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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-28 引きこもり

『そこに非常用通路がありますので、1フロア上へ』
『次の分岐は右です』
『細い通路を直進したら左へ』
 最早遠慮はいらないと、『ヴァルカン』は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で衛星『クーナ』内部を調査しており、その情報を元に仁Dと礼子は中心部を目指していた。
『中心部付近は障壁(バリア)があって『覗き見望遠鏡(ピーパー)』でも覗けません。お気をつけて』
「わかりました。ありがとうございます」
 仁Dと礼子は中心部を目の前にしていた。

「結界か」
「この奥に引き籠もっているんでしょうね」
 今、仁Dと礼子の目の前には、銀色の淡い光を放つ結界の壁が立ち塞がっていた。
「おそらく反射系の結界だな」
 銀色ということは可視光を反射しているということだ。
 その他にも紫外線や熱線も跳ね返すだろう。
「物理攻撃はどうかな?」
 仁Dは、先程拾っておいたゴーレムの破片をポケットから取り出し、結界目掛けて放り投げてみた。
 それは放物線を描いて結界にぶつかり、そのまま真下へと落下する。
「ほう」
 運動エネルギーを全て吸収したらしい、と仁は思った。珍しい作用をする結界だ。
「こういう場合は吸収しきれないほどの物理エネルギーを加えるか……」
 と仁Dが口にしたところで、礼子がその結界をちょこん、と叩いていた。そして。
「ああ、本当に勢いが殺されるんですね」
 と言うが早いか、フルスイングのストレートを繰り出したのである。
 そんな礼子の拳は、結界に半分ほどもめり込んでいた。そしてどこかでばきん、という音が響く。
 そして結界が揺らぎ……消えた。
「20パーセントの力だったのですが……」
 事もなげにいう礼子であった。

*   *   *

「やはりヘール人は争いごとが苦手なんだろうな」
 蓬莱島では仁が老君と共に、これまでのデータを分析していた。
『はい、御主人様(マイロード)。あのホールでの魔法攻撃も、目新しいものはありませんでしたし』
 これまで仁と礼子、蓬莱島が相手にしてきた敵の攻撃と大差なかった。いやむしろ劣っているものさえあったのだから。
「敵そのものがいなければ、武力も発展しない、か」
『そういうことだと思います』
 よくも悪くも、アルスでは争いごとが多く、必要に迫られ、戦闘技術も発展している。
「だが『オノゴロ島』の連中はもう少し強かった気もするぞ?」
『それはアルスでデータを集めた結果ではないでしょうか』
「それはあるかもな」
 環境で変わる、というのはごく当たり前のこと。アルスで長い時を過ごしたヘール勢は、既に別物といってよいのだろう。

「よし、先へ行こう」

*   *   *

 結界が消えたその先は、明るく照明された通路だった。
「なんというか、空気の匂いも違うな」
「はい、より清浄といいますか……」
 この先に『主人』がいるとしたら、その者のための環境整備なのだろう、と仁は推測する。つまり目標はこの先にいる。
「会ったら色々聞いてみたいよなあ」
 生粋のヘール人。何を考え、どんなことを思っているのか。
「そして共存できたらいいんだが」
 仁自身は少々思うところはあるが、アルスの人類にとっては同胞というか祖先の子孫であり、同族であることは間違いない。
 恨みを抱いているわけではないので、友好は結べるだろう。
 床は塵一つ落ちておらず、軟らかな素材は足音も吸収する。
 だが、何の反応もない。
「このままじゃ『アジェンテ』は引き籠もったままだろうな。どうするか……」

*   *   *

御主人様(マイロード)、私に一つ案があります』
「うん、聞かせてくれ」
『はい。『ヘレンテ』に行ってもらうのです』
「なるほど、そういうことか」

 『ヘレンテ』は『オノゴロ島』のゴーレムである。
 『オノゴロ島』は元々ヘール人が作った基地であるから、そこのゴーレムである『ヘレンテ』が行けば、もう少し話になるかもしれない。
 マリッカを連れて行ければいいのかもしれないが、まだ未知の状況も多く、仁自身が行っていないのに彼女を送り込むわけにも行かない。
 ここは『ヘレンテ』が適任であった。
「さっそく使いを遣って呼んで来よう」
『私——『老子』が行ってまいります』

*   *   *

《なるほど、興味深い話だ》
 老子は転移門(ワープゲート)を使って『オノゴロ島』へ行き、すぐに『テスタ』、そして『ヘレンテ』と話し合いを行った。
《何か事態が進展するかもしれない、というのだな?》
「そういうことです」
《ふむ、よろしい。行こう》

 簡単な話し合いで『テスタ』も『ヘレンテ』も事態を理解し、納得してくれた。

*   *   *

 『ヘール』への移動も短時間で済む。
 『ペガサス1』内の転移門(ワープゲート)に出た『ヘレンテ』と老子。
「では行きましょう」
《うむ》
 礼子の目を通じ、また『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見て、道順は記憶している。老子は『ヘレンテ』を導いて歩き出した。
 仁Dと礼子が辿った道筋を正確にトレースする。
 エレベーター部分は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見た非常階段を使って回り込んだ。
《ふむ、興味深い設計だ。確かに、『オノゴロ島』と共通するところがある》
 『ヘレンテ』は観察しながら歩いて行く。
 『声』、つまり『主人代理(アジェンテ)』は何も反応を見せなかった。

 やがて、仁Dと礼子が襲われたホール前までやって来た。
 扉は当然開かない。
「時間が惜しいので力ずくで開けましょう」
 老子の力も、礼子の5分の1くらいはある。
 扉に手を当て、80パーセントほどの力を込めると、扉は歪みながら開いていった。
「さあ、行きましょう。この先に礼子さんたちは待っているはずです」
《うむ》
 老子と『ヘレンテ』は先を急ぐのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20171211 修正
(誤)蓬莱島では、仁が老君と共に、これまでデータを分析していた。
(正)蓬莱島では仁が老君と共に、これまでのデータを分析していた。
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