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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

38 アヴァロン篇

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1392/1685

38-01 世界会議発足

 3459年1月20日。
 この日はローレン大陸の国々にとって記念すべき日となった。
 『世界会議』第2回が開催されたのである。事実上の発足といってもいい。
 クライン王国、フランツ王国、エゲレア王国、エリアス王国、セルロア王国、ショウロ皇国。
 参加した各国では、その日を『平和記念日』として後世に伝えることとしたのである。

 その『世界会議』が開かれるのは、エゲレア王国の南、エリアス王国西の海上に浮かぶ巨大な人工浮島。
 『アヴァロン』と名付けられたその浮島は、仁の手によって整備が進められ、『世界会議』の拠点としてこの日正式に運用され始めたのであった。

*   *   *

「皆さん、お集まり下さいましてありがとうございます」
 発起人として『デウス・エクス・マキナ』が丁寧な言葉で挨拶を行う。隣にはパートナー『レイ』の姿もある。
「本日は第2回『世界会議』がこの『アヴァロン』にて開催されるということで、仮の議長をさせていただきます」
 まずは正式な議長が決まるまで、マキナが仮の議長を務めることになる。
「議長候補と致しまして、各国代表から一名選んでいただきます」

 仁は副顧問として出席している。
 会議の様子を眺めながら、ついにここまで来た、と感無量であった。
(先代の夢だった魔法工学の聖地作りも、これで進めることができそうだ)

「……では、全員一致で、初代議長はショウロ皇国の皇帝陛下、ゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビース・ショウロ殿に決定いたしました」
 満場の拍手。
 仁が物想いに耽っているうちに、議長の選出が終わっていた。
 初代議長はショウロ皇国の女皇帝である。
「ではこれより議長はゲルハルト殿にお任せしたいと思います」
 マキナは一礼すると席を立って、『議長』と書かれた机上札を手ずから女皇帝の前に置いた。
 因みに、席は完全な円形に並んでおり、上座・下座は存在していない。

「皆様に推薦されたゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビース・ショウロです。非才な身なれど、精一杯務めたいと思います」
 一礼し、言葉を続ける。
「では、続きまして副議長と書記を決めたいと思います」

 こうして、まずは役職を決めることから『世界会議』は始まった。
 副議長はクライン王国のアロイス三世。書記はマキナの従者、レイが務めることとなった。
 そして本格的な会議が始まる。
「それではこれより、この『世界会議』の『理念』を成文化していきたいと思います」
 真っ先にやらなくてはならないこと。それは『世界会議』のあり方を明確にすることである。

「それでは時計回りに各自発言をお願いします」

 蛇足だが、アルスでも『時計回り』は現代地球と同じである。
 これは、『日時計』の影が動く方向を『時計回り』と呼んだことによる。

「世界会議は、全ての友好国の参加の下に行われる」
「世界の平和と安全を維持することを目的とする」
「すべての加盟国は平等である」
「加盟国各国は1名以上のメンバーを選出し参加させるものとする」
「各国は、一票の投票権を持つ。それ以上でも以下でもない」
「各国は、世界会議を運営するための分担金を支払う」
「各国内・各国間で紛争が起きた場合は、世界会議が交渉・審査・仲介・調停を優先して行い、武力行使は最後の手段とする」
「世界会議の補助機関として『世界警備隊』を設ける」

 等々意見が出された。
 それらは順に審議され、検討を加えられて条項となっていく。
 1日目は条項を決めることで終了した。

*   *   *

「お疲れ様でした、陛下」
 会議室から退出する面々を、警護の者たちが出迎え、それぞれの宿泊室へと向かう。
 そんな中、マキナとレイは一番最後に会議室を後にした。
 後片付けは『アヴァロン』専属のゴーレムメイドが行っている。
 彼女らは5色ゴーレムメイドとほぼ同型であるが、目の色は異なり、言わば『6色目』だ。
 材質は青銅なので強度・パワーもそれなりしか出せないが、それでも世界標準の遙か上を行っている。 
 名前は『サフィ』。深い青、サファイア色の瞳を持つゆえに。
 『サフィ1』から『サフィ100』までおり、1がリーダーである。
 彼女らは仁とマキナからの寄贈品、という扱いだ。

 もちろん、仁やマキナだけではない。
 ショウロ皇国からは会議用テーブルと椅子一式、記録用木紙10年分、それに施設用の建材が。
 セルロア王国からは『アヴァロン』護衛用のゴーレム20体が。
 エゲレア王国からは宿泊棟用の家具・寝具50組が。
 フランツ王国からは100人が1ヵ月食べていける保存食、それに飲料水が。
 エリアス王国からは今回の会議期間中の食糧として小麦、海産物、そしてトポポ(ジャガイモ)が。
 クライン王国からは鉱石、魔結晶(マギクリスタル)魔石(マギストーン)などの素材が。
 それぞれの国の特産品を中心にして寄付されていた。
 また、ここの厨房をはじめとする施設で働く者も順次選定されていくだろう、ということだ。

 こうした寄付……というか負担金、いや『負担物資』も、今後決まって行くであろう。
 『世界会議』は各国の善意で動かしていくのである。

*   *   *

「ううん、こうしてみると海の上ということがわかるな」
 時刻は午後5時。冬とはいえ、北回帰線よりも南にある『アヴァロン』ではまだ日が沈んでいなかった。
 そんな『アヴァロン』の西のへりで手すりにもたれながら、エルザの実兄フリッツは夕陽を眺めていた。
「おや、フリッツ殿」
「うん?」
 声に振り向けば、明るい茶色の髪が海風に揺れていた。
「グロリア殿、久しいな。元気そうで何より」
「フリッツ殿こそ」
 グロリアはフリッツの隣にやって来て、手すりにもたれかかった。
「海とは広いものだな。我が国には海はないから、こうして見る機会があるとつい眺めに来てしまう」
「はは、そういうものか」
 それから2人はしばらく無言のまま、沈み行く夕陽を見つめていた。

「……グロリア殿は『世界警備隊』に参加されるのか?」
 不意に、フリッツが口を開いた。
「うむ、希望はしている」
「そうか。俺もだ」
「ふふ、共に勤務できるといいな」
「ああ」
 そしてまた会話は途切れ、2人は空に星が輝き始めるまでそこに佇んでいたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161225 修正
(誤)エリアス王国西の海上に浮かぶ巨大な人口浮島。
(正)エリアス王国西の海上に浮かぶ巨大な人工浮島。
 orz
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