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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

1375/1534

37-17 年の初めに

「さあ、お年玉だぞ」
 仁は領主として、カイナ村の子供たち……15才以下の子供たちにお年玉を配った。
「わーい!」
「ありがとう、ジンにーちゃん!」
 子供たちは相変わらず仁のことを『ジンにーちゃん』と呼ぶし、仁もそれを咎めない。むしろそう呼んでもらえることを幸せに思っている。
 仁にとってカイナ村は第2の故郷だからだ。
 故郷の子供たちはみんな仁の『家族』である。
 施設育ちの仁ならではの感覚かもしれないが、仁はそれでいいと思っている。

 因みにお金ではなく、綺麗な魔結晶(マギクリスタル)を磨いたものが入っている。
 換金すればおそらく1000トール(約1万円)は下らないであろうが、子供たちはお金に替える気は毛頭なかった。
「わあ、きれいな石!」
「だいじにするね!」
 そんな子供たちを、仁はにこにこしながら見つめていた。
 リタやルウなど、昨年やって来た少女たちもすっかり村に馴染んでいるようだ。
「ジン様、おかげさまで幸せに暮らしております」
 そしてバロウとベーレも、村で牧畜を担当して穏やかに暮らしているようだ。

 さて、新年の挨拶を済ませた後は、領主である仁から村人への振る舞い酒だ。
「おおー!」
「これが楽しみなんだよなあ」
「あ、この酒知ってるぜ!」
 仁としても貯まる一方の資金をこうして使うことは世界経済の活性化にも繋がるということで、極力お金ではなく物資を貯め込むことにしている。
 酒もその1つで、アルコール度数の高い、保存の利くものを買い溜めしてあって、その一部を放出しているのである。
 いつもは飲み過ぎに口やかましいおかみさんたちも、新年会ということで何も言わない。
 また、蓬莱島特製の回復薬もあるため、二日酔い・飲み過ぎもすぐに治せるのだ。

 午前11時まで仁はカイナ村で新年会を楽しんだあと、ロイザートへと移動した。後のことは分身人形(ドッペル)に任せる。
 エルザは先に『屋敷』に帰って仁を待っていた。
「屋敷の皆も、新年明けましておめでとう。今年もよろしく頼むよ」
 と、ゴーレムメイドたちに声を掛けた仁は、手早く身支度を済ませた。
 そしてロイザート時間で午前9時、仁は宮城(きゅうじょう)へ出向いた。
 女皇帝が重臣たちと新年の顔合わせを行う、その一人として。

「皆、今年も新年を無事迎えられたことを嬉しく思います」
 大広間に女皇帝の声が響く。
「今年もまた、さまざまな問題が立ちはだかるでしょう。ですが、私たちはよりよい未来目指して歩みを止めず、進んで行かなくてはなりません」
 世界会議、世界警備隊という問題がある。
「……3459年がよい年になるよう、我々は尽力していきましょう……」
 そして女皇帝の挨拶は終わりを告げる。
「本日は顔合わせだけです。英気を養い、今年も国のため、民のため、働いて下さい」

*   *   *

 午前中に『屋敷』に戻って来た仁は、エルザと共に改めて蓬莱島へと移動した。
 夜、『仁ファミリー』の皆を招いて新年会をする予定なので、その確認をするためだ。
「おお、もうすっかり整っているな」
「はい、ご主人様」
 5色ゴーレムメイドが朝から張り切って仕度していたので、もう温かい料理を除き、全て準備完了していた。

「やあジン、明けましておめでとう」
「仁、明けましておめでとう」
 最初にやって来たのはサキとグースだった。
「ボクらは公務もないし、暇だからね」
 とはサキの言葉。
「おにーちゃん、明けましておめでとうございます!」
「ジン、明けましておめでとう」
「明けましておめでとう、ハンナ、マーサさん」
 その次にやってきたのはマーサとハンナだった。
 カイナ村での挨拶は村人全体に向けてのものだったのでこの場で改めて挨拶だ。
「ジン君、明けましておめでとう」
 そしてユニーからミロウィーナが。
「ジン、明けましておめでとう!」
「明けましておめでとう」
 マルシアとロドリゴの父娘が。
「ジンさん、明けましておめでとうございます」
 リシアが。
「ジン様、明けましておめでとうございます」
「ジン、明けましておめでとう」
「だー」
 ラインハルトとベルチェ夫妻が、愛娘ユリアーナと共に。
「ジン君、明けましておめでとう」
「明けましておめでとう」
 トアとステアリーナが。
「明けましておめでとうございます。……この挨拶、いいわよね」
 ヴィヴィアンが。
「ジン、明けましておめでとうございます!」
「ジン殿、明けましておめでとう」
 ビーナとルイス・ウルツ・クズマ伯爵が。
「ジン様、明けましておめでとうございます。……これでいいんでしょうか?」
「ジン、明けましておめでとう!」
 マリッカとシオンが。
 もちろん、エルザの実母ミーネは、朝から蓬莱島でゴーレムメイドと共に新年会の仕度をしていたので、これで全員揃ったことになる。

「改めてみんな、明けましておめでとうございます」
「おめでとうございます!」
 仁の挨拶で新年会は始まった。

 主な話題は、まずなんといっても『ヴァルカン』をはじめとするヘール探査について。
 技術的な部分は省き、仁は出来事だけを説明した。
「へえ、そうなっているの……」
「なかなか複雑なんだね」
 このあたりの事情に一番疎いのはマルシアやビーナだ。
「ヘールがどうなっているか、興味深いわね」
「そうですね」
 シオンとマリッカはある意味当事者であるから、ことの成り行きには興味津々だ。

 それから話題はビーナとルイスのこと……つまり、今年誕生するはずの2世の話に。
「予定は5月頃だっけ?」
「男の子と女の子、どっちが欲しい?」
「もう大分大きくなったわね」
「大事なときだから気をつけなきゃ駄目よ。ほら、座っていなさい」
 そんな賑やかな女性陣を横目に、仁、ラインハルト、ルイスの3人は隅の方で飲んでいた。
「ジンのところもそろそろじゃないのか?」
 とラインハルト。
「あのエルザが母親になるというのは従兄として感慨深いものがあるが」
「気が早いぞ。エルザは何も言ってないし」
「だが時間の問題だと思うぞ」
 そこへ当のエルザがやって来た。
「何の話?」
 エルザ、という名前が話題に挙がったのを耳にしたらしい。
「い、いや、何でもないよ。雑談さ」
「そうそう。エルザ殿、お気になさらず」
「そう?」
 小首を傾げるエルザ。
 面と向かって子供の話をするのは失礼だろうと、ラインハルトとルイスは誤魔化したのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161208 修正
(誤)また、蓬莱島特性の回復薬もあるため、二日酔い・飲み過ぎもすぐに治せるのだ。
(正)また、蓬莱島特製の回復薬もあるため、二日酔い・飲み過ぎもすぐに治せるのだ。

(誤)「い、いや、何でもないよ。雑段さ」
(正)「い、いや、何でもないよ。雑談さ」

(旧)そんな子供たちを、仁はにこにこしながら見つめていた。
(新) そんな子供たちを、仁はにこにこしながら見つめていた。
 リタやルウなど、昨年やって来た少女たちもすっかり村に馴染んでいるようだ。
「ジン様、おかげさまで幸せに暮らしております」
 そしてバロウとベーレも、村で牧畜を担当して穏やかに暮らしているようだ。

 ここで触れておかないと……。

 20161211 修正
(誤)「ジン、明けましておめでとう」
(正)「仁、明けましておめでとう」
 グースは仁をネイティブ発音できるんでした。
+注意+
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