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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-20 惑星ヘール

 3459年1月3日、『ヴァルカン』は惑星ヘールがあると思われるポジション付近まで進出していた。
 速度を落とし、慎重に進んでいたがゆえに時間が掛かってしまったのだ。
『こちら『ヴァルカン』。あと6時間で目的のポジションに到着予定』
『蓬莱島、老君了解。そのまま推進されたし』
 中継基地を通しての通信である。

 蓬莱島では、泊まっていたハンナ、シオン、マリッカ、サキ、グース、ヴィヴィアンらは帰っていた。
 そしてエルザは実家へ里帰り。
 本当なら仁も付いて行きたかった、いや付いていくべきだったのだが、ヘールの問題があるので残ったのだ。

「うーん、多分3億キロくらい離れているんだよな?」
『ヘールとアルスの距離でしたら、そのくらいですね』
 公転軌道半径は1億5000万キロくらいなので、アルスとヘールは直径分離れていることになる。
「だけど、通信は遅れていないな?」
『はい。以前、ユニーとの通信でも確認しましたが、自由魔力素(エーテル)波は亜空間もしくは超空間を経由するのではという推測を立てましたね』
「そうでも考えないとおかしいものな。この世界……というか宇宙でも、光速は秒速30万キロメートルなんだよな?」
『測定しておりませんのでわかりかねます。仮説として、もっともっと速いという可能性もあるわけですが』
「ああ、そうか……」
 E=mc^2。アインシュタインの特殊相対性理論の帰結といわれる式である。
 mは質量、cは光速。この世界(惑星という意味ではなく、宇宙を含む全ての空間という意味での世界)における光速が、地球を含む向こうの世界の光速よりも速いという可能性。
「魔法があるんだから、その可能性も捨てきれないな」
 自由魔力素(エーテル)をエネルギーに変えたときの効率のよさを考えると、光速cが秒速30億キロメートルという可能性だってあるわけだ。
 少なくとも、3億キロメートル離れた場所との通信で、体感できる程のタイムラグはない。

「その問題は別の機会に置いておくとして、まず当面の問題を片付けないと」
 仁自身、並列で多くの問題を解決出来るほど器用ではない。まして今回の課題は、答えの方向性すら未知数である。

*   *   *

 そして5時間が過ぎ、『ヴァルカン』の前に惑星ヘールがその姿を現した。
『結界のたぐいは確認できません』
 あるといわれていた結界はなかった。
 情報が間違っていたのか、事情が変わったのか。そのあたりはこれから明らかになるであろう。

 ヘールの外観は、一言で言うと、太陽系第4惑星、火星に似ていた。
 赤茶と淡緑の大地、極部の白い雪もしくは氷。海と思われる部分もあるが、2割程度だ。
 大地には緑の部分が申し訳程度に存在しているだけであった。

「なんというか……荒涼とした外見だな」
『はい、御主人様(マイロード)。衰退しているとは思いましたが、まさかこれほどとは』
 それでも、地上は存外居心地がいいのかもしれないと、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の使用を命じる老君であった。
「あるはずの障壁(バリア)がないというのも気にかかる」
 淡緑の部分は草原であろうか。それは赤道から南北回帰線付近に点在していた。
『人工物らしきものもこの距離では見あたりませんね』
「そうだな。あとは『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の映像で確認しよう」

*   *   *

 『ヴァルカン』は目視でもヘールを観察できる距離まで近づいた。
 結界・障壁(バリア)はなく、地表に動くものは今のところ観測されていない。
「まず周回しながら地表の観察、同時に『魔力探知装置(マギディテクター)』、『魔力流分析機(エーテルアナライザー)』を使って自由魔力素(エーテル)的な活動も探ろう」
 コスモス501はそう指示を出すと、自らは艦の状態をチェックするのであった。

*   *   *

御主人様(マイロード)、情報が更新されました』
「おっ、そうか」
 ずっと司令室に詰めているのも現実的ではないため、仁は途中で休憩を取っていたが、老君からの連絡を受け、戻って来た。
『『ヴァルカン』はヘールを1周いたしました。やはり、目立った活動は確認できません』
「そうか……」
『映像が送られてきております』

 地表の様子がよくわかる映像だった。
「……風化しているな」
『そうですね……。建物がここまで劣化するには1000年のオーダーでしょうね』
「確か移住派と残留派があって、残留派は自然回帰派と隠遁派、だったよな」
『そうです。どうやら残留派は残っていないようですね……』
「待てよ、そうしたら『ディスアスター』や『支配装置(ビヘルシャー)』はどうなるんだ?」
『そこは謎ですね。それを解明すべく、情報を集める必要があります』
「ううん……」
 仁は腕組みをし、考え込む。
「地下に潜った可能性はどうだ?」
『はい、御主人様(マイロード)。その可能性は捨てきれません。地上部の探索が終わったなら、地下施設を探すことになると思います』
「そうだな」
 仁はそれきり黙り込み、魔導投影窓(マジックスクリーン)に映し出されるヘールの風景を見つめた。
 荒野が多いが、ところどころに丈の短い草が生えた草原があり、灌木も疎らに見られる。
「乾燥気味の環境みたいだな」
『はい、御主人様(マイロード)。海の面積も小さいようです。古い惑星だからでしょうか?』
「それはわからないなあ……」
 惑星の一生については仁もさっぱりであった。
 そして移り変わる映像。
 高い山はなく、皆丸みを帯びている。
『こうしてみますと、侵食が進んでいることから、古い惑星だと言えるのかもしれませんね』
「そうだな」
 あるいは、皆資源として使ってしまった可能性もある。
「おや?」
 何かが光った。
「あそこを拡大するよう『ヴァルカン』に指示してくれ」
『わかりました』
 映像が拡大される。
「……透明なドームか?」
『壊れていますが、そのようですね』
 魔族領で資源とされているキュービックジルコニア製のドームかもしれない、と仁は思った。
「やっと人の住んでいた痕跡が見つかったな」
『はい。付近を重点的に捜索しましょう』

 場所は赤道にほど近い高原地帯。
 北側にやや高い山があるためか、雲が湧き、雨もそこそこ降るようで、草原も発達している。
 壊れた元ドームらしきものはあと3つ見つかった。
「数軒が集まっていたのかな。派閥の仲間だったんだろうか……」
 そして『ヴァルカン』は、また違う場所を調査していく。

 途中、仁は食事や休憩のため中座した。
 12時間掛けて『ヴァルカン』は惑星ヘールの地表部の観察を終えたのである。そこから見えてきたこと。
『ヘール人はもう1人も住んでいないようですね』
「うーん、そうだなあ。あとは地下の調査次第だが、望み薄かな」
『とはいえ、可能性ゼロではありません。これより『ヴァルカン』は惑星ヘール内部の自由魔力素(エーテル)の動きについて調査を開始します』
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 お知らせ:11日昼過ぎまで実家に帰っております。その間レスできませんので御了承ください。

 20161211 修正
(誤)「あそこを拡大するよい『ヴァルカン』に指示してくれ」
(正)「あそこを拡大するよう『ヴァルカン』に指示してくれ」
+注意+
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