挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1380/1655

37-22 調査隊

 1月5日、ヘールと中継基地に大型転移門(ワープゲート)の設置が終わった。
 時を同じくして、エルザが実家から帰ってきた。
「おかえり。一緒に行けなくてごめん」
 と仁が謝ると、エルザは何でもない、と首を振った。
「お義父さんお義母さんは元気だったかい?」
「うん、大丈夫。父さまも大分回復して、日常生活は1人でできるようになってたし」
「それはよかった」
 が、エルザの顔がどこか晴れないのを仁は察した。
「でも何か言われなかったか?」
「え? わかる?」
「そりゃあ、エルザのことだから」
「……ありがとう?」
 少し頬を染めて礼を言うエルザ。何か違う気もするが、仁は気になることを再度尋ねた。
「で、何があったんだ?」
「ええと、兄さまのこと」
「フリッツさん?」
「ん。……『世界警備隊』の話が陛下からも出ていて、それに参加したい、って」
「なるほどな」
 デウス・エクス・マキナとしての仁が発足させようと思っている『世界警備隊』。
 聞くところによると、参加希望者が殺到しているらしい。
「お母さまが、兄さまが参加したいと言ってるのを聞いて……」
「ああ、なるほど」
 やはり母親としては息子の希望を叶えてやりたいと思うものなのだろうか、と仁は思った。
 そしてエルザとしては身内を贔屓ひいきするような推薦はしたくないのだろう。
「でもフリッツさんは有能だからな。選出は各国の首脳陣に任せれば大丈夫じゃないかな」
 仁がそういうと、エルザは慌てて説明を補足した。
「あ、そうじゃなくて、お母さまは兄さまに参加してほしくない、みたい」
「そっちか……」
 危険な目に遭わせたくないのか、あるいは遠く離れた勤務地に行ってしまうのが寂しいのか。
「少しだけわかる……気もするな」
「……そう?」
 ここで仁は話題を少しだけ変える。
「なあ、モーリッツさんはどうしてる?」
「モーリッツ兄さま、は、当主として頑張ってる」
「で、奥方はいるんだっけ?」
「いない」
「そうか……」
「何で?」
 怪訝そうなエルザに、仁は自分の考えを説明する。
「いや、もしかしたらお義母さんも寂しいのかな、と思って」
「寂しい?」
「うん。エルザは俺のところだし、フリッツさんは軍人だからほとんど外にいて家に帰って来ないだろうし、モーリッツさんは当主として忙しいだろうから」
 だからモーリッツさんが結婚して、孫ができたらまた違ってくるのでは、と仁は言った。
「え、ええと、孫、なら、うち、でも」
 エルザは真っ赤になって仁の話に付け加えた。
「え? エルザ、もしかして」
 だがエルザは勢いよく首を振った。
「う、ううん。……ま、まだ、みたい」
「そっか……」
 それを聞いた仁は少し残念そうだった。
「お義母さんが寂しくないように何か考えて上げるといいのかもな」
「……どう、すれば?」
「一緒に考えてみよう」
「……ん」
 ということで、仁とエルザは共に考えることにした。
「小動物を飼う、というのは?」
 犬、猫、小鳥など。
「あまり生き物は……」
「そうか」
 生き物を飼うのが苦手な人もいる。エルザの義母、マルレーヌはそういう人のようだ。
「じゃあ、花はどうだろう?」
「あ、それならいいかも」
「そうか。よしよし……」
「ジン兄?」
「温室を作ってあげようじゃないか」
 魔族領では実用化しているし、クライン王国でも高級果物の栽培などに使っている温室。
 そこに、亜熱帯の花やハーブなどを栽培したら楽しいだろうと仁は考えた。
「植える植物はエルザが選んであげてくれ」
「ん」
 蓬莱島にある植物、エリアス王国にある植物など、南方系の植物で、義母マルレーヌが喜びそうな品種をチョイス。
「ヘール問題が落ちついたら、ご無沙汰したお詫びも兼ねて、俺も行くから、その時に植えられるように準備だけはしておこう」
 鉢やプランターに植え替えておくのだ。そのあたりは五色ゴーレムメイドのトパズが詳しい。
「白い花、青い花、赤い花、黄色い花、紫の花。色とりどりの花が咲くと、嬉しい」
 エルザは喜々としてリストを作り始めた。
 仁は仁で、温室の大きさ、材質、加熱の方法などを検討していく。
 金属製魔法筋肉(マジカルマッスル)の方は少し考え倦ねていたのでちょうどいい気分転換になるとばかりに、仁は温室の構想を練っていったのである。

*   *   *

 そして夕食後、老君から新たな報告が入った。
御主人様(マイロード)、新たに設置した転移門(ワープゲート)でヘールへ送り込んだスカイ隊からの報告です。そのままでお聞き下さい』
 食堂で聞いて済むような話だ、と老君は前置き、報告を始めた。
『『スカイラーク』50機でヘールを巡りました。ヘールに動物・昆虫などはいません。僅かな種類の植物が生えているだけです』
「やはりそうか……」
 最終的に、自然環境すら管理された世界だったのだろう、と仁は思った。
『その植物も、これは推測になりますが、乾燥に強く、繁殖力も旺盛で、光合成により酸素をできるだけ多く発生するよう品種改良された可能性が高いです』
 ああ、そこまでしていたのか、と仁は少し寂しさを感じた。
「そこまでやっても、結局は滅びの道を歩んでしまったんだな」
『そういうことになりますね』
「だが、永遠に続く命がないように、永遠に続く文明もないか、なら……」
「満足できる人生を、送りたい、ね」
 仁の言葉にエルザが言葉を重ねる。
「そうだな。今の積み重ねが未来を作るなら」
「今が佳きものであるように、ですね」
 今度は礼子が仁の言葉に続けた。
御主人様(マイロード)とそのご家族、ご友人の人生が佳きものであり続けますよう、私どもは尽力いたします』
「ありがとう、老君」
 少ししんみりしてしまったが、新年の決意として仁は、
「俺と、俺につながる人たちが、幸せでありますように」
 と呟いたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161213 修正
(誤)危険な目に合わせたくないのか
(正)危険な目に遭わせたくないのか

(誤)新たに設置した転移門(ワープゲート)ヘールへ送り込んだスカイ隊からの報告です。
(正)新たに設置した転移門(ワープゲート)でヘールへ送り込んだスカイ隊からの報告です。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ