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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-18 魔族領のこれからを思う

 新年会も和やかなうちに終わり、仕事を抱えているものはそれぞれの家へ、そうでないものは蓬莱島に泊まることになった。
 お泊まり組はサキ、グース、ヴィヴィアン、ハンナ、シオン、マリッカ。ミーネはここが半分家のようなものなので(自室も持っている)お泊まり組とは言わない。
 ミロウィーナは名残惜しそうに戻っていった。

「ふうん、なるほどな」
「いろいろあるものねえ……」
 グースとヴィヴィアンは、老君の移動用端末『老子』から、詳しい経緯を聞いている。
 特に興味のある点は根掘り葉掘り聞いている。
 サキは飲み過ぎて眠ってしまっていた。
 疲れが溜まっていたところにアルコールが入ったものだから簡単に酔いつぶれてしまったようだ。

 ハンナ、シオン、マリッカは仁と一緒にカルタで遊んでいた。
 読み札を読むのはエルザ。
「花より団子」
「はいっ!」
 意外なことにマリッカが強い。次はハンナ。仁は元々本気を出していないが、シオンが意外と弱いのだ。
「犬も歩けば棒に当たる」
「……はいっ!」
「旅は道連れ世は情け」
「はいっ!」
「手を上げて横断歩道を渡りましょう」
「はいっ! ……『おうだんほどう』って、何?」
 仁としては百人一首を作りたかったのだが、100枚全部を覚えているはずもなく、カルタにしたのである。
 そのカルタにしても、いろはカルタや交通安全カルタなどが混じっているのはご愛敬。

 午後11時を回ると、ハンナがあくびをして眠そうだったのでお開きにする。
 カイナ村時間では9時半過ぎ。ハンナはいつも午後9時には寝ているのだから、無理はない。
「さあ、もう寝ようか」
「うん……」
 正月だからといって際限なく起きているのはよくない……とは、施設時代に院長先生からもらったお小言だったりする。
「シオンとマリッカはどうする?」
「うーん、お風呂入りたいな」
「あ、わ、私もです」
「いいともさ」
 24時間いつでも入れる掛け流しの温泉。
 エルザも一緒に入りに行った。

 仁は酔いつぶれたサキの様子を見に行った。
「うう……頭が痛いよ、ジン」
「しょうがないなあ」
 仁は礼子に頼んで『解毒(デトックス)』をサキに掛けてやった。
 『解毒(デトックス)』は治癒師サリィが開発した治癒魔法で、毒素を抜く効果がある。
 アルコールが分解してできたアセトアルデヒドなどを手早く分解消去することで二日酔いからの回復を早める効果がある。
 併せて水も飲ませることで、サキは少ししゃんとなった。
「ああ、大分気分が楽になったよ」
「そりゃよかった」

 グースとヴィヴィアンはと見れば、まだ老子と話している。
 子供ではないので、眠くなれば寝るだろうと、ゴーレムメイドにあとを頼んで仁は寝ることにした。
「……サキ?」
 が、サキはグースたちのところへ行き、話に加わっていた。
「まあ、いいか」
 サキも色々思うところがあるのだろうと、仁は『家』へと向かう。
 もうエルザは風呂から上がっていて、濡れた髪を乾かしていた。
「シオンとマリッカは?」
「もう上がって、研究所の客間へ行ってる」
「そっか。……今日は楽しかったな」
 仁が言うと、エルザは頷いた。
「ん、今日は、楽しかった」
 忙中閑あり、ではないが、ヘールのことで日夜神経を磨り減らしていたところに、こうした息抜きができたことは正直有り難い。
「また明日から色々忙しくなるだろうけど」
「ん、サポートは、任せて」
「頼りにしてるよ」
 そして仁とエルザはゆっくりと休んだのである。

*   *   *

 1月2日の朝。
 仁が起きると、エルザは少し前に起きたようで、洗面所で顔を洗う音が聞こえた。
「おはよう」
 仁も着替えて洗面所へ行く。
「おはよう、ございます」
 ちょうど顔を洗い終わったエルザと入れ替わりに、仁は洗面所へ。
「みんなはどうしたろう?」
 顔を洗い終えた仁は、エルザと連れ立って研究所へ行ってみた。
「おにーちゃん、おはようございます!」
「おはよう、ジン!」
「おはようございます、ジン様」
 ハンナとシオン、マリッカはもう起きていて、顔も洗ったようだ。
 残りの面々……サキ、グース、ヴィヴィアンはまだ寝ているらしい。
「まあいいさ。じゃあ俺たちだけで先に雑煮食べよう」
「『ぞうに』って?」
 シオンが不思議そうな顔で尋ねる。
「ああ、今来るから待ってろ」
 ハンナは昨年も食べているし、シオンやマリッカは好き嫌いがほとんどないことを知っているので、仁は雑煮も問題なく食べられるだろうと思っている。
 そしてペリド3が雑煮を持ってやって来た。
「これが『ぞうに』?」
「そうさ。俺のいた世界ではお正月……新年にはよく食べるんだ」
「これって……『お餅』って言ったかしら?」
「そうそう。それを雑煮専用の汁で食べるんだ」
「へえ……」
 器用に箸を使い、シオンは餅を口に運んだ。
「あ、あひゅい」
 熱かったようだ。
「はは、気を付けろよ」
 仁は猫舌なので餅を食べるときは特に気を付けている。
「……でも、美味しい」
「本当に美味しいです!」
 魔族領でも食生活は豊かになってきているようだが、まだまだな点も多い。
 今のところ、仁が、つまり蓬莱島が毛皮やキュービックジルコニアと食料の交換をしているが、今年は『世界会議』において、魔族領との正式な友好が締結されればいいな、と思った仁である。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161209 修正
(誤)訪中閑あり、ではないが、ヘールのことで日夜神経を磨り減らしていたところに
(正)忙中閑あり、ではないが、ヘールのことで日夜神経を磨り減らしていたところに
 訪中してどうする orz

(誤)「ああ、大分気分が楽になったよ」」
(正)「ああ、大分気分が楽になったよ」
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