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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-15 1年の終わり

 中継基地らしきものが停止した理由についての考察はまだ続く。
自由魔力素(エーテル)が濃いのは、濃度を高める『自由魔力素凝縮器(エーテルコンデンサ)』のようなものがあって、機能しているからか」
『はい。ハンナちゃんが提唱した『自由魔力素(エーテル)転送装置』、そのシステムと照らし合わせますと、あそこからヘールへ送り出すためには自由魔力素(エーテル)濃度を高めておいた方が効率がいいはずですから』
「偶然なのか、必然なのか」
 自由魔力素(エーテル)の受け入れと自由魔力素凝縮器(エーテルコンデンサ)以外の魔導具・魔導機(マギマシン)が故障してしまった事実。
「『自由魔力素凝縮器(エーテルコンデンサ)』は、その機能上、高い自由魔力素(エーテル)濃度への耐性があったからだろうな……」
 その真相は、今となっては想像するしかなかった。

「とにかく、アルスから送られてきた自由魔力素(エーテル)の行き着く先があそこだった、ということだな」
『はい、御主人様(マイロード)。それは間違いないでしょう』
「そうすると……」
 仁はちょっと考えて、意見を口にする。
「あそこへ自由魔力素(エーテル)を送り込んでいるのはアルスからではなくて、もう一つの中継基地ということか?」
『その可能性は高いですね』
 こちらの中継基地は、太陽セランとヘールとを合わせて正三角形となるポジションだ。もう1つあるとすれば、それは太陽セランとアルスとを合わせて正三角形となるポジションだろう。
「そちらの調査も必要かな?」
『そうですね。おそらくそちらも故障しているでしょうから、緊急性はないですが』
 アルス側の中継基地も、おそらく魔素暴走エーテル・スタンピードの影響で大半の機器が故障していると推測される。
 そういう意味で緊急性はないが、万が一ということもある。
「偵察用宇宙船を送り出すか」
『それがいいと思います』
「よし、『ヘルクレス』『アキレウス』の2隻を送り出してくれ。あくまでも偵察だ。危険は犯すな」
『わかりました』
 老君は仁の指示に従い、偵察用宇宙船を送り出したのである。

*   *   *

 『ヴァルカン』は、『中継基地・2』と名付けた停止した基地を引き続き調査し、自由魔力素凝縮器(エーテルコンデンサ)以外停止していることを再確認した。
御主人様(マイロード)、どういたしますか?』
「そうだなあ……1000倍から2000倍の自由魔力素(エーテル)濃度か……せっかく集めたものを霧散させるのももったいない気がするなあ」
 なかなか貧乏性な仁である。
『でしたらこのままに?』
「それでいいだろう。わざわざこんな場所へやって来る物好きがいるとも思えないし、いたらいたで自分で何とかするだろう」
 いずれ利用方法を思いついたらその時のこと。
『わかりました。それではいよいよ『ヘール』へ向けて発進ですね』
「そうなるな。だが、障壁(バリア)があるということだから、慎重にいこう」
『承知しております』

 こうして、12月28日、『ヴァルカン』はヘールへ向けて再発進したのである。
 速度はこれまでより抑え、最高速度は秒速200キロ程度にとどめ、慎重にいく。

*   *   *

 一方、『ヘルクレス』『アキレウス』の2隻は30日に予定のポジションに到達した。
『やはり……』
 そこには、予想したとおり、『中継基地・2』と同型の『中継基地・1』が浮かんでいたのである。

「やはりあったな」
『はい、御主人様(マイロード)。これより調査を開始します』
「慎重にな」
 まずは『覗き見望遠鏡(ピーパー)』による観察だ。
 『中継基地・2』と同型なので、効率はよい。
『正に同型ですね。寸分違わないといっていいでしょう』
 1時間ほどの調査で、老君はそう結論づけた。
『しかし、こちらは稼働している魔導機(マギマシン)が多いですね』
「だろうな。南極にあった『中継基地』が自由魔力素(エーテル)を送り出していたのもここ宛なんじゃないか?」
『その可能性は大ですね』
 こうしてかつての『ヘール人』、すなわち『始祖(オリジン)』が作り上げたものを見ていると、尊敬の念を覚えると同時に、やや効率の悪さも感じる仁である。
 それはひとえに彼等が個人主義者で、横の連係が取れていなかったからではないか、と仁は推測している。
「俺も気を付けないとな」
 自戒しつつ、仁は調査結果に耳を傾けていく。
御主人様(マイロード)、やはりここの『自由魔力素(エーテル)転送装置』は動いています。おそらく『ディスアスター』から送られてきた自由魔力素(エーテル)はここで中継されるのでしょう』
「そうだろうな」
 それには仁も同意である。
「物資も、だろうな」
 魔素暴走エーテル・スタンピードを起こさせる魔導具は、そうした資材に紛れ込んだ可能性もある、と仁は思い付きを口にした。
『それはありそうですね。いずれにせよここの施設はより慎重に調査を進める必要があるでしょう』
「同感だ。『しのび部隊』を派遣するか?」
『それがいいですね。偵察用宇宙船の転移門(ワープゲート)がありますのですぐ送り込めます』
「よし、頼んだ」
『はい、お任せください』

*   *   *

 ところで、この世界の暦では、12月30日で1年が終わる、つまり大晦日である。
 蓬莱島の研究所と『家』をはじめ、崑崙島の『屋敷』、五常閣、翡翠館、そしてロイザートの屋敷では、五色ゴーレムメイドが大掃除を進めていた。
 本来の『煤払い』は、江戸時代では12月13日だと、仁が世話になった院長先生は言っていた。
 そして院長先生は、施設の片隅にある竹藪から何本も笹を切ってきてそれを束ね、天井や庇の裏などをそれで掃除していたものだ。

「あー、すっかり仕度が調っているな」
 『家』に足を踏み入れた仁は、正月を迎えるための飾り付けが済んでいることを見て取った。
「ん、ジン兄、老君に教わりながらやってみた」
 とはエルザの言葉である。
 忙しい仁に代わり、日本風の年越しと正月の準備を進めてくれていたのだ。
「一夜飾りはいけない、っていうし」
 一夜飾りとは、大晦日の日に慌てて飾り付けをすることである。
 年神様に不敬であり、かつ葬儀はおしなべて一夜飾りであることからこれを忌む、という。
 こうした話も仁は院長先生から聞かされており、老君にもそういった雑学的な知識が伝わっていたのだ。

「鏡餅はペリドリーダーが、作った」
 かつてミツホで見ていた鏡餅。
 木の三方に載せられ、上にはシトランが載っていた。
 本来は『家が代々(・・)栄えるように』と『だいだい』を載せるのだが、ないのだからこればかりは仕方がない。

「少しだけでも、気分転換して欲しいと、5色ゴーレムメイドたち、頑張った」
 ヘール絡みのごたごたで気が休まるときのない仁への気遣いである。
「気づかいはエルザもだろう? ありがとな」
 仁は素直に礼を言った。
「ん、じゃあお風呂に入ってきて?」
「ああ、そうだな」
 気がつけば夕暮れ。激動の3458年は終わろうとしていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161206 修正
(誤)おそらく『ディスアスター』から送られてきた自由魔力素(エーテル)はここで中継されるのです』
(正)おそらく『ディスアスター』から送られてきた自由魔力素(エーテル)はここで中継されるのでしょう』
+注意+
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