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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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38-02 夕食会

 仁は礼子と共に『アヴァロン』内を見回っていた。
 談話室を覗き込んだ時。
「あ、ジン様、お久しぶりです」
「ええと、リアンナさん?」
「はい。このたび、『アヴァロン』担当になりました」
 王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイド第2班班長であったリアンナ。護身術の達人である。
「それは栄転……なのかな?」
「もちろんでごさいますとも。我々第2班がそのまま移籍となる予定でございます」
「2班というと……」
 かつてエゲレア王国に行った際に出会った王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイドたち。
「はい、メアリ、ケイト、リーザの3人でございます。今回は私のみ同行させていただいております」
「ライラは王子殿下付きになったんだっけね」
 あと1人、仁の担当をしていたライラ・ソリュースは第3王子付きとなっているので『アヴァロン』には来ないという。
「はい。……それから、今回の会議、殿下も同行を御希望なさっていらっしゃったんですが許可されませんでした。それでジン様によろしく、と伝言をお預かりしております」
「そうですか、ありがたいことです」

 その後仁は、奥の方に見知った顔を見つけた。
「ジン殿か。ご無沙汰している」
 パスコー・ラッシュである。
 かつてクライン王国を襲った『魔力性消耗熱』の特効薬輸送にリシアと共に従事したラッシュ男爵家3男。
「このたび見習いから騎士になったのでな。その節は色々とその、……失礼した」
 軽く頭を下げたパスコーに、仁は随分変わったな、と思う。
 以前は悪い意味で貴族らしい傲岸さが表に出ていたものだが、今は礼節がそれを上回っているようだ。あるいは仁のことを知るにつれ、ぞんざいに扱えないことを実感したのかもしれない。
「この『アヴァロン』をマキナ殿と共に整備されたと聞く。その手腕には敬意を表したい」
「ありがとうございます」
 丁寧な言葉を掛けられた仁も丁寧に返す。

 その時。
「ご夕食の仕度ができましてございます」
 と、『サフィ1』が告げたのである。
 談話室にいた人々が一斉に立ち上がったので仁はお、と思う。
 実際のところ、前回の『世界会議』のときに饗された食事の評判がよかったので、今回も期待が高まっていたのである。
 前回食べた者はもちろん、今回初めて参加した者も口コミで評判を聞き、期待しているというわけだ。

*   *   *

「おお?」
「これって何?」
「これは一体……」
 今回饗されたメインの一つは『魚肉練り製品』。
 魚のすり身に食塩を加えて練って整形した後、熱して固めた食品である。

「魚を加工して作りました」
 提供者である仁が説明する。
 実際、蓬莱島の家事担当であるペリドたちが試行錯誤し、適する魚類を選定したのである。

 主に海水産の白身魚を用い、塩を加えて練ることで粘りが出る。この時、僅かにデンプンを加えることで食感を調えている。

 今回作ったのは『焼きちくわ』『つみれ』『カマボコ』『加賀揚げ』。
 それぞれ練った後に『焼く』『茹でる』『蒸す』『揚げる』という加熱加工を施したものだ。
 仁がそれを説明すると、おお、という声がそこかしこから上がる。

 そしてもう一品。
「こ、これは……?」
「……香りはいいな」
「いったい何の肉だ……?」
 もう一品、新しい料理が並んでいた。
「それは『蒲焼き』といいます。クライン王国産の『竜頭ウナギ(ドラゴニックイール)』の稚魚の肉です」
「なんと!」
 竜頭ウナギ(ドラゴニックイール)は成魚になると体長3メートルを超え、肉も固くて食べ難くなるが、1メートルに満たない稚魚の肉は、地球のウナギによく似て美味しいのであった。
 これもまた、蒲焼きのタレをペリドたちが苦心して再現し、今回が初お披露目である。
竜頭ウナギ(ドラゴニックイール)の稚魚は大量に捕れますしね。絶滅させないように気を付ければ、いい食材になり得ますよ」
「ううむ、脱帽だ」
 生の川魚が好きなアロイス三世も、竜頭ウナギ(ドラゴニックイール)の蒲焼きには舌を巻き、同時に舌鼓を打ったのであった。

 もちろん、他の者たちも例に漏れず、蒲焼きを堪能している。
「この匂いは食欲をそそりますね」
「お好みでこれを掛けるとさらに美味しくなりますよ」
 仁は小さな入れ物に入った粉を振りかけて見せた。
「ハジカミ、といいます」
 サンショウの粉である。
「おお、これはまたよい香りがする」
「胡椒とも違う香りですな」
「他の料理とも合わせてみたいものです」

 集まった人々は蒲焼きに、練り物に、舌鼓を打っている。
「さて、こういう料理にはこれをお試し下さい」
 出された酒は『日本酒』。魚料理にはめっぽう合う。
「この酒も、単独では甘いと思いましたが、料理と合わせると絶品ですな」
 ワイン好きのラインハルトにも試飲してもらい、太鼓判を押された一品である。来賓が気にいるのもむべなるかな、であった。

「絶世の味、ではないと思いますが、『優しい味』ですな」
 ある者は練り物をそう評した。
「毎日食べても飽きにくい。兎角、美味いものは飽きがきますからな」

 前回に引き続き、お米のご飯も好評である。
「ううむ、炊き方が違うのですかな。我が家ではこうはいきませんな」
「炊く直前に精米するといいかもしれませんよ」
 白米を好む貴族も増えてきている。
 米の収穫量もここ2年で倍加したようで、仁としても嬉しい限り。
 もちろん小麦を使った美味しいパンや麺類も大歓迎である。

「おお、来た来た。前回食べたこれが忘れられん!」
 ミソスープ=『味噌汁』を気に入っていた者。
「私はこれがまた食べられて嬉しいですよ」
 肉トポポ=『肉じゃが』も好評である。

 夕食会は和気藹々と過ぎていった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 お知らせ:2016年の更新は12月27日までとなります。
      2017年は1月5日から通常更新の予定です。
   そして新年スペシャル(仮称)を1月1日から3日まで(ただ今執筆中、長くなったら4日まで)をスピンオフにて更新いたしますので是非お楽しみください。
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