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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-16 新年

 3458年も残すところあと僅か。
 大晦日の夜は仁とエルザの2人きり。夫婦水入らずで更けていく。
 畳敷きの部屋には仁お手製の火鉢が置かれ、『火属性の魔結晶(マギクリスタル)』が赤々と熱を発している。
 木炭も作ってはいるが、一酸化炭素中毒になりたくない仁の工夫であった。
 火鉢の上ではアダマンタイト製の鉄(?)瓶が湯気を上げている。
 掘りごたつの上にはミカンのかわりにシトランの入った籠が置かれている。

 礼子はと言えば台所でせっせと『年越しそば』作り。
「はい、お待たせしました」
「おお、ありがとう、礼子」
「レーコちゃん、ありがとう」
「いいえ」
 仁は拘りのもりそば、エルザは温かい天ぷらそばだ。
「うん、美味い」
「レーコちゃん、美味しい」
「ありがとうございます」
 仁はそば湯を、エルザはそば茶を飲む。
「今年も色々あったなあ……」
 しみじみと仁が呟いた。
「崑崙君になって、セルロア王国で国王交代があって、ロクレと一悶着あって」
「ん。……ミツホへ行って、グースさんと出会って、先代様のことや賢者(マグス)のことを知って」
 エルザもしみじみと1年を振り返る。
「だな。……宇宙船作って、ユニーへ行って、ミロウィーナに会って」
「世界会議があって、モノレール作って、ゴーレム競技(ゴンペテイション)があって」
「一番は、やっぱり、け、結婚した、……こと」
「ああ、そのとおりだな。国々を巡ったあと、新婚旅行にも行ったし」
「暴食バッタ、過去のゴーレム、長周期惑星」
「オノゴロ島にディスアスター……か」
 濃い1年だった、と仁も思う。
「なんか1年9ヵ月くらいの歳月が流れた気がするよ……」
「ジン兄、さすがにそれは、気のせい」
「だろうな」
 やっぱり除夜の鐘が聞きたいなあ、と仁が思っていると、どこからともなく鐘の音が聞こえてきた。
「あの音……昨日から職人(スミス)1が何かやっていると思ったら……」
 どうやら、老君の指示で職人(スミス)1が鐘と鐘撞き堂を造ったらしい。
 仁は老君の気配りというか気遣いに感謝した。
「俺の故郷では、大晦日にあの鐘を108回撞いて、108ある煩悩を追い出す、というんだよ」
「面白い、風習。興味深い」
 グースやヴィヴィアンが食い付きそうだと仁も思った。
 そして深夜となり。
『あけましておめでとうございます』
 老君の声が響いた。3459年の始まりである。

「明けましておめでとう、エルザ」
「明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとう、礼子」
「お父さま、明けましておめでとうございます」
「老君、今年もよろしく頼む」
御主人様(マイロード)、こちらこそよろしくお願いいたします』
 そして仁はソレイユ、ルーナをはじめとして、蓬莱島ゴーレムたちのリーダーから新年の挨拶を受けた。
「さて、仮眠したらカイナ村へ行くか」
「ん」
 領主として一言挨拶したい、と仁は考えていた。
「そのあとはロイザートへ行って皇城で新年の挨拶だな」
 ショウロ皇国民であるエルザの夫としての務めである。
 それで公務は終わりとなるはず、と仁は言った。
「夜からはファミリーのみんなを呼んで宴会だ」
「ん、準備しておく」
「頼むよ」

*   *   *

 時差もあるので、仁たちは仮眠と言うよりも普通に睡眠を6時間とることができた。
 外は薄明るくなっている。
「お父さま、そろそろです」
 礼子が教えてくれる。
「よし、外に出よう」
 冬とはいえ、北回帰線上にある蓬莱島は寒くない。
 仁はエルザを連れ、礼子に先導されて表に出、研究所に向かう。
 階段を登って屋上へ。
 東の空が茜色に染まっていた。
「初茜だな」
 そして新年の日が昇る。
「初日の出だ」
「綺麗」
「お2人とも、寒くありませんか?」
「ああ、大丈夫だ。ありがとう、礼子」
 研究所屋上で初日の出を眺める仁とエルザ。その顔は昇ったばかりの太陽に照らされ、空と同じ茜色をしていた。

*   *   *

「うん、美味い」
 仁とエルザは『家』で雑煮を食べていた。
 醤油ベース、コカリスクガラとボア肉系の出汁で作られた汁に、カマボコと葉野菜を入れたシンプルなタイプだ。
 餅は角形。
 仁は餅を7個、エルザは3個。
「ああ、美味しかった」
 ペリドリーダー渾身のお雑煮に、仁とエルザは舌鼓を打ったのである。
 お節は黒豆、田作り、蓮根の煮物、きんとん、伊達巻き、紅白カマボコ、海老の鬼殻焼き、きんぴらゴボウ、昆布巻き……にそれぞれそっくりなものだった。
 5色ゴーレムメイド全員の合作である。
 それらを少しずつ摘んだ仁は、食後のほうじ茶を飲みながらお腹をさすっていた。
「少し食べ過ぎたかも」
 隣ではエルザが苦笑気味に微笑んでいる。

 時刻は午前9時を回った頃、仁はまず二堂城へと移動した。
 事前に新年会を行うと通達がっている。
 カイナ村は午前6時40分。初日を見る習慣はないのと、この日のカイナ村は小雪がちらついていたため、村人は子供たちを含め、皆大広間に集まっていた。
「皆さん、明けましておめでとう!」
 昨年、仁が広めた新年の挨拶だ。村人全員がそれに唱和する。
「あけましておめでとう!!」
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