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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-24 模擬戦闘

『戦闘訓練、ですか』
 蓬莱島に戻った仁は老君と打ち合わせをしていた。
『模擬戦闘、ということであれば、威力の低い武器で『ヴァルカン』の『防御盾(アイギス)』を攻撃すればいいと思いますが……』
「うん、だけど、目を惹くように、できるだけ派手にやりたいんだ」
 『魔力砲(マギカノン)』で『防御盾(アイギス)』を攻撃しても、閃光や爆発といった副次効果は見られない。
 傍目には何をやっているのかわからないのだ。
『閃光弾を作りますか』
「うん、俺もそれを考えていた」
 閃光弾。現代地球では目眩ましや合図に使われるイメージがある。実物は仁も見たことはないが、イメージはあるので問題はないだろう。
「ぶつかると光を放つ、でいいよな」
『それでしたら被覆が『砕けると』がよろしいかと』
「ああ、なるほど。そうしよう」
 障壁(バリア)や、相手の装甲に当たって外殻が割れると閃光を放つ。
 『魔力砲(マギカノン)』用なら、外殻は丈夫なものにしておけば暴発の危険も少ない。よしんば暴発しても光るだけだ。
「熱は出さないようにしよう」
 光も、可視光に限定し、赤外線や紫外線は極力出さないようにする。
「時限式も作っておくか」
 合図用にいいかもしれない、と仁は考えたのだ。
 構想ができれば、完成したも同然。仁は職人(スミス)らを動員し、十分な数の『閃光弾』を製造したのである。

*   *   *

「さて、始めるか」
 1月7日、惑星ヘールの衛星軌道上で、『ヴァルカン』対『スカイラーク隊』50機の模擬戦が開始されようとしていた。
「勝敗はどう判定するの? それにルールは?」
「それはな……」
 エルザからの質問に、仁は答えていく。
 『ヴァルカン』は物理障壁(ソリッドバリア)を展開し、秒速10キロで飛行。
 『スカイラーク隊』はそんな『ヴァルカン』を閃光弾で攻撃するわけだ。
 『ヴァルカン』の艦体に50発、つまり1機が1発閃光弾を当てたら『スカイラーク隊』の勝ち。
 一方、『スカイラーク隊』はバリア越しを含め、1発でも閃光弾を受けたら撃墜扱い、というルールである。
 機動性では『スカイラーク隊』は『ヴァルカン』を遙かに上回る。
 が、火力では『ヴァルカン』が上回る。そして50発までは直撃があっても構わない。
 仁にしても老君にしても、勝敗は読めない、と説明は締めくくられた。
「ん、よくわかった。ありがとう」

『では、始めます』
 エルザも納得してくれたところで、老君が模擬戦開始の合図を出した。

 『ヴァルカン』は宇宙空間を疾駆し、右に左に、回避行動を行う。
 対して『スカイラーク隊』は包囲陣を作り、『ヴァルカン』を押し包もうとする。
 『スカイラーク』から放たれた最初の閃光弾が『ヴァルカン』の物理障壁(ソリッドバリア)に当たり、漆黒の宇宙空間に光の花を咲かせた。
「綺麗……」
 エルザが素直な感想を述べる。
 夜空に咲いた花火の如く、宇宙空間に閃くまばゆい光。
 本物の戦闘ではなく、破壊的なものでないことが救いだ。
 そしてその閃光の数は時間を追う毎に増えていく。『スカイラーク隊』が『ヴァルカン』を追い詰めているのだ。
「うーん、こういう時にどうすればいいのか、っていう経験が圧倒的に不足してるなあ」
 仁自身、宇宙での戦闘経験があるはずもなく、戦法・戦術については全くの素人である。
 そのあたりは700672号も同じで、以前尋ねた時も『わからぬ』と言われてしまった。
「まあ、宇宙戦争なんてするつもりないしなあ」
 そんな呟きを漏らしながら、仁は映像を眺めていた。

 『ヴァルカン』は人間の操縦ではありえないような不規則なジグザグ軌道を描いて飛んでいる。
 が、『スカイラーク隊』はさらに機動性が高く、その不規則な飛行にも対応できていた。
「あっ、『スカイラーク』が1機、脱落した」
 エルザが声を上げた。そう、『スカイラーク46』の障壁(バリア)に閃光弾が当たったのだ。
 そしてまた1機。もう1機。
「『ヴァルカン』もやるなあ」
 その構造上、『魔力砲(マギカノン)』は連続で撃つことはできない。
 どうしても数秒のインターバルを必要とする。
 その隙を突いて『ヴァルカン』は閃光弾を命中させたのである。

「だとすると『スカイラーク隊』は……ああ、やっぱり」
 5機が脱落したところで、『スカイラーク隊』を率いているスカイ11は指示を変えてきた。
 45機が少しずつ発射のタイミングをずらすのだ。
 これにより『ヴァルカン』は物理障壁(ソリッドバリア)を解除することができず、従って反撃することもかなわず、防戦一方となる。
「なるほどな」
 だが『ヴァルカン』も戦法を変えてきた。
 それまでは『物理障壁(ソリッドバリア)』を張っていたのだが、代わって『防御盾(アイギス)』を展開したのだ。
 『防御盾(アイギス)』は平面状の障壁(バリア)であるから、側面は無防備だ。だが『ヴァルカン』は、『スカイラーク隊』の砲撃に合わせ、『防御盾(アイギス)』を移動させていく。
 質量のない『防御盾(アイギス)』なので移動は一瞬だ。
 また、張れるのは1面だけではない。上下左右前後、6方面に展開できる。つまり立方体の中に籠もれるのだ。
 ただし面の形は正方形ではなく円形なので隙間が空いている。そこから『ヴァルカン』は『スカイラーク隊』を狙い放題である。

「お、また1機」
 『スカイラーク隊』は今や21機にまで減っていた。
 高速で移動する『防御盾(アイギス)』の隙間を狙い撃ちするのは至難の技である。一方『ヴァルカン』側は『防御盾(アイギス)』の移動と『魔力砲(マギカノン)』の発射を同期させている。
「『ヴァルカン』、有利?」
「だな」
 仁とエルザは夢中でこの模擬戦の行方を追っていた。当初の目的は頭からすっぽ抜けている。
 だが老君はそんなことはなかった。
 監視対象の球体に動きがあったのである。

*   *   *

自由魔力素(エーテル)の流れが変化しました」
 待ちに待った報告が入る。
 模擬戦を行っている部隊とは異なる『ラプター』隊が10機、戦場から離れた空間で待機していたのである。

『やはり反応を示しましたね』
 老君も満足そうだ。
 球形の『衛星』から、偵察機と思われる、これも球形の小さな飛翔体が3機飛び出してきたのである。
『お互いに破壊行為を行っていないと理解してくれることを願いましょう』
 つまり『遊び』と捉えてもらいたいわけだ。
 引き籠もったヘール人はまず間違いなく争いごとが嫌いだろうという『テスタ』の判断からである。
 その半面、娯楽には飢えているはずなので、珍しいことには目がないだろうということも。
「……え、ええと、ここまでは予定どおりだな」
 すっかり宇宙戦闘に夢中になっていた仁も、少し慌てて本来の目的に立ち返った。
『あの偵察機に、こちらが無害だとアピールする、第2段階開始ですね』
「そうだな。より慎重にいこう」
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