挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

1383/1564

37-25 待ち望んだ接触

 『衛星』から射出された『偵察機』3機は、十分な距離を置いて、『ヴァルカン』と『スカイラーク隊』の模擬戦闘を観察しているようだった。
 そして、その模擬戦闘は、『スカイラーク隊』の敗北に終わりそうである。
 『ヴァルカン』への直撃弾はこれまで23発。片や『スカイラーク隊』は残すところ4機しかいない。
 数が減るほど『スカイラーク隊』は不利になるので、勝敗は見えたといっていい。

*   *   *

「老君、『分身人形(ドッペル)』でヘールに行くことはできるか?」
 『偵察機』との交渉のため、ゴーレムより自動人形(オートマタ)を使った方がいいだろうと仁は判断したのである。
『そうですね、それがよろしいかと』
「よし、礼子も一緒に行ってくれるか?」
「わかりました」
 普通なら、絶対と言っていいほどに仁のそばを離れない礼子であるが、例外がこれ。
 『蓬莱島』に仁がいて、『分身人形(ドッペル)』を守る場合だ。
「それでは老君、お父さまをお願いします」
『礼子さん、行ってらっしゃい』
 こうして、『ペガサス1』に乗って、仁の分身人形(ドッペル)と礼子は惑星ヘールへと向かったのである。

*   *   *

 一旦、簡易中継基地に出、もう一度転移門(ワープゲート)を使って『ヴァルカン』へ。
 資材用の受け入れ倉庫に出た『ペガサス1』は、ゆっくりと倉庫を出て行く。
 宇宙空間に出ると一気に加速し、『偵察機』のそばへ。
 できる限り速度を落とし、無駄に刺激しないようにした。
 そしておそらくこちらを観察しているであろうタイミングで、窓から手を振って見せた。
 700672号からも、この仕草が敵対行動を示すものではないことを確認してある。
 さらにゆっくりと近付いていく『ペガサス1』。

*   *   *

「老君、大丈夫だと思うか?」
 心配そうに仁が尋ねる。ある意味『異星人』とのファーストコンタクトだからだ。
御主人様(マイロード)、向こうの反応につきましては、700672号さんと『テスタ』から得た情報を元に何度もシミュレーションしました』
 老君にそう言われて仁も少し落ちついた。
「うーん、向こうの偵察機? は何も反応しないな」
『元々そういう反応はできない仕様なのかもしれません』
「それもそうか」
 仁はじっくり行くことを再度肝に銘じた。

*   *   *

「何の反応も返ってこないな」
「そうですね」
 『ペガサス1』の中では仁の分身人形(ドッペル)(仁D)と礼子が手を振り続けていた。
「向こうもこちらをどう捉えていいのか判断しかねるのかもしれませんね」
「そうだなあ」
 『ペガサス1』はごくゆっくりと偵察機に近付いていく。
 偵察機はそれを避ける様子はなく、あまり警戒はしていないようである。
「さて、ここからだ」
 『ペガサス1』と偵察機の距離は30メートルほどまで詰まった。
 偵察機の視覚機器を通じ、『ペガサス1』と仁D、礼子の姿は伝わっているはずだ。
「何か反応があるはずだ。このままということはないだろう」
 娯楽を欲しているのなら、宇宙戦闘だけでなく、こうした訪問に対して反応を見せるはず、と仁たちは考えていた。
「だけど、究極の引き籠もりだったら……」
 と考え、それを否定する。もしそうなら、偵察機もすぐに引っ込めているはずだからだ。
「おそらく、向こうもこちらをどう扱うべきか悩んでいるのでしょうね」
「そうだろうな」
 立場を変えてみれば想像がつく。
 住処の近傍で宇宙戦闘があり、得体の知れない奴らが手を振って近付いてくる。
 これをいきなり受け入れるというのは考えにくい。
「だとしても、興味は持っただろう」
 退屈な日々に一石を投じた仁たちをそのまま放っておくはずがない、ということが前提の作戦だ。
 そしてさらに時間が経っていく。
 仁Dの制御はとうに老君が引き継いでいた。
 何せ蓬莱島はもう夜中である。
 仁は老君に注意され、休んだのであった。

*   *   *

 日付が変わり、8日となり、『ペガサス1』接近から15時間が過ぎた。
 そしてついに反応が生じる。
「お、何かまた出てきた」
 偵察機はそのままに、くだんの『衛星』から飛翔体が1つ出てきたのである。
「……ゴーレム?」
 それは人型をしていた。まっすぐ『ペガサス1』目指して飛んでくる。
 この頃には、もう『ヴァルカン』と『スカイラーク隊』の模擬戦も終わり、宇宙空間は静かであった。

 ゴーレムは『ペガサス1』の3メートルほど手前で停止。
 ロケットなどの装備は付いていないことから、『力場発生器フォースジェネレーター』のような推進装置を備えていることが想像できる。
 近くで見ると、どことなく『ヘレンテ』に似ている気がする。ヘール製のゴーレムだからだろう。
 仁Dと礼子はもう一度窓越しに手を振って見せた。
 それが決め手になったようだ。ゴーレムは再びゆっくりと……宇宙空間を泳ぐように近付いて来て、『ペガサス1』の外被にそっと触れた。
〔聞こえるか? 聞こえたら手を振ってほしい〕
 外被を伝わって、ゴーレムの声が聞こえてきた。仁Dと礼子は言われたとおり、一度だけ手を振って見せた。
〔よかった。話は通じるようだな。……アルスから来たのか? そうなら手を振ってくれ〕
 仁Dと礼子は手を振って見せた。
〔そうか。……来訪の目的を知りたい。我々に対し、害意はあるか? ないなら手を振ってくれ〕
 この質問にも手を振り返す仁Dと礼子。
〔それは幸いだ。……我が『主人』への面会を望むか? 望むなら手を振ってくれ〕
 仁Dと礼子は迷うことなく手を振った。
〔わかった。会えるよう取り計ろう。……付いて来てくれ〕
 それだけ言うと、ゴーレムは身を翻し、『衛星』へと戻っていく。『ペガサス1』もゆっくりとそれに続いた。
 ゴーレムは一度振り返り、『ペガサス1』が付いてきているのを確認すると少し速度を上げた。
 『衛星』に近付くと、大型のハッチが開く。ゴーレムは振り返り、手招きをする。その動作が手招きであることは、これも700672号や『テスタ』との話し合いで情報を仕入れていた。
 ハッチの中には広いホール状の空間があり、『ペガサス1』は楽々中に入ることができた。
 それを見たゴーレムは、再び『ペガサス1』の外被に触れると、
〔これからハッチを閉める〕
 とだけ告げた。
 その直後、ハッチがゆっくりと閉じ、ホールには空気が満たされる音が響いた。
〔ここはエアロックだ。……私の声は聞こえるか?〕
 空気が満たされたらしく、ゴーレムの声が、外被を経由することなく聞こえるようになった。
〔窒素78パーセント、酸素20パーセント。呼吸可能な空気だ〕
 ゴーレムの説明。
 付属の機器で空気の組成に問題がないことを確認し、仁Dと礼子は外に出てみることにしたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161216 修正
(誤)「向こうももこちらをどう捉えていいのか判断しかねるのかもしれませんね」
(正)「向こうもこちらをどう捉えていいのか判断しかねるのかもしれませんね」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ