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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-21 過去の星

 『ヴァルカン』は高度を落とし、成層圏に該当するエリアを周回していた。
『大気組成はアルスとほぼ同じですね』
 アルスがヘールと同じ、なのかもしれませんが、と老君は付け加えた。

『今のところ、自由魔力素(エーテル)の不自然な流れは検知されません』
 『ヴァルカン』からの報告も芳しくない。
「老君、『自由魔力素(エーテル)転送装置』な。ヘールの受け入れ側ってどこにあったんだろうか?」
 ふと気になったことを仁は口にした。
御主人様(マイロード)の仰るとおりですね。今のところそれらしい魔導機(マギマシン)はありません』
「継続して調査してくれ」
『わかりました』

*   *   *

 丸1日が過ぎても、これといったものは見つからなかった。
 仁は司令室にいない時は先日シオンとマリッカに話をしていた『ゴーレム馬』の検討をしている。
「骨格と外装は青銅でいけるな」
 『強靱化(タフン)』の効果は大きい。
「あとは筋肉をどうするかだな……」
 最近、仁は『魔法筋肉(マジカルマッスル)』について考えていることがある。
 蓬莱島標準では、地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸を使うのだが、これは生物素材であり、保守をうまくやらないと経年劣化が激しく、メンテナンスフリーとはならない。
 もっとも、仁の手に掛かれば、そうした保守の必要はないほどに耐久性は上がるのだが。
「金属で作れないかな……」
 仁が現代日本で勤めていた頃、『バイオメタル・ファイバー』という、金属製の人工筋肉が開発途上にあった。
 詳細はあまりに学術的なので仁も詳しくは知らないが、それを工学魔法で実現できないか、というわけだ。
 ヘール問題の合間に考えるにはちょうどいい課題でもあり、暇ができると仁はそのことについて考えを巡らしていた。

御主人様(マイロード)、司令室へお越し下さい』
 とはいえ、なかなかまとまった時間が取れないので、進展は遅いのだが。

「何か見つかったか?」
『いえ、御主人様(マイロード)。その逆で、地下にもそれらしい施設は発見できないことをご報告すると共に、次のご指示を頂きたくお越し願いました』
「そうか……。それじゃあ、コスモス隊をヘールに降ろしてみよう」
『やはり、それですか』
「それで何か動きがあるかどうか、だ」
 コスモス隊が上陸することで、観察だけではわからなかった何かが反応するかもしれない、という考えからである。
「さすがに『ヴァルカン』が着陸するのはまだ時期尚早だろうしな」
『はい、御主人様(マイロード)。危険がないことが確実になりましたら、転移門(ワープゲート)も設置したいものですね』
「ああ、そうだな」
 700672号も訪れてみたいと言っていたし、仁自身も興味がある。
「病原菌や毒素などの検査も十分に行ってくれ」
『わかっております』
 こうしてヘール探索は第2段階に入ったのである。

*   *   *

「うーん、魔力を与えると縮まる機能を持たせるにはどうするのが一番効率がいいだろう……」
 そして仁は再び金属製魔法筋肉(マジカルマッスル)の検討に入った。
「お父さま、『変形(フォーミング)』利用ではいけないのですか?」
 悩む仁を見かねて、礼子も参考意見を口にした。
「『変形(フォーミング)』じゃあちょっと出力的に弱いんだよなあ……」
 仁の目算では、その方式で魔法筋肉(マジカルマッスル)を作って比べた場合、『変形(フォーミング)』式では仁が望む半分以下のパワーしか出ない見込みなのだ。
「それはどうしてなんですか?」
「『変形(フォーミング)』を使った『変形動力(フォームドライブ)』があるだろう? あれは腕なら腕そのものを変形(フォーミング)して動かしているんだが、筋肉の場合は引っ張ることしかできないからさ」
「ええと、内骨格に付いた筋肉が関節を曲げるときは縮むことで力を発揮するから、ですね?」
「そういうことだな」
 『変形動力(フォームドライブ)』の場合は、片方は縮み、その反対側は伸びる。つまり『引き』と『押し』2つの力が働いているが、内骨格に付いた魔法筋肉(マジカルマッスル)の場合は縮むことでしか関節を曲げられないからである。
「それに魔力素(マナ)の運用効率がよくない。加えて反応速度が上がらない」
 動くたびに『変形(フォーミング)』の魔法を使っているのと同じだからだ。
「難しいものですね」
 礼子も納得したようで、仁と一緒になって考え始めたのである。

*   *   *

 『ヴァルカン』はヘールを周回しつつ探査を続けると同時に、バトルスーツに身を包んだコスモス551から560は各種測定器を携えてヘールへと向かった。
[ただ今、ヘール赤道上の目標地点に到着]
 惑星ヘールに第一歩を刻んだのはコスモス551である。
[気温は摂氏27度、相対湿度24パーセント]
 気温は高めで、湿度は低い。
自由魔力素(エーテル)濃度はアルス魔族領付近と同等]
 小群国と比べると少々高め、である。
[これより大気および土壌の分析を行います]
 コスモス555と556が測定器を取り出した。
 サンプルの土を測定器の受け皿に置くと、『分析(アナライズ)』の魔法が発動する。
[第1回目……不明な物質は検出されませんでした。既知物質も無害なものだけです]
 『分析(アナライズ)』の魔法は万能ではない。知っているものは検知できるが、それ以外は『不明』となるのだ。
 そして、十数回にわたる検査でも『不明』な物質や菌は検出されなかった。
[大気分析……窒素79パーセント、酸素20パーセント、その他1パーセント]
[その他の組成……アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、ネオン、メタン、水素。微量な成分はパーセンテージまでは不明]
 ほぼアルスや地球と同じである。
[微生物などもいませんね。むしろ滅菌室内に近いようです]
 元々なのか、それとも環境整備を行ったためなのか。
 逆にいえば、人間以外の多種多様な生物にとっては棲みよい環境ではないといえるのかもしれない。

 いや、人間にしても、乳酸菌をはじめとした様々な微生物との共存をしているわけで、無菌状態が理想とはいえない気もする、と報告を聞きながら仁は考えていた。
「だが、これでヘールを訪れてみることはできそうだな」
 もちろん、もっと調査を進めてからになるが。
転移門(ワープゲート)の設置はしてもよさそうだ」
『そうですね、そうなればこちらからの支援も行いやすくなります』
 いずれにせよ中継基地経由なので、万が一にも有害な細菌やウイルスをアルスに持ち込まないように途中で滅菌処理を行う必要はあるが。
『ヘールからアルスに移住したことを考えますとその可能性は低いですけれどね』
「うん。だが、変異種というものもあるだろうからな」
『気を付けるに越したことはないでしょうね』
「作るなら大型にして、航空機くらいは送り込めるようにしよう」
『わかりました。そうなりますと、中継基地も大型にしませんと』
「ああそうか。そっちも頼む」

 こうして、惑星ヘール上に大型の転移門(ワープゲート)が建設されることとなった。
 そして、ヘールの調査は佳境を迎える。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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