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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-13 トラブル

 宇宙空間を行く『ヴァルカン』は、今は直線でヘールに向かうのではなく、アルスの軌道に沿って飛んでいた。
 軌道上に何か手掛かりがある可能性があったからだ。
 1日程度回り道になるが、それは問題ではない。情報収集は大切なのだ。
 そして、何か見つかる可能性のあるポジション、ヘールの軌道から60度遅れた場所、ラグランジュ点でいうL5点に近付くにつれ、『ヴァルカン』は速度を落としていった。

 12月27日。
 『ヴァルカン』の艦体に振動が走った。
 魔力反応炉(マギリアクター)が暴走したのである。
 本来、それを精密に制御している機関室のコスモス隊もまた、同じ現象に見舞われていた。
「う……」
 暴走は数秒で収まる。
 仁が製作した『魔力反応炉(マギリアクター)』ならではの信頼性をもって、フィードバックによる自己制御を取り戻したのである。
「い、今の現象は何だ? 艦の損傷はないか? 確認急げ!」
 中央艦橋に詰める艦長、コスモス501は指示を飛ばした。
 すぐに報告が各部署から入ってくる。
「こちら第1機関室。魔力反応炉(マギリアクター)が数秒暴走しました。現在は安定しています」
「こちら第2機関室。魔力反応炉(マギリアクター)が数秒暴走しました。現在は安定しています」
「こちら第3機関室。魔力反応炉(マギリアクター)が数秒暴走しました。現在は安定しています」
「こちら補助機関室。魔力反応炉(マギリアクター)が数秒暴走しました。魔力反応炉(マギリアクター)の一部が破損。航行に支障なし」
 コスモス501は観測室からの報告を求めた。
「こちら第1観測室。障害物は確認できません」
「こちら第2観測室。障害物は確認できません」
「こちら分析班。空間の自由魔力素(エーテル)濃度を測定したところ、ノーマルな宇宙空間の1000倍以上あります。数値は一定していませんが、1000から1200の間くらいです」

 1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度。最早自由魔力素(エーテル)の雲といっていいだろう。そこへ『ヴァルカン』は突っ込んだらしい。
 その結果、魔力反応炉(マギリアクター)が発生するエネルギーも1000倍になる。フィードバックされ数秒で落ちついたが、その数秒でさまざまな魔導機(マギマシン)に過負荷が掛かったのだ。

*   *   *

 この事態はすぐ蓬莱島に報告された。
『1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度ですか……自然発生的なものとは思えませんね』
 自然発生的には考えられない濃度であり、色々弊害を引き起こすと考えられる。
 以前礼子が今は『テスタ』となった『統括頭脳』と対決した際に1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度に曝されたことがあった。
 礼子だからこそことなきを得たが、1つ間違えば停止もしくは破損のおそれもあったのだ。1000倍というのはそれくらい危険な濃度である。
「老君、何が考えられる?」
 仁も知らせを聞き、朝の6時だが司令室にやって来ていた。
『位置的に、ヘールの軌道上約60度後方という点です』
「安定点か!」
『はい、御主人様(マイロード)。ヘール、太陽セラン、そしてこのポイントがほぼ正三角形を描くということは、偶然ではないと考えます』
「なるほどな」
『予定以上に、近傍を慎重に探索させようと思います。その結果、ヘールへの到着が遅れることになりますが。許可いただけますか?』
「いいだろう。特に慎重にな」

*   *   *

 老君からの指示を受け、『ヴァルカン』はさらに減速した。
「周囲の精密な観測を」
「了解」
「了解」
 各部署から応答が返ってくる。
「破損した箇所の修理状況はどうだ?」
「被害は軽微なのであと2時間弱で修理は完了します」
 元々『ヴァルカン』は工作艦なので資材にはこと欠かないし、乗員も全員工学魔法を使える。
 ただ艦体が大きいのでチェックに時間が掛かるだけだ。

 観測を始めて1時間が経過。艦の損傷は全て修理が終わり、動作チェックも完了。『ヴァルカン』は新品同様になった。
 自由魔力素(エーテル)濃度が濃いため、作業効率が高いこともいい方向に働いている。
 そしてさらに2時間が過ぎた。

「軌道平面上、2300キロ前方に物体を発見しました」
 待ち望んでいた報告が入った。今更であるが、耐探知結界を張り、『ヴァルカン』はそちらへ静かに移動する。
 数分で視認できる距離に到達し、『ヴァルカン』は相対的に停止した。

*   *   *

御主人様(マイロード)、ごらん下さい』
「これは球体だな」
『はい。軌道上90度の位置にあったものとは異なるようです』
 外見はつるりとした球体であり、半球だった廃棄された中継基地とは異なる。
「この施設は生きているのかな?」
『報告によれば、魔力素(マナ)の活動は観測できないようですので、停止していると思われます』
「慎重に『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を使ってみよう」

*   *   *

 『ヴァルカン』は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を起動した。
「少し映りが悪いな。動作確認はしたのか?」
 『ヴァルカン』艦長、コスモス501は副長のコスモス502に尋ねた。
「少しお待ち下さい。……ああ、原因が分かりました。濃すぎる自由魔力素(エーテル)のため、通信波が干渉、もしくは散乱されているためと思われます」
「なるほどな。この付近の自由魔力素(エーテル)濃度は?」
「……ノーマルな宇宙空間の3000倍以上あるようです」
「怖ろしい濃度だな。だが、ここが自由魔力素(エーテル)濃度異常の中心であることに間違いはなさそうだ」
 そこで『覗き見望遠鏡(ピーパー)』は球体内部を映し出し始めた。

*   *   *

 まず目に付くのは倉庫類。半分程度は資材で埋まっている。
「ここも倉庫のようだな」
 蓬莱島司令室の仁は独りごちた。
 さらに中心へと『覗き見望遠鏡(ピーパー)』は進んでいった。
「ここからは機器類か」
『そのようですね、御主人様(マイロード)
 そして問題となる魔導機(マギマシン)が映し出された。
「これはもしかして『自由魔力素(エーテル)転送装置』か?」
『壊れていますね。しかも、かなり前に壊れたようです』
 床にうっすらと埃が積もっていたのである。そこから察するに、内部には重力や空気があるようだ。

 そして別の魔導機(マギマシン)が映し出される。
「これも『自由魔力素(エーテル)転送装置』だな」
『何基かあるようですね。そしていずれも故障しているようです』
「整備用ゴーレムはいないのか?」
『お待ち下さい。奥に何かあります』
 そして映し出されたのは異形のゴーレム。が、いずれも稼働停止して時間が経っているようであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161204 修正
(誤)観測を初めて1時間が経過。
(正)観測を始めて1時間が経過。

(旧)そこから察するに、内部には空気があるようだ。
(新)そこから察するに、内部には重力や空気があるようだ。

(誤)そこから察するに、そこから察するに、内部には重力や空気があるようだ。
(正)そこから察するに、内部には重力や空気があるようだ。

(旧) アルス上で人為的に作り出した濃度でも100倍が限界である。
(新) アルス上で人為的に作り出した濃度でも100倍が限界である。以前礼子が今は『テスタ』となった『統括頭脳』と対決した際に1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度に曝されたことがあった。
 礼子だからこそことなきを得たが、1つ間違えば停止もしくは破損のおそれもあったのだ。1000倍というのはそれくらい危険な濃度である。

 20161205 修正
(旧)アルス上で人為的に作り出した濃度でも100倍が限界である。以前礼子が今は『テスタ』となった『統括頭脳』と対決した際に1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度に曝されたことがあった。
(新)自然発生的には考えられない濃度であり、色々弊害を引き起こすと考えられる。
 以前礼子が今は『テスタ』となった『統括頭脳』と対決した際に1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度に曝されたことがあった。
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