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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-23 アピール

『軌道上に何かあります』
 その報告が入ったのは1月6日のことであった。
 宇宙用に改造された『スカイラーク隊』からの報告である。

『直径、約500メートルの球体。衛星軌道上を周回しておりました』
 直径が500メートルなので、広大な宇宙空間ではあることを知らなければ見過ごしてしまうほどの大きさだ。
 『スカイラーク隊』の投入がなければ見つけられなかったろう。

自由魔力素(エーテル)の流れを見る限り、機器は生きています』
 『魔力流分析機(エーテルアナライザー)』で分析すると、周囲のエーテルを集め、消費している様子がわかる。
 消費量は、明らかに内部に大型もしくは多数の魔導機(マギマシン)があることを示唆していた。

『周囲には弱い結界が張られております。おそらくは探知系の結界です。直径は10キロメートル』
 物理的に物質を防ぐものではないようで、侵入者や敵の接近を検知するものではないかと思われる。
 検知したならもっと強力な結界を張るのかもしれない。

『『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の使用が、何らかの方法で検知される可能性有り。今後の指示を願います』

*   *   *

「うーん、難しいところだな」
 蓬莱島研究所地下の司令室では仁が悩んでいた。
『『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の使用を勘付かれる可能性があることですね』
「そう思うんだよな」
 しかし何もしなければ何も始まらない、とも思う。
「そうだ、向こうから呼びかけさせることはできないだろうか?」
 ふと仁は思いつく。向こうが興味を持ち、連絡してくるように誘導はできないだろうか、と。
『その場合の鍵は、どうやって敵対意志がないことを知らせるか、ですね』
「うーん、なるほど」
 ヘール人に味方だと知らせる方法はないだろうか、と仁は考えてみる。
『個人主義の彼等ですから、同族=味方、とはならないかもしれませんしね』
「それもそうか」
 とすると、向こうから何者か、と問いかけてくるような方法はないだろうか、と考え方を変更してみる。
『『ヴァルカン』や『スカイラーク隊』の存在は既に知られていると仮定しますと、何の反応も見せないのはおかしいですね』
「確かにそうだ」
 ここも死んだ施設なのか、と思いかけて、動作している魔導機(マギマシン)があることを思い出す。
「積極的にアプローチしないと反応はないのかな?」
『そうですね、個人主義、という前提で考えますと、『我関せず』と無視されてしまう可能性も捨てきれません』
「なるほどな……」
 さすが老君、と仁は感心した。仁なら気になってどうしようもないだろうからだ。
「敵じゃあないとアピールしながら、向こうが気にするような目立つ行動……か」
 難しすぎる、と仁は頭を抱えた。

御主人様(マイロード)、マリッカさんを通じて、『テスタ』に聞いてみたらいかがでしょうか』
 少なくとも、最もヘール人について知っているはずの存在。まずは相手のことをもっと知ること。
「それが一番いいかもな……」
 仁は老君の考えに賛成したのである。

*   *   *

「ええと、そういうわけなんですが『テスタ』さん、どうですか?」
 その日の午後、マリッカとシオン、仁と礼子は『オノゴロ島』で『統括頭脳』の『テスタ』に質問をしていた。
〈おお、ジン殿は『主人』の星へ到達したのか〉
「そうなんだが……」
 仁は『テスタ』に、これまでわかっていることを説明した。
〈そうか、母星にはもう『主人』たちは残っていない、と〉
 『テスタ』は、その事実を知ってもさほど落胆はしていないようだ。『マリッカ』という明確な現『主人』がいるからだろう。
 これは老君も予測していたことである。仕えるべき『主人』がいれば、不安定になったり暴走したりすることはない。
「それで、衛星軌道に球形の施設を見つけたので、接触して話をしてみたいんだが、何の反応もなくてね」
〈さもあらん〉
 『テスタ』は旧『主人』の性格について述べ始めた。
〈『主人』は、まず『自分』がある。そして『自分』以外は『他者』となる〉
「うん、それはわかる」
〈『他者』は3つに分類される。1つは味方、1つは敵、そしてもう1つは無関係〉
 好き・嫌い・無関心みたいな分け方だな、とそれを聞いた仁は感想を持った。
〈反応がないということは、無関係と見なしているからだろう〉
 他人はまず無関係に分類される、という。その後の情報によりもう一度分類され、この時に敵であると思われたら攻撃される可能性もある、とのことだった。

「じゃあ、味方と思われるためにはどうすれば……?」
 と仁が尋ねると、『テスタ』はそれを遮って言葉を続ける。
〈待て、結論を急ぐな。実は、無関係の中にも、『興味を惹く』という括りがあるのだ〉
「ややこしいな」
〈『興味を惹かれる無関係な存在』というものを目指すのがいいだろう〉
「本当にややこしいな……具体的には?」
〈『主人』が興味を惹かれるようなことを示すしかない〉
「だから具体的には?」
〈『主人』の主義がわからないと何とも言いようがないが、『残留派』の『隠遁派』である可能性が高いな〉
 『自然回帰派』はおそらくヘール上で静かに滅んでいったのではないか、と仁は心の中で手を合わせた。
〈『隠遁派』は最も外界に興味を示さない人々だ。生半可なアピールでは意味をなさないだろうな〉
 回りくどい説明に、仁も少しじりじりしてきていた。
〈危険ではなく、かつ興味を引けること。こうとしか言えぬ〉
 なんだそれ……と仁は思ったが、それでも聞く前よりは多少ましである。
 そこで仁は、思いついたことを聞いてみることにした。
「例えば、宇宙空間で眩しい光を放つというのは?」
〈その程度では興味は引けんだろうな〉
「では、疑似戦闘をするのはどうだろう?」
 要は球形の施設を攻撃するのではなく、付近で勝手にドンパチやれば興味を惹かれるのでは、という考えだ。
 演習のような形で、宇宙船同士の戦いを演じればいい。
〈うむ、それならいいかもしれぬ〉
「そうか」
 仁がこの線で行こうかと思ったところ、
「あの、普通に訪問したらどうなるんですか?」
 と、マリッカも尋ねたではないか。
 仁は、真っ先に考えつくであろうそれを聞きそびれていたことに気付いた。
 だが。
〈そうですね、その場合多分無視すると思います。無理に侵入したらそれこそ敵性認定されてしまいます〉
 と『テスタ』はにべもない。
「そうですか……難しいです」
 やはり、模擬戦闘をして反応を引き出すのが早道か、と仁はその方法を考え始めたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161213 修正
(誤)「だか具体的には?」
(正)「だから具体的には?」
+注意+
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