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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

1370/1623

37-12 月にて

『おお……』
『すごい』
 ユニーの工廠には、3隻の球形艦が並んでいた。
《基本構造は『ヴァルカン』と同じです》
 ユニーの管理頭脳、『ジャック』が説明を始めた。
 確かに、基本構造は同じなのでわかりやすい。
《異なる点としましては、こちらは工作艦ではなく護衛艦であるということです》
 つまり、戦闘力・防衛力重視である、ということ。
『なるほど。具体的には?』
《はい。まずは質量弾ですね。鉄系の隕石が大量にストックされておりますから、それを所定の形状に加工し、弾丸とします。大体1つ500キロです》
 500キロの質量弾なら、かなりの効果がありそうだ、と仁もその威力を認めた。
 特に、魔法系の障壁(バリア)を抜くには最適だろう。
《それから『力の長杖(フォースロッド)』。これは力場発生器フォースジェネレーターの応用で、目に見えない棒と言えばいいでしょうか。飛来物を弾いたり、押しのけたりできます》
『それは有効だな』
 原理を聞き、仁も作ってみたくなった。
《あとはジン様がお使いになっている魔法転写砲(マギトランスカノン)光束(レーザー)も装備しました》
『わかった』
《ポイントは、破壊力も必要ですが、数を相手にした際も対処できるようにですね》
『なるほど。確かにな』
 仁も先頃まで蓬莱島で航空部隊の改良を行っていたので、『ジャック』の言うことは良く理解出来た。
 その他にも、威力低めの武器や、防御結界の説明を受けたあと、試験飛行となる。

《ジン様、この3隻に名前をお付け下さい》
『そうか。……うーん……』
 考え込む仁と仁D。
 真っ先に思い浮かんだのはオリオン座の三つ星だったが、仁はその恒星名を知らなかったのでパス。
 次に思い浮かんだのが夏の大三角形。琴座のヴェガ、鷲座のアルタイル、白鳥座のデネブ。
 ほぼ同時に冬の大三角形も思いつく。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスである。
『どっちにするか……うーむ』
 しばし悩んだ後、今は冬なので、
『よし、『シリウス』『プロキオン』『ベテルギウス』にしよう』
 と、冬の大三角形からに決定した。
《ありがとうございます》

 『シリウス』『プロキオン』『ベテルギウス』は、順にゆっくりと浮かび上がっていく。
 3隻はまずユニーの上空2000メートルの位置に静止。
《機関出力、制御に問題なし。続いて飛行テスト》
 3隻は並んで動き始めた。
 そのまま、正三角形の編隊を組み、宇宙空間を疾駆する。
《通常最大加速度、20Gに問題なし》
 この3隻が仁の作った宇宙船と根本的に異なる点が1点ある。
 それは、操作する『者』がいないということだ。
 とはいえ、人型の『者』がいないという意味であり、制御する『もの』はいる。
 それは船と同名の管理頭脳。船の隅々まで管理を行っている。
 ゆえに、耐加速度の上限も高いのである。
『順調だな』
《はい、ジン様》
 さらに武装のテストも行われ、いずれも問題は見つけられず、この日のテスト飛行は終了となった。
 エルザは仁より一足早く『分身人形(ドッペル)』の制御をやめ、『家』に戻っている。

*   *   *

《ジン様、ミロウィーナ様がお会いしたいと仰ってます》
『うん、せっかくだしな。ちょっとだけ待っていてもらってくれ』
 この先はユニーの地下施設である。仁Dは、仁本人と入れ替わる。

「ジン君、半月振り……くらいかしら?」
「そうですね。お元気そうで何よりです」
 前回会ったのはミーネの誕生日、12月13日だから、13日ぶり、となる。
「最近身体の調子もよくて」
 ミロウィーナは血色も良く、身体付きも締まってきており、健康そうに見えた。
「重力も、今ではほぼ1Gなのよ」
「それはいいことですね」
 重力が弱いと、骨密度が低下するおそれがあるので、1G下での生活は望ましいといえた。
 食事も、すっかり普通のものとなっており、免疫系も働き出しているようだ。
 いずれ『滅菌結界(ステリライズバリア)』なしでもアルスで生活できるようになるだろう。
「でも、私の家はやっぱりここですけれどね」
 ミロウィーナはそう言って柔らかく笑った。

「ジン君、忙しそうね」
「ええ、でも、もう一段落しましたけどね」
 ユニー施設内、『展望室』とミロウィーナが呼んでいる部屋で、2人は寛いでいた。
「お父さま」
 そこへ礼子がやってくる。やはり生身の仁が心配なようだ。その手にはお土産として滅菌処理されたペルシカの入った籠が。
「まあ、ありがとう、レーコちゃん」
 蓬莱島産のペルシカはミロウィーナの大好物であった。

「ヘールの様子が分からないというのは不気味ね」
「そうなんですよ」
ユニーでも観測を続けているけど、今のところ何の成果もないわ」
「そうでしたか、ありがとうございます」
 『ディスアスター』を奪取したことにより、アルスからの物資と自由魔力素(エーテル)が止まっているはずで、それを訝しく思うなら、何らかのリアクションがあるだろう、というのが『仁ファミリー』共通の認識であった。
「ヘールからやって来るにしても20日から1ヵ月くらいの時間は掛かるでしょうからね」
 準備期間を含めれば、もう少し掛かるかもしれない、と仁は言った。
「そのためについ昨日まで航空戦力の強化を行っていたんですよ」
「なるほどね。さすがジン君だわ。……あら、ありがとう」
 さっそく礼子はペルシカを剥いていた。それを一切れ口に運んだミロウィーナは、顔を綻ばせる。
「ああ、甘くて美味しいわ」
 仁も一切れ、お相伴にあずかる。
「うん、よく熟しているな」
 こうした時間は、仁に取っても安らげる時間だ。
「ジン君、無理だけはしないでね」
「え? ……はい」
「張り詰めていたら駄目よ」
「ああ……はい」
 ミロウィーナは、またしても仁が1人で突っ走りかけていることを察したようだ。
「貴方は1人じゃないんだから。……忘れていたら、何度でも思い出させてあげるわ」
「ありがとうございます」
 仁は、やはり自分は年上の落ちついた女性には頭が上がらない、と心の中で苦笑するのだった。

*   *   *

「さて、心機一転」
 蓬莱島に戻ってきた仁は、エルザと共に一旦ロイザートの屋敷に戻った。
 ショウロ皇国では、いよいよ『世界会議』に向けての準備が進められていたのである。
「飛行船の運用も始まったようだしな」
 重鎮たちが代わる代わる乗り込み、その乗り心地を試しているのであった。
「新しい時代が始まる……といいなあ」
 青空に浮かぶ飛行船を見上げて仁は呟いたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161203 修正
(誤)『それは友好だな』
(正)『それは有効だな』
 orz

 20161204 修正
(旧)『おお……』
(新)『おお……』
『すごい』
 同行しているはずのエルザDのセリフ追加。

(旧) さらに武装のテストも行われ、いずれも問題は見つけられず、この日のテスト飛行は終了となった。
(新) さらに武装のテストも行われ、いずれも問題は見つけられず、この日のテスト飛行は終了となった。
 エルザは仁より一足早く『分身人形(ドッペル)』の制御をやめ、『家』に戻っている。
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