挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1377/1652

37-19 正月2日

「ああ、お腹空いた……」
 仁たちが雑煮を食べ終わった頃、サキたち、すなわちサキ、グース、ヴィヴィアンが起きてきた。
「おはよう。もういつでも雑煮を食べられるぞ」
「え、『ぞうに』? ……って何だっけ」
 サキは雑煮を知らなかったらしく、首を傾げた。が、グースとヴィヴィアンは目立った反応をしなかったところを見ると、知っているようだ。
「なるほど、これが『雑煮』なのね」
 が、ヴィヴィアンは食べるのは初めてだったようだ。
「ふんふん、仁の所はこういう味付けなんだな」
 グースはミツホ時代に雑煮を食べていたらしいが、味付けが少し違っていたらしい。
「山菜をごってり入れて食べていたなあ」
 とも言っている。
「あ、それはそれで美味しそう!」
 ハンナが目を輝かせている。
「うーん、何を入れたら美味しいかなあ……ヤマネギはちょっと匂いが強すぎるから……カリスとかコロコはいいかも」
 カリスはカンゾウ、コロコはフキに似た山菜である。
「カイナ村風雑煮、というのもいいだろうな」
 ご当地雑煮、というのもあったはず、と仁は思い出した。
 味噌仕立てもあり、それも白味噌赤味噌と違っていたり、餅も丸餅と切り餅の違いがあったり。
 そんなことを考えていたら、シオンとマリッカも雑煮を食べ終わったようだ。

 蓬莱島に降り注ぐ日射しは温かい。
「寒くないっていいわね……」
 シオンがしみじみと呟いた。
「今年こそ、魔族との融和がなるといいな」
 そうすれば、今住んでいる北の大陸から出て、暖かい土地に移り住むこともできるだろう。
 だがシオンはあまり移住には乗り気でないようだ。
「でもやっぱり生まれ育った土地って愛着もあるし」
「そうすると寒い季節に遊びに来る、っていうイメージかな?」
 避寒地、という位置付けで出掛けられるのがいいのかもしれない。
「そうね。それが一番いいのかも。今、ジンのおかげで冬の食べ物にも苦労していないどころか余剰もできているし、暖房の魔導具があるから寒くないしね」
 ただ、雪と氷に閉ざされる土地から離れる物珍しさがあるだけ、とシオンは語った。
「そうか……。そうすると、移動用の乗り物があると、もっと暮らしが楽しくなるのかな?」
「乗り物って……『カプリコーン1』みたいな?」
 『カプリコーン1』は四脚歩行の地上走行車だ。かつて魔族領の探検に使い、シオンも何度も乗っているので馴染みなのである。
「あれでもいいが、量産は難しいからな」
 主に素材の関係で、である。
「でも、もう少し小さくしたものを各氏族に1台ならいけるか。資材を運ぶのに1年中使えるしな」
 仁は呟いた。
「で、俺が考えているのは『スノーモービル』なんだ」
「すのーもーびる?」
「ああ。『スノー』は雪、『モービル』は乗り物、という意味があるんだ」
「それもジンの世界の言葉?」
「そのとおりさ」
 仁はキャタピラの代わりに大型のタイヤを用いて雪や氷の上を走れる乗り物を考えていた。
 それなら雪が消えても使えるからだ。
 『ヘール』問題が一段落したら本格的に取り組むつもりだった。
「楽しみにしてるわ」
 シオンが微笑みながら頷いた。

「ねえおにーちゃん、要するに『悪路』を走れる車を作る、ってこと?」
 それまで黙って話を聞いていたハンナが仁に話し掛けた。
「うん、そういうことになるな」
「条件としてはできるだけ基本的な技術で、で合ってる?」
「合ってるよ」
 『力場発生器フォースジェネレーター』を使って空を飛べば可能なことを、地上車で実現しようとしているわけだ。
 ハンナの理解力には目を見張るものがある。
「ねえマリッカちゃん、魔族領って、雪はどのくらい積もるの?」
「ふぇ?」
 いきなり話を振られたマリッカは一瞬面食らったが、すぐに意図を察すると、
「居住エリアでは積もっても1メートル内外ですね。北の山の方は10メートルくらい積もる場所もあるようですけど」
 と答える。
 それに近い場所に『カプリコーン1』で行ったから仁にも想像は付いた。
「じゃあ、1メートルの雪でも大丈夫な乗り物ならいいわけだね!」
「そうなるな」
 ハンナは、必要な情報をうまくまとめてくれた。さらに。
「ゴーレム馬、じゃ駄目なのかな?」
 と意見を口にする。
「うーん、なるほど。ゴーレム馬か……」
 確かに四季を通じて使うことができるゴーレム馬という選択肢もある。
 1台あたりのコストを考えると、ゴーレム馬もスノーモービルも大差はない。
 仁は『スノーモービル』は自分が作ってみたいがゆえの発想であることを認めざるを得なかった。
「今回はゴーレム馬にしておくか……」
 胴体部にかなりの荷物用スペースを設けることができる。
 素材は『強靱化(タフン)』を掛けた青銅ならコスト的にも有利である。
 農作業にも使える。
「カイナ村でゴーレム馬を使ってるから、その有用性は明らかだしなあ」
「そうだよ、おにーちゃん」
 ハンナの助言により、仁は近々ゴーレム馬を魔族領に贈ることにした。
「いいわね、それ」
 シオンもカイナ村でゴーレム馬を見たことがあるので、どれ程有効か、よく知っている。
「じゃあ、余裕ができたら作るか」
「あ、その時あたしも呼んで?」
 ハンナも作るところを見ていみたいらしい。
「ああ、いいよ」
「わーい!」
 ハンナがこうした技術を覚えたら、将来どうなるのだろう……と、楽しみなようでもあり、少し怖くもある仁であった。

「でもジン、支払いはどうするの? 魔族領にそんな対価を用意できるとは思えないんだけど」
 シオンが不安そうに言う。確かに、今の魔族領には輸出すべき産物は少ない。
 魔物の毛皮と、埋もれた過去の遺跡から採れるキュービックジルコニアが主な産物だ。
 仁には十分ありがたいのだが、確かにゴーレム馬との交換には少し弱い。
「うーん、考えておくよ。……そうだ、マリッカなら、何かオノゴロ島から引き出せるんじゃないか?」
「あ、そ、そうですね!」
 マリッカもそのことには気が付かなかったらしい。
「そ、相談してみます……でも、あそこは魔族領のものってわけじゃなく、このアルスの……もう1つの守護者だと思うんですけど」
 1つは蓬莱島、そしてもう1つがオノゴロ島。
 北半球と南半球に位置し、ちょうど惑星の反対側同士の2島。

「うんうん、不思議よね!」
 よくわかっていないヴィヴィアンも話に加わった。見ればサキとグースもいる。
 正月2日の蓬莱島は平和であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 お知らせ:10日(土)早朝から11日(日)昼過ぎまで実家に帰って参りますのでその間レスできません。御了承ください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ