 これは仁がカトリーヌ・ド・ラファイエット、すなわち現国王の母から聞いた内容と一致する。
 その言葉を一顧だにすることなく、イーナクの代官であったクターガ・アクターは2人を歓待するように見せかけ、毒を盛ったのである。
「その2名は、護送中に殺害された。魔族を憎む一派の仕業と言われている」

「……」
「……」
 その結末を聞いて、列席者は言葉が出ないようだった。
 交流……少なくとも話し合いを求めてやって来た者を、『魔族』というだけで騙し、捕らえ、あまつさえ殺害という結末に至ったことを、『世界会議』列席者はどう思ったのであろうか。
「残念なことですね」
 議長である女皇帝が発したその短い言葉には万感の想いが込められており、それは列席者皆が感じたことであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 2017年の更新は1月5日からを予定しております。
 また、1月1日から4日は、『マギクラフトマイスター スピンオフ』の方にスペシャルを投稿しますのでよろしければお楽しみください。

 それでは少し早いですが、皆様、よいお年をお迎えください。
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