挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

1384/1567

37-26 狂信者

 ホール内の空気は、確かに呼吸可能だった。
 気圧はほぼ1気圧。温度は摂氏10度くらいだが、エアロック内であることを考えれば低すぎるということはない。
 重力もほぼ1G。やはりこれがヘール人の標準なのだろう。
〔こちらだ〕
 ゴーレムはそれだけ言うと、身を翻して奥へと2人を導いた。
 これもまたエアロックになっている扉を抜けると、『衛星』の内部だった。
 壁と天井は金属製だったが床は樹脂製、滑りにくく、足音もほとんどしない。
「どこへ行くんだ?」
 仁の分身人形(ドッペル)(=仁D)が尋ねると、ゴーレムは簡潔に答える。
〔『主人代理(アジェンテ)』のところだ〕
「アジェンテ?」
〔そうだ。この『クーナ』の全ては『主人代理(アジェンテ)』が管理している〕
「この衛星は『クーナ』というのか」
〔そうだ〕
「お前の名は?」
〔私に名はない。識別番号は1402〕
「では1402と呼ばせてもらう」
〔好きにするがいい〕
 話をしながらも1402は歩みを止めない。
〔乗れ〕
 エレベーターらしき部屋に足を踏み入れると、僅かな振動と共に重力が少し増えた。つまり『上へ』昇っているのだ。
 『ペガサス1』が収容されたホールは『クーナ』の下部だったので、より中心に近い場所へ向かうのだろう。
 20秒ほどでエレベーターは停止する。
〔降りろ。こっちだ〕
 1402はエレベーターを出てさらに歩いて行く。仁Dと礼子は黙ってそれに付いていった。
(まだ中心部ではなさそうです)
 礼子が内蔵魔素通信機(マナカム)によって蓬莱島の仁と老君へ報告した。
(『とにかく様子を見よう』)
(わかりました)
〔ここだ。入れ〕
 そこは明るく照明された部屋で、大きさは学校の教室くらいだった。
 中には1402と同じ型のゴーレムが3体。
 仁Dと礼子が入ると同時に扉が閉まる。そして『声』が聞こえてきた。
《ようこそ、来訪者。私はこの『クーナ』を総轄する『主人代理(アジェンテ)』だ》
「アジェンテ、と呼べばいいのか?」
《構わない》
「いろいろと聞きたいこともあるんだが……」
《こちらもそうだ。だが、まずは言うことを聞いてもらおう》
 1402を加えて4体のゴーレムが動き、仁Dと礼子をそれぞれ2体が両脇から押さえつけたのである。
「何をする!?」
《言うことを聞いてもらおう、と言ったはずだ。何、どうということはない。私に逆らえなくするだけだ。意志は残しておいてやる》
 アジェンテがそう言うと、壁の一部が開き、2体のゴーレムが現れたのである。それぞれ『支配装置(ビヘルシャー)』を手にしている。
「我々を操り人形にする気か!?」
《万が一のためだ。悪く思うな》
「冗談じゃないぞ!」
《『主人』のためだ。受け入れろ》
 話が通じない。
 こういうこともあるかとは想定していた仁は礼子に指示を出した。

(『仕方ない。礼子、拘束を振り解き、『支配装置(ビヘルシャー)』を破壊しろ』)
(はい、お父さま)
「放しなさい!」
 礼子は腕を一振り、2体のゴーレムを振り解くと、続いて仁Dを押さえていた2体を蹴り飛ばした。
 仁Dは入ってきた扉の近くまで下がると、障壁(バリア)を張った。
 その間に礼子は床に転がった2個の『支配装置(ビヘルシャー)』を破壊した。

「どういうつもりだ! 客を奴隷化するのがここのやり方か!」
 仁Dが声を張り上げる。
《主人に対する危険因子は少しでも減らすのが私の役割だからだ。おとなしく受け入れろ》
「嫌だね」
 仁Dは即座に否定した。
「そんなやり方で本当にお前の『主人』は満足するのか?」
《少なくとも否定はされておらぬ》
「否定されてないって、それは……」
《問答無用!》
 ゴーレム2体が礼子に、もう2体が仁Dに向かってきた。
《おとなしく言うことを聞け!》
「ですから、嫌ですとさっきから言っているでしょう」
 礼子はその2体を殴り飛ばした。が、吹き飛んだ2体はすぐに体勢を立て直し、迫ってくる。
 仁Dの方は、礼子ほどの戦闘力はないので、ひたすら障壁(バリア)で防ぐだけ。
 とはいえ、その防御力は高く、2体のゴーレムでは突破できない。
 その間に礼子は己の相手2体を沈黙せしめ、仁Dを襲う2体の相手をする。
「無駄なことはせずにおとなしくしていなさい」
 30パーセントを出した礼子の力で投げ飛ばされた2体は、反対側の壁まで飛んでいき叩き付けられ床に落ち、ついに動かなくなった。
《言うことを聞く気はないのか?》
「友好のためにやって来たのに、いきなり奴隷化しようとされては黙っていられません」
《奴隷ではない。逆らえないようにするだけだ》
「どこが違うというのですか」
 平行線である。どうやらアジェンテの認識は仁たちと相容れないようだ。
《我が主人は絶対だ。我が主人のためにならないものは全て排除する》
「……狂信者か」

*   *   *

御主人様(マイロード)、明らかに暴走しています。危険です』
「うん、わかってる」
 『主人代理(アジェンテ)』と名乗る存在は、仁や老君から見て、明らかに暴走していた。
「歯止めがかかっていないみたいだな……」
『はい。危険な兆候ですね』
「もう少し様子を見て、どうしようもなさそうなら撤退も考えよう。……残念だが」
『それがよろしいかと思います』
「とりあえずはアジェンテの出してきたゴーレムの対処だな」

*   *   *

「無駄なことはやめなさい!」
《無駄だと?》
 アジェンテの繰り出してきたゴーレムを沈黙させた礼子が叫ぶ。
自由魔力素(エーテル)の流れを見れば、強さがわかります。あなたが出してくるゴーレムはわたくしの敵ではありません」
《生意気だな。いい気になるなよ? 私の攻撃手段がゴーレムだけと思うな!》
 礼子は身構え、そしてアジェンテはさらなる攻撃を繰り出してきたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ