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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-14 溜め息

『ほとんどの機器が停止していますね』
「うん。それを直そうともしなかったようだな。あるいは直せなかったのか」
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』による調査は進んでいく。
「動いているのは……何だ? この魔導機(マギマシン)は」
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』による観測だけでは、仁といえども100パーセントの解析は困難である。
『管理魔導頭脳がありました』
「何!?」
 そしてついに、大きな情報源を見つける。
 だが。
『破損していますね』
「ああ……残念だ」
 原因は不明だが、その制御核(コントロールコア)は欠けていたのだ。
「だが、断片的にせよ情報は読み取れるだろう。コスモス隊に調査を行わせよう」
『それがいいですね』
 脅威もなさそうなので、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』による観測から、コスモス隊による直接的な調査へとステージは切り替わることになったのである。

*   *   *

 バトルスーツに身を包んだ10体のゴーレム。
 コスモス591から600である。
 数分で『ヴァルカン』から球体表面に到着。
[侵入経路を探せ]
[了解]
 それは数分で見つかった。『ヴァルカン』の『覗き見望遠鏡(ピーパー)』によるサポートのおかげである。
 内部に、目に見える罠や障害がないことも『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で確認。
 コスモス隊は緊急用ハッチから無事内部に入ることができた。
 その部分はエアロックになっており、球体内部は0.8気圧に保たれていることがわかる。
[気体成分は窒素が多いようですね]
[金属類の保護のためかもな]
 使われている金属は『クロムバナジウム鋼』であった。『ニッケルクロムモリブデン鋼』を使っていた『ディスアスター』とは系統が異なる可能性がある、と仁は思った。
 奥へと向かうコスモス10体は付かず離れず、周囲の警戒と観察を行いつつ歩を進める。
[これは珍しいですね]
 コスモス595が、途中で見つけた資材倉庫を指差した。
 そこにはヘール系の基地で初めて見る素材……生体素材らしきものが保管されていたのだ。とはいえ、長い年月を経て干涸らびてしまっていたが。
[ドラゴン系の皮革のように見えますね]
 一応サンプルを採取しておく。
 そして更に奥へ。

 廊下はところどころ隔壁で区切られており、気密を保つ役割を果たしていた。ロックはされておらず、手動で簡単に開いたので移動に困難はない。
[ここから重要施設に入るようです]
 隔壁の大きさが明らかに違う。同じくロックはされていなかったので通過は簡単だったが、その際確認した扉の厚みも、それまでの3倍はあった。
[うむ、魔導機(マギマシン)があるな。壊れているようだが]
[この壊れ方は不可解だ]
 コスモス597と598は手近な魔導機(マギマシン)を調べてみた。
[用途は不明だが、エネルギー系……魔力炉(マナドライバー)が破損しているな]

 そして、そうした魔導機(マギマシン)は一基ではなかった。
[こちらもそうだな]
[こちらもだ]
 見つかった魔導機(マギマシン)は、全て魔力炉(マナドライバー)が破損していたのである。

 確認という名の寄り道をしながらであったが、コスモス隊は『自由魔力素(エーテル)転送装置』を見つけた。その数、5基。
[これもエネルギー系……魔力炉(マナドライバー)が破損していますね]
 コスモス593が言った。
 そして、コスモス594が、ついに目的の物を見つけた。
[ここに魔導管理頭脳がありました!]
[よし]
 コスモス591と592が解析を行うことにする。
[ふむ……やはり制御核(コントロールコア)が割れているな]
 原因は不明だが、それが停止した原因に間違いはない。
 壊れた制御核(コントロールコア)を取り外したコスモス591は、まず『知識確認(リードインフォ)』を掛けてみることにした。
 知識確認(リードインフォ)は工学魔法。『知識転写(トランスインフォ)』とは異なり、転写はせず、ただ読み取るだけ。老君のように処理能力がないと、読み出しは一瞬なのであまり意味がない。
「これは……?」
 だが、コスモス隊の情報処理能力は十分に速い。
 一瞬流れた魔導式(マギフォーミュラ)命令(コマンド)、情報文を一瞥し、コスモス591は一部とはいえ過去の出来事を知った。

*   *   *

御主人様(マイロード)、重要な報告が入りました』
「うん、聞かせてくれ」
『はい。……正確な年代の特定は難しいですが、調査中の施設が停止したのはおよそ300年前です』
「300年前……」
 魔導大戦の頃ということか、と仁は思い当たった。
『はい。ご想像のとおりだと思います』
 300年前といえば魔導大戦。そして自由魔力素(エーテル)に影響を与える外的な要因といえば『魔素暴走エーテル・スタンピード』である。
「『魔素暴走エーテル・スタンピード』が、ここにまで影響を及ぼしたというのか!?」
『はい、御主人様(マイロード)。そうとしか考えられません』
「しかし、何がどうなって……」
 『魔素暴走エーテル・スタンピード』は、要はごく短時間に自由魔力素(エーテル)を消費させてしまう魔法だ。
「『自由魔力素(エーテル)転送装置』を伝わってこちらにまで影響を及ぼすものなのかな?」
『私には何とも答えかねます』
「うーむ……」
 『魔素暴走エーテル・スタンピード』は、特殊な波長と波形を持った魔力線によって、自由魔力素(エーテル)を光に変えてしまう戦略級魔法だ。
 この時、魔力素(マナ)も分解されて自由魔力素(エーテル)に戻るので、依存性の高い生命体にとっては致命的である。
 これが遠く離れた中継基地の魔力炉(マナドライバー)を破損させることができるのだろうか、と仁は考えた。

「問題点は2つ考えられる。1つは『魔素暴走エーテル・スタンピード』で魔力炉(マナドライバー)が壊れるのか? ということ」
 かつて魔族領で『デキソコナイ』が仕掛けた小規模な『魔素暴走エーテル・スタンピード』の際、そばにいたアンは停止しただけであった。
『もう1つは、離れた場所にまで影響が及ぶのか、ということですね』
 魔力波まで転送できるとは思えない。
 仁と老君はさらに考え込んだ。

「『魔素暴走エーテル・スタンピード』は自由魔力素(エーテル)を光に変えるわけだ。通常なら、破壊的な効果は起きないだろうが、自由魔力素(エーテル)濃度が通常より高かったらどうだ?」
 1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度がある場所で『魔素暴走エーテル・スタンピード』が起きたら?
 通常なら無害な『光』も、1000倍になったら破壊的な威力を発揮するかもしれない。
 今となってはそれくらいしか考えられなかった。

『離れた場所まで影響が、という点につきましては、もしかしたら『魔素暴走エーテル・スタンピード爆弾』の1つが転送に巻き込まれたのではないでしょうか』
「なるほど……」
 『デキソコナイ』も、銀色のボールを使って『魔素暴走エーテル・スタンピード』を起こしていた。
 かつての魔導大戦時、『魔素暴走エーテル・スタンピード』を起こしたそうした魔導具の1つが、たまたま転送物資に紛れ込んだら。
「そう考えるしかないか」
 仁は溜め息をついた。
 元々『魔素暴走エーテル・スタンピード』は、始祖(オリジン)もしくはその子孫が開発した魔導技術だ。
 巡り巡ってこの施設を破壊したのだとすれば。
「因果、としか言いようがないな……」
 仁はもう一度溜め息をついたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161205 修正
(誤)その部分エアロックになっており、球体内部は0.8気圧に保たれていることがわかる。
(正)その部分はエアロックになっており、球体内部は0.8気圧に保たれていることがわかる。

(誤)生体素材らしきものが補完されていたのだ。
(正)生体素材らしきものが保管されていたのだ。

(誤)見つかった魔導機(マギマシン)はあ、全て魔力炉(マナドライバー)が破損していたのである。
(正)見つかった魔導機(マギマシン)は、全て魔力炉(マナドライバー)が破損していたのである。

(誤)300年前いえば魔導大戦。
(正)300年前といえば魔導大戦。
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