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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-06 調査、そして

 宇宙空間で『ヴァルカン』が発見した謎の基地の調査はゆっくりと進んでいった。
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』によりほぼ全ての内部調査が済んだのはさらに2時間後。その結果、内部の動くものは確認されなかった。

『やはり故障しているか、休眠しているようですね』
 蓬莱島で映像を解析していた老君はそう結論づけた。
 万が一にも外敵に破壊されたものであった場合、対処が面倒なことになるからだ。
「外敵……いると思うのか? 老君」
 仁が、そんな老君に尋ねる。
『はい、御主人様(マイロード)。外敵、といいましても、未知の敵や宇宙人、というような意味ではありません。ヘール人の仲間割れ、くらいにお考えください』
「なるほどな」
 仁は老君の推論に頷いた。確かに、ヘール人は一枚岩ではない。いやむしろ、個人主義者の集まりである分、仲違いしてもおかしくはない。
 だからといって破壊工作をするという愚行を犯すかどうかはまた別だが。
「で、破壊工作の跡はあったか?」
『いえ、見つかりませんでした。ですが、物理的に直接破壊せずとも、方法は色々ありますので油断は禁物です』
「確かにな。そのあたりの判断は任せるよ」
『はい、御主人様(マイロード)。調査は慎重に進めます』
 老君がよかれと思ってやっている行動に一々注文をつけるような仁ではない。そのあたりはわきまえていた。

*   *   *

 宇宙空間に浮かぶ『ヴァルカン』は、謎の『中継基地』に対し3キロの距離を置いて相対的に停止していた。
「この基地を慎重に調査せよとの指示が出た」
 艦長、コスモス501は副長であるコスモス502に告げた。
「では、調査コマンドを送り込みますか」
「そうなるな。『覗き見望遠鏡(ピーパー)』での調査には反応しなかった魔導機(マギマシン)が、調査コマンドになら反応する可能性がある。注意すると共に、それを期待せよとのことだ」
 老君としては、何らかの反応があれば、それを元にさらなる情報が得られると考えていた。
「ではバトルスーツを着用した10体を送り込みましょう」

 バトルスーツの有用性は実証済み。『ディスアスター』との戦い以来、仁はランド隊が着用していたバトルスーツを数十体分量産していた。
 素材の関係で、蓬莱島ゴーレム全員分は無理だが、スカイ隊・ランド隊・マリン隊・マーメイド隊、そしてコスモス隊それぞれ専用のバトルスーツを各20体分ずつ用意。
 そのコスモス隊用のものは『アドリアナ』に10体分、そしてこの『ヴァルカン』にも10体分搭載されていた。

 バトルスーツを着たコスモス551から560の10体は、『力場発生器フォースジェネレーター』を使って『中継基地』に降り立った。
[ただいま到着しました。重力は感じられません]
〔了解。調査を続行されたし〕
 短いやり取りの後、10体はまず平面部分を調査することにした。
[素材はニッケルクロムモリブデン鋼。例の『ディスアスター』と同質]
[宇宙塵によるものか、細かな引っ掻き傷多し]
 平面部分は太陽セランを向いているので、陽光が凄まじいばかりに降り注いでいる。
 そんな中、倉庫か格納庫らしき施設の一つに辿り着く。
[施設の劣化は少ない模様]
 金属製のため、紫外線による劣化は少なかった。
 内部が空であることは『覗き見望遠鏡(ピーパー)』によってわかっている。
[それでも、直接訪れることで発見があるかもしれない。一応確認しよう]
[了解]
 コスモス551たちはゆっくりと施設の扉を開けた。鍵は掛かっておらず、腐食もしていないため問題はない。
[やはり空ですね]
[そのようだな。……うん?]
 コスモス551は施設の床にあるシミを見つめた。
[このシミは比較的新しいように見えるが……どう思う?]
[ここは宇宙空間で、紫外線が当たらないこの施設の中なので一概に新しいとはいえないでしょう]
[それもそうか。だが、何のシミだろう? 油か?]
 焦げ茶色で脂肪光沢のあるシミ。
[『分析(アナライズ)』]
 コスモス部隊は全員工学魔法を使えるので分析してみる。
[油……グリースのようなものですね]
[それは珍しいな]
 これまで、ヘール関係の技術では、潤滑油にグリースのような粘度の高い油を使った例はなかったからだ。
[これも何かを示唆しているのかもしれないな]
 コスモス551はこうした情報を老君に送っていくのであった。

 平面上の施設は、その大半が倉庫か格納庫のような建物だった。全て空っぽであったのは意外だ。
[出撃した後、という可能性もありますね]
[確かにな]
 コスモス556と551は顔を見合わせた。
[ここから『ディスアスター』が出撃していった可能性も十分ありますね]
 そして、平面部分にはそれ以上見るべくものはなく、コスモス隊はいよいよ半球内部を調べることにした。

[まずは周辺部からでしょうか?]
[いや、それでは時間が掛かりすぎるし、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』による調査でも、資材倉庫しか見つからなかった。ゆえに中心部を重点的に調べることにする]
[了解]
 そしてまた、捜査、調査、探査。その繰り返し。
[特に何もないな]
 停止した魔素変換器(エーテルコンバーター)魔力炉(マナドライバー)、非常用の魔力貯蔵庫(マナタンク)などは見つかった。だが。
[管理していたはずの頭脳、整備用のゴーレム、資材受け入れのための転移門(ワープゲート)……いずれも見つからないな]
[集めた資材も大した量ではないですしね]
[そうだな]

*   *   *

 ここで、老君が大胆な仮説を唱えた。
御主人様(マイロード)、もしかすると、あの『中継基地』は、とうの昔に放棄されたものかもしれません』
「どうしてそうなる?」
『はい。ここ数十年以上、使われた形跡がないことと、転移系施設が見つからないこと、それに管理頭脳などの重要施設がないことからです』
 老君は詳しく説明を行っていく。
『どうしてもあの場所に中継基地がある必要はないですし』
 アルスとヘールの中間点はもう1箇所ある。軌道を逆方向に進んだ場所だ。
『あるいは、1箇所ではなく、60度進んだ場所と120進んだ場所の2箇所設けているということもありえます』
「なるほどな」
 そちらも、時間があれば調べて見る必要はあるだろう、と仁は思った。
「だが、今は中継基地だ。どうするか……」
 発見したものを接収して改造すれば早いはずだが、と考える仁。
 だが、同時にリスクも抱え込むことになる。
「やはり当初の予定どおり進めよう」
『わかりました』
 日程よりも確実さを取り、仁は工作艦『ヴァルカン』による、自らの中継基地を建造することに決めたのである。

*   *   *

[当初の予定どおり、簡易基地を建設することになった]
[わかりました]
[さっそく作業に入る]
 『ヴァルカン』とコスモス隊は本来の役目を果たし始めたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161127 修正
(誤)だからといって破壊工作をするという愚考を犯すかどうかはまた別だが。
(正)だからといって破壊工作をするという愚行を犯すかどうかはまた別だが。
+注意+
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