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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-03 才能の開花

「おにーちゃんたち、お昼ご飯は?」
「ああ、もう済ませたから大丈夫だよ」
 仁の答えに、納得するハンナ。
「時差があるもんね」
 そしてハンナとマーサは昼食である。
 仁、エルザ、礼子は工房で待っていた。
「おにーちゃん、お待たせー」
 昼食を終えたハンナが家から出てくる。
 そしてハンナは、
「実験って言ったけど、まずはおにーちゃんに見せたいものがあったの」
 と言って、二堂城へと歩き出した。
「見せたいもの? 何だろうな」
 仁とエルザ、礼子も後に続く。

 10分足らずで二堂城だ。
「えーとね、2階のラウンジに置いてあるの」
 2階の窓際にはラウンジがあって、談笑したり軽食を摂ったり読書したりできるようになっている。
 使う者はほとんどいないが。
 そして、仁がそこで見たものは。
「図面?」
「うん、自由魔力素(エーテル)転送装置の図面その1だよ!」
 ハンナが衝撃的なことを言い出した。
「ええっ!?」
「ハンナちゃんが、書いたの?」
 仁とエルザ、そして礼子は驚く。
 仁があれ程苦労して、満足な形では実現できなかった魔導機(マギマシン)を、ハンナが作ってしまったというのだから。
 接収した移動基地や『ディスアスター』のものは破壊されていて解析できなかったのである。
 仁としては今更感もあったのでそれきりだったのだ。

 だが、ハンナが再現したとなれば話は別だ。
「あ、これはあくまでも図面だし、実際に作ったら駄目だった、という可能性もあるからね?」
「それはそうだろうが……」
 まだ半ば呆れつつ、仁はその図面を見つめた。
「ええとね……」
 ハンナが解説をしてくれる。
「あたしもいろいろ考えたの。まず、転移門(ワープゲート)がどういう働きをしているか、老君にも聞いたし」
「凄いな、ハンナ」
「でね、転移門(ワープゲート)は、2箇所を『亜空間トンネル』で繋ぐものだと考えたの。で、その『トンネル』には空間的な『勾配』があって、通常では一方通行に設定されているわけ」
「うん」
 このあたりは仁も推測していた内容と同じである。ハンナは独自に考えており、彼女の発想が非凡なことが窺える。
「で、この『トンネル』のスタート地点に物体が入ると『トンネル』内を強制的に移動させられるんだけど、あたしの考えでは転送する物体の『重心』を引っ張って、付いてきたものが転送されるんだと思う、って前に言ったよね?」
「ああ、聞いたよ」
 仮にその物体が濡れていたら表面の水分も一緒に転移するわけだ。また、毛皮や羽毛なら、間に入った空気も一緒に転移することになる。
「これを踏まえて、自由魔力素(エーテル)を送るにはどうすればいいか、考えたわけ」
「うんうん」
 仁はハンナの説明に引き込まれていく。
「まず第一に、自由魔力素(エーテル)の濃度を上げないといけない」
「それはわかる」
 送り出し側の自由魔力素(エーテル)濃度を上げることで、受け入れ側との差異を作り出すわけだ。
 濃度に差がないなら、自由魔力素(エーテル)の受け渡しの意味がない。
自由魔力素(エーテル)濃度を上げるって、おにーちゃんできるよね?」
「ああ、できる」
 仁は過去に『自由魔力素凝縮器(エーテルコンデンサ)』というものを作っている。
「それを使って、最低でも送り出し側の濃度を、受け入れ側の10倍以上に上げるの」
 この場合の濃度は空間許容量との比、となる。

 自由魔力素(エーテル)濃度の最高値100パーセントというのは、当然ながらその空間が受け入れられる最大量だ。
 仁の推測によると、自由魔力素(エーテル)は空間を構成する要素の一つで、立方格子状に配列する。
 では、自由魔力素(エーテル)100パーセントという状態から、それ以上自由魔力素(エーテル)が増えるとどうなるか。
 答えは『析出』である。
 とりあえず化学用語である『析出』と呼んだが、実際は似て非なるものである。
 物体があれば、その内部に入り込み、『魔力同位元素(マギアイソトープ)』を作ったり、『魔石(マギストーン)』や『魔岩(マギロック)』などの『魔鉱石(マギマテリアル)』を作る。
 物体がなければ、自由魔力素(エーテル)だけで析出し、結晶化する。これが『魔結晶(マギクリスタル)』である。

「うーん、そういう考えはなかった」
「ハンナちゃん、すごい」
 ハンナの解説は、仁の想像を超えていた。特に魔結晶(マギクリスタル)の生成のあたり。
魔結晶(マギクリスタル)は、純粋な物質の結晶構造の『隙間』に自由魔力素(エーテル)が入り込んだものだと考えていたよ」
 そんな仁の言葉に、ハンナは頷いた。
「うん、普通の『魔結晶(マギクリスタル)』はそうだと思う。あたしが想像したのは純粋な自由魔力素(エーテル)の結晶」
「そんなものがあるのかな?」
「うーん、わかんない。あたしの想像だしね。いつか、宇宙のどこかで見つかるかもしれない。……それより、自由魔力素(エーテル)転送の話だよ!」
 ハンナ自身、自分の推論がどこまで正確かはわからない、と言っている。その態度は既に一流の研究者だ、と仁は思った。
「ええと、『転送する物体の『重心』を引っ張って、付いてきたものが転送される』という前提に立つと、一度の転送で送られるのは、自由魔力素(エーテル)の粒子1個」
 確かに、その理論でいくとそうなる。空気分子の場合でも同じだろう。
「だから、自由魔力素(エーテル)をひとまとまりにする方法を考案すればいいわけ」
「だんだんわかってきたぞ」
「まず考えられるのは、自由魔力素(エーテル)用の容器を用意して、中に自由魔力素(エーテル)を入れ……って、普通に自由魔力素(エーテル)濃度の高い場所に置いておけば自然と中の濃度も周囲と同じになるよね」
「そうだな」
 ハンナの言わんとすることが想像でき、仁は次の言葉を待ちわびる。
「その容器を転送して受け入れ側で開ければ、中の自由魔力素(エーテル)は外に溢れてくるよね? やったことないけど」
「ああ、ハンナの言うとおりだ」
 実際には、容器というより『魔素貯蔵庫(エーテルタンク)』であるが、ハンナの理論に影響はまったくない。
「その容器を、『もう1つ』の転移門(ワープゲート)で送り帰して、また自由魔力素(エーテル)で満たしたら送るの」
 2基の転移門(ワープゲート)によるピストン輸送といえばいいのか。
 確かに、ハンナの言うやり方ならまずまずの効率で行えそうだ。

「……そこまでは多分、誰でも思いつくと思うの」
「え!?」
 さらに驚いたことに、ハンナの話にはまだ続きがあるらしい。
「おにーちゃんが本当にやりたいことって、容器なんて使わずに自由魔力素(エーテル)を直接転送することなんでしょう?」
「うん、まあ、そうだな……」
「で、考えたの。それが、その2。こっちはまだ理論だけだけど」
 本当にハンナは自由な発想ができるんだな、と仁は感心を通り越して驚愕しつつ、説明に耳を傾けた。
「転送機で自由魔力素(エーテル)を送ろうとは考えなかったの?」
「……」
 仁は絶句した。エルザも言葉が出てこない様子だ。
 それは最初の最初に考えたことであったが、実験の結果、効果がなかったことを仁は思い出した。
 そしてそれきり、そちらからのアプローチはしていなかったのである。

「あのね、『範囲指定』と『転送対象』の魔導式を変えたらどうにかできるんじゃないかと思うの。……こっちは、完全にあたしの想像だけど」
「凄いぞ、ハンナ!」
「きゃ」
 仁はその方法なら成功する可能性が高いことを悟り、ハンナを抱き上げた。
「さっそく実験してみよう!!」
 そんな仁を、エルザは微笑ましそうに見つめていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161124 修正
(旧)仁があれ程苦労して、なお実現できなかった魔導機(マギマシン)を、
(新)仁があれ程苦労して、満足な形では実現できなかった魔導機(マギマシン)を、
 37-03で曲がりなりにも作ってました。
+注意+
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